存在のない子供たちのレビュー・感想・評価
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ラストワンカットで救われる
貧しく出生届けすら出されていない移民の少年ゼインが両親を訴える。
こんな世界に自分を産んだ罪で。
強制的に結婚させられる妹。
子供をつくり続ける両親。
貧しい地域で必死に生きる子供達。
そんな子供を利用しようとする大人達。
これはただのフィクションではない。
だからこそ考えさせられる。
終始痛々しくて目を覆いたくなるような場面が続く。
そしてラストのワンカット。
微かな光が射し少し救われた気持ちになる。
最近、片岡礼子が出演している映画をよく観ていたために、ゼインの母親が片岡礼子に見えてしょうがなかった・・・
どうしようもなく泣きたくなった。思い出すだけで泣いてしまう。どことなく是枝監督の『誰も知らない』、『万引き家族』とも共通項があるのですが、まだ乳飲み子であるヨナスの演技が素で可愛いのだ。彼がカンヌの男優賞を取れば最年少記録更新できたのになぁ・・・と鑑賞直後に感じました。
それにしてもフィクションでありながら、普通に暮らしてる姿はリアルそのもの。少ない台詞の台本であっても、ゼイン少年は即興で演じたらしい。ありのままを演技する、まるでかつての柳楽優弥みたいな存在感。誰が見ても可愛い子供なのに親の愛情は全くなくて、単に生活のために小銭を稼いでいるだけの存在なのだ。
公式サイトによれば、ゼインにしてもティゲストにしても映画のキャラと同じような体験をしているらしい。滲み出てくるような貧困への恨み、容赦しない移民局への恨み、そして誰にでも愛情を注ぐことができる底知れぬパワーをも秘めている二人だ。そこへ赤ん坊のヨナスが屈託のない笑顔で和ませてくれて、彼もまた限りなく天使に近いような存在として描かれている。
物語はシリアからの難民であふれ、アフリカ方面からも移民が大勢いるレバノン。監督自身も戦争経験があり、なにかと紛争の多い中東の小国。格差の程度はわからないが、GDPからの推測では世界平均と同水準。映像の中にも中流家庭っぽい住宅街の真ん中に貧困層エリアがあることもわかるし、貧困から抜け出せないで喘ぐ層も相当多いのだろう。そのうえシリア難民が100万人とも言われるほど流入しているのだ。
核となる部分は出生届を提出しなかったためにゼインが社会的に存在しないことになってること。大好きな妹が金のために嫌味な男と結婚させられ、ゼインが家を抜け出し、エチオピアからの移民でシングルマザーのティゲストと共同生活すること。そしてティゲストが不法移民として逮捕され、一人で1歳の子を育てなければならなくなったゼインを描いている。終盤の展開は原題CAPHARNAUMの意味する“混沌・修羅場”をよく表している。
無責任に子供を産むな!と訴えるテーマと、DV、虐待の現実。子供が欲しくても現実の生活を考えると無理・・・といった日本の少子化問題と真逆のようだが、底辺にある問題は同じ。福祉は行き届いてないし、格差社会を是正する動きがないといった点は全世界共通なのかもしれないし、放っておくと子供たちの未来は暗くなる一方だ。また、3日ほど前にトランプがイスラエルのパレスチナ入植を国際法違反とはならないとイスラエル寄りの政策を打ち出したために、中東にまた悲劇が起こる可能性もあるのだ。移民に対する無慈悲な扱いといい、ヒューマニズムの欠如はどんどん広まっていくに違いない。移民に寛容なヨーロッパも今後はどうなるかわからないし、未来は混沌としている・・・愛情だけでも残れば救われるのだろうけど。
救われないようで救われたようで救われていないようで…とぐるぐるして...
救われないようで救われたようで救われていないようで…とぐるぐるしてしまう映画。強度あり
「存在のない子」はタイトルとして特に日本人にはわかりやすいが、原題「Capharnaüm」がイエス・キリストに見捨てられた街を指していることを意識していると、途中で何度か登場する「神」や「罪」という言葉が意味を含みを持ってくる。ラストの展開も聖書の文脈をもつと読み解きやすい
観ていて辛く日本が幸せなのだと実感
生まれたときから、貧困と闘い抗いながらも無責任な親を訴えることを選んだゼインに心をうたれました。
妹を可愛がり愛していたのが亡くなって、もう、耐えきれなかったのでしょう。
日本でも虐待はありますが、ここまで酷くはない。
無責任はチカラの弱いものには残酷すぎます。
ここ何年かで一番衝撃受けた作品。 子供たちの瞳が忘れられない・・・...
