劇場公開日 2019年7月20日

  • 予告編を見る

「解説よ、移民ではない難民だよ!!」存在のない子供たち ku-chanさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0解説よ、移民ではない難民だよ!!

2019年9月9日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

いや参った。これも泣ける。ベイルートというより、世界各地が抱えている課題が山積みされている。レバノンという国はモスリムとキリスト教が共存しているが、パレスチナ人やシリアからの難民が多く、世界で難民受け入れに寛大な国の一つだ。ドキュメンタリー映画「セメントの記憶」が公開になったと思うが、これはシリア移民(難民もいるかも)を扱った作品。

それに、eiga.comの解説を批判して申し訳ないが、移民問題を抉り出したとあるが、ザーンの家族も、エチオピアの女性も難民なのであり、移民ではない。それに、貧しさゆえに親からまともな愛情が受けられないとあるが、これも疑問だ。

この映画の最後の方で、シリア難民の少年、主人公ザーンがテレビ局に電話をし、自分の親から受けた虐待の話をしてそれがオンエアーされるシーンがある。彼の言葉を私が置き換えると、殴られ、蹴られ、罵られ、一言も優しい言葉や褒められたことのない子供が悪に染まらずどう育っていけるのだろう。いつも敷物のように踏みつけられて育てられる子供にどういう生き方が望めるんだろう?このように育ってしまった子供は一生心の中に傷を負い、また、反面教師にならず自分の子供を虐待するような実例をたくさん読んだり聞いたりするが、ザーンのたくましく強い心からは、この不幸を良い方向に変えていけるような気がするが。もちろん、彼のこれまで歩んできた生き方が証明しているが、最後の、出生証明?(身分証明)の写真を撮るとき、『こっちが、僕からみた右だ』と写真を撮る人の言い方が悪いから自分がちゃんと動けないといいたいような口ぶりで、そこにまたたくましさを発見した。これだけ、踏んだり蹴ったりされた生活の中で処世術は十分に身につけているけど、なおかつ最後の証明写真を撮るところまで、自己主張をするので彼はたくましい。
彼の最高の笑いが、彼の明るい未来を象徴していると思った。

不思議だったこと、

12歳ぐらいのザーンは赤ん坊と二人で、物を売って食べ物を求めて彷徨うが、誰も彼らに声を掛ける人がいないのは変だ。レバノンのシリア難民地区で、声かけしたりして少しでも助け合いの気持ちを撮してももよかったと思う。
Nadine Labaki 監督もザーンの弁護士役で登場している。

Socialjustice