劇場公開日 2019年3月22日

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ビリーブ 未来への大逆転 : 映画評論・批評

2019年3月19日更新

2019年3月22日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

フィクションによって強調される、“RBG”へのエールと次世代への決意

アカデミー賞候補になったドキュメンタリー「RBG最強の85才」と競合する形になったのは、この映画にとって少々不幸だったかもしれない。子育てをしながらハーバード法科大学院で学び、病に倒れた夫の看病をしながら彼の授業にも出席。そして首席で卒業という驚きの経歴を持つルース・ギンズバーグ(フェリシティ・ジョーンズ)は規格外のスーパーウーマンなので、ドキュメンタリーのリアルな彼女を見るだけでお腹いっぱいになり、脚色をほどこしたフィクションまで手が伸びにくいのだ。

しかし、実はその脚色部分にこそ、この映画の味があり、ミミ・レダー監督の主張がある。とくに話が大きく盛られているのは、ルースのティーンエイジャーの娘ジェーン(ケイリー・スピーニー)のキャラクターだ。劇中のジェーンは、学校をさぼってフェミニストの集会に参加するプログレッシブな少女で、母のルースに「時代は変わった」と気づかせる役目を担っている。彼女に触発されてルースが性差別訴訟の法廷に立つ決意をするのは、映画のオリジナルだ。

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このエピソードを通じて強調されるのは、ルースの闘いが単に訴訟に勝つためのものでなく、ジェーンに代表される次世代の未来を切り開くための闘いであることだ。ジェーンと同世代であり、自身も男社会のハリウッドで娯楽大作を手がける女性監督の道を切り開いてきたレダー監督は、ジェーンの目線でルースの葛藤をみつめ、ジェーンのセリフ(「私のために闘って」)を借りてルースにエールを送る。そして、ルースの努力を自分たちの世代が引き継ぎ、さらに次の世代に受け渡していくことを、ジェーンを通じて誇らしげに宣言している。

ジェーンは、ルースの目がつねに未来に向けられていることを物語る存在だ。同時に、観客がルースと心をひとつにできるポイントでもある。子どもが生きる未来は、誰もが平等な権利を持つ時代であってほしい。そう願って法廷に立つルースの親心は、スーパーウーマンでなくても、法律家でなくても、共感できる。すごい人のわかりやすい面を掘り下げたところに、フィクションとしてのこの映画の魅力がある。

矢崎由紀子

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