ここ何年かで一番衝撃受けた作品。
子供たちの瞳が忘れられない・・・。
考えても解決しない事が多くて劇場後にしても引きずりまくり….今も引きずってる。
でも、見るべき映画だと思った。今のところ今年のBest1,2の位置👍。
平和ボケした日本人
生まれてこないほうが良いのではないのか?
何とも言えない、切なさ、悲しみ、、、
日本にいるとこのような世界は想像もつかない。
兄妹愛、血の繋がらない兄弟愛、親子愛
日本人として日本に生まれただけでも恵まれていると改めて思う。
世界中のこのような子ども達が早く救われて欲しい。
フィクションであって欲しいと思ってしまう…
実際に自分の目で、現実の日常を見ているかと錯覚する程に、子どもたち、大人たち、演技とは思えない自然さで、リアルでした。
ゼインの演技がまた素晴らしいし、ヨナスもあの幼い年齢で、あのような自然な動きが出来るのか…あれが本当の日常なのだと言われたら納得出来そうな気もします。
妹を守りたい姿、ヨナスと共に過ごす姿、本当に素敵なゼインに何度も胸を打たれました。
重い、辛い内容でした。
でも、何も出来ないモヤモヤが残る。
でも、観て、感じて、考える。
それは同じ人間として、最低限の出来る事だと思うので、忘れない。
私には、この映画の内容はどこか遠い国での事、昔の話し、と感じましたが、
豊かな日本には、重く、辛いという意味では同じようにイジメや自殺、虐待の問題があるのかな。と思います。
なぜ、みんな幸せに生きられないのだろう…
みんな幸せに生きたいだけなのに。。
そんな気持ちが残っています。
ゼインの賢い勇気ある行動で、笑顔が続いて行く事を…願ってやみません。。
解説よ、移民ではない難民だよ!!
いや参った。これも泣ける。ベイルートというより、世界各地が抱えている課題が山積みされている。レバノンという国はモスリムとキリスト教が共存しているが、パレスチナ人やシリアからの難民が多く、世界で難民受け入れに寛大な国の一つだ。ドキュメンタリー映画「セメントの記憶」が公開になったと思うが、これはシリア移民(難民もいるかも)を扱った作品。
それに、eiga.comの解説を批判して申し訳ないが、移民問題を抉り出したとあるが、ザーンの家族も、エチオピアの女性も難民なのであり、移民ではない。それに、貧しさゆえに親からまともな愛情が受けられないとあるが、これも疑問だ。
この映画の最後の方で、シリア難民の少年、主人公ザーンがテレビ局に電話をし、自分の親から受けた虐待の話をしてそれがオンエアーされるシーンがある。彼の言葉を私が置き換えると、殴られ、蹴られ、罵られ、一言も優しい言葉や褒められたことのない子供が悪に染まらずどう育っていけるのだろう。いつも敷物のように踏みつけられて育てられる子供にどういう生き方が望めるんだろう?このように育ってしまった子供は一生心の中に傷を負い、また、反面教師にならず自分の子供を虐待するような実例をたくさん読んだり聞いたりするが、ザーンのたくましく強い心からは、この不幸を良い方向に変えていけるような気がするが。もちろん、彼のこれまで歩んできた生き方が証明しているが、最後の、出生証明?(身分証明)の写真を撮るとき、『こっちが、僕からみた右だ』と写真を撮る人の言い方が悪いから自分がちゃんと動けないといいたいような口ぶりで、そこにまたたくましさを発見した。これだけ、踏んだり蹴ったりされた生活の中で処世術は十分に身につけているけど、なおかつ最後の証明写真を撮るところまで、自己主張をするので彼はたくましい。
彼の最高の笑いが、彼の明るい未来を象徴していると思った。
不思議だったこと、
12歳ぐらいのザーンは赤ん坊と二人で、物を売って食べ物を求めて彷徨うが、誰も彼らに声を掛ける人がいないのは変だ。レバノンのシリア難民地区で、声かけしたりして少しでも助け合いの気持ちを撮してももよかったと思う。
Nadine Labaki 監督もザーンの弁護士役で登場している。
フィクションとリアル
この作品に言える事は大袈裟であって真実であること。そしてリアルではあるが観客に耐えうるべくリアリティに矮小化したこと。即ち
