「恐ろしくも痛快な「ホラー映画」」女と男の観覧車 hhelibeさんの映画レビュー(感想・評価)
恐ろしくも痛快な「ホラー映画」
主人公のジニーは39歳から40歳になるところ。まさに私と同じ年。
いくら「人生は何度でもやり直せる」とかキレイ事を言ったところで、なんとなくもう大幅な軌道修正をするのは難しいな…と、薄々感じる年齢だろう。
でもジニーは「私の人生はこんなものじゃない」「もっと私に合った場所があるはず」と本気で思っている。
「こんな夫は私に似合わない」「こんな仕事は私がするべきものじゃない」と。
こんなに不幸なことはない。
しかもウディ・アレンは彼女に「理想の美青年と新しい人生を始める」という夢を見せるだけ見せて、あっさりと奪う。
なんという残酷な展開だろう。
鮮やかな色彩、お洒落なファッション、美しい美術に彩られているけど、でもこれは私にとって、ほとんどホラー映画だった。
主人公が青年ミッキーを本気で愛してたのかと言うと、かなり怪しい。
「自分を相応しい世界へと連れ出してくれる媒介」として、愛していたんだろう。
一方のミッキーも、劇中で語っていたように「年上のちょっと厄介な女と不倫