、ファンタジーとノンフィクションがカオスとして表現された作品なのであろう。だからどこまでが本当のことなのかを考える事自体意味がない。あくまでも映画であり、レンズを通して画角に収められた映像はそれ以上でもそれ以下でもないからだ(レンズに映り込む蛍光灯の反射の光も含めてこれも現実であり幻想的とも言える)。勿論観客は翻弄される。今の時代に、江戸時代に行なわれた、娘を吉原に売るようなマネが行なわれているのだろうか、そもそもあの発育不良の主人公はそれ程頭が切れるほど知能は高いのか、レバノンの現実はあの家族に集約されていてそれが須くどの家族にも共通なのだろうか等々…勿論、YESでもありNOなのだ。それは対象となる人によって異なるし、又心持ちによっても違う意見が噴出する。そしてこの作品の白眉は正にその捉えどころのない映像を収められた“事実”なのである。どんな意図があるにせよ、実際にスクリーンに映し出される映像自体は紛れもない“リアル”だ。疑ったり、解釈したり、信じたりと人間はなんて愚かで素晴らしい生き物なのだろうかと思わざるを得ないのである。
ストーリー展開も上手に作り込まれていて、年子の妹の行く末の心配が現実になってしまいその怒りで家出をすることが第一章、家出先の遊園地で働く掃除婦の家に転がり込み女の子供を世話しながら、世間の世知辛さを充分味わうのが第二章、そして北欧へ渡航するために自分の身分証明を探しに家に戻るのだがそこで妹の死を図らずも発覚してしまい復讐で妹を連れて行った男を刺すのが第三章となっている。それを捕まった後の裁判中の時間軸、振り返るような過去の時間軸を交互に往復しながら比較的易しい構造で進んでいく。そして慟哭にも似たクライマックスの両親への訴えは、この国の現実をまざまざと観客に突きつけてくる。「愛さないなら産むな 育てられないなら産むな」は、子供にとっての切実な願いであり、最後通告でもあるのだ。その言葉を発する子供も又、自分が家族とこれで縁を切る辛さを覚悟させてしまう哀しさは余りにも胸が締め付けられ言葉も出ない。やっと手に入れようとする自己証明書の写真の笑顔は、決して自然と溢れ出る笑いではなく、まるで無感情の何の思考もない“惚け”そのものである。それでもあの両親は悔い改めず相変わらず兎のようにポカスカ子供を作るであろう。そして相変わらず世界はこの問題を解決せず放置し続ける。地獄そのものがこの世に存在している・・・
こんな現実もあるんだなぁ…
仕事も恋愛もうまくいかない。
何のために生きているか分からない。
実家に帰ったら親に「わたしはあんたの親じゃない。」と言われて人生に疲れ切っていた時、この映画を知って見たいと思い、やっと見れた。
主人公の置かれている状況は悲惨。
出生届も出されていない、親には金稼ぎの道具にしか思われていない、大事に思っていた妹はニワトリと引き換えに11歳で嫁に出されてしまう。
そんな状況にありながら、妹を思いやったり、ひょんなことから出会った血の繋がりのない赤ちゃんを自分の弟のように思い守ろうと走り回ったりする主人公。
希望がない中で、自分が生きるのに精一杯な世の中で、生きるために誰かのために行動できる主人公は尊い。
血も涙もないような両親に育てられ、何であんなに良い子に育ったのだろうか。
血の通った心を持ったからこそ、親の行動が許せなかったのだろうし、自分と同じ境遇の人をこれ以上増やしたくないと思ったのだろう。
全体を通して希望もないし、重い現実を淡々と描いていた。
主人公がこの先どんな人生を辿っていくのか、わからないが強く生きて欲しい。
自分も強く生きていこうと思える映画でした。
「良薬、口に苦し」な切ない良作。
以前から気になっていた作品で公開から1ヶ月以上経って、やっと観賞しました。
で、感想はと言うと…正直重いし、胸が痛いし、切ない。
単純に良い作品と言うだけではなく、心に重く迫ってくる迫力で観終わった後の爽快感はありませんが、問い掛けるメッセージが真正面からズドンと響いてきます。
とにかく、貧困の極みのしわ寄せをもろに受けたゼインの怒りや悲しみを超越した感情が物静かな表情から問い掛けが凄い。
何に怒っているか? 両親を始めとしていろんな物に怒りを感じているが、怒りを顕にする以上に生きる事に貪欲。
貪欲だから自分の置かれた境遇に必死に抗ってる。それを子供にやらすか?と観ていて怒りややるせなさを感じてしまいます。
少し中盤で間延びする様な所もありますが、ゼインの苦境がこれでもかと押し寄せてきて、観ていても“もう勘弁して”と言う気持ちなるくらい、重くて切ない。
親からも愛されてなく、最愛の妹が幼くして口減らしの為に他所に嫁がされていく。
家を出て、さまよった中で出会った女性の世話になるが、トラブルから女性は拘束され、訳も分からないまま、その女性の赤ん坊を育てなければならない。
いろんな悪い事もするが、それも全ては生きる為。
やむを得ず、赤ん坊を手放し、生きる為に必要となる証明書を取りに家に帰ると最愛の妹は亡くなっていた事実を知る。
相手の男を刺して、刑務所に入った事で皮肉にも事態が好転していき、テレビで見た児童虐待を取り上げた番組に連絡して、様々な一件が明るみとなり、親を告訴した。
単純に親を訴えたと言う出来事だけで見ると、この物語の訴えかけたい真相の部分は多分理解出来ない。
冒頭で裁判所で両親を訴えるゼインのそこに至るまでの感情がゆっくりと回想されていくからこそ、この物語の深さと言うか、凄みが分かります。
主人公のゼインは子供らしさが殆ど無く、12~13歳では考えられないくらいに落ち着いてる。
クールと言うよりかは達観していて、世の中を諦めた感じから何処か斜に構えた見方をしている。
それが物悲しい。生きる為の選り分けが出来すぎていて、子供にここまで強いる環境は苦境としか言い様がない。
唯一、子供らしさが見えるのは妹のサハルに事になると感情を顕にする所とバスの中で出会ったスパイダーマン擬きのゴキブリマンに興味津々だった所。
このゼインの演技は演技として割り切れない、リアルさをひしひしと感じます。
それが表情と言うか、目で訴えかけてくる。
他のキャストもそれぞれに迫る物がありますが、ゼインの鬼気迫る演技は単純に凄いです。
自分の置かれた環境の悩み苦しみは人それぞれで、単純に比較して解消する物ではありませんが、今の日本でここまでの劣悪な環境は無いだけにスクリーンの映像に映る世界が霞の様に感じながらも決して他人事と割り切れない、リアルな現実感があります。
自分達の周りに普通にある電気・ガス・水道が無いのは当たり前で、そこに仕事も食べ物も殆ど無い環境がのし掛かる。
極めつけは自身を証明する物が無い。
社会との繋がりが不明瞭になり、存在の意義が根底から覆される。
ここに家族からの愛が存在すれば、まだ自分の居場所が見つけられるかも知れないのにそれすら無い。
もう辛すぎます。
ゼインが法廷で裁判官に訴えたのは“育てられないのなら産むな。だからこれ以上子供も産むな”
子供が親に求める事が切なすぎるけど、それが真理。
両親には両親なりの理由があると思う。
でも、そこに同情は出来ない。
ゼインが“本当は皆に愛されて必要とされる人間になりたかった。でもそれが許されない環境だった”
だから、これ以上自分やサハルと同じ不幸の連鎖を産まないで欲しいと思う気持ちからの言葉。
心に突き刺さります。
判決がどの様な結末を迎えたのかは明らかにされてませんが、最後に証明書作成でのゼインの笑顔を作ろうとするが笑顔を素直に作れない、何とも言えない表情がまた切ない。
ゼインはこれ以上の無いドン底を味わいながらも、見失わなかった事は「生きること」
だからこそ、これ以上の地獄は無いと思うから、ラストでの表情からせめて今よりかは前に進める未来であって欲しい。
切実にそれを願います。
映画はハッピーエンドが好きで、楽しく観られるのが良いと思いますが、それでもこの作品は観るべき作品かも思います。
「良薬、口に苦し」と言う言葉の通り、重くのし掛かる物がありますが、この作品を鑑賞した事で何かを感じ、何かを気が付かせられる、鑑賞した人の中に確実に一石を投じる作品かと思います。
子役がみんな愛らしい
ゼインに声をかけて一緒にご飯を食べたいと思いながらも、見守るしかなかった。
とっても心根の優しい子供が、ほぼ毎日への字口で暮らしている。それだけで見てるほうは悲しい。
たまに見られる笑顔は、なにより貴重だった。
ゼインはこの先幸福に暮らして欲しい。
きっと愛情豊かな父親になれるでしょう。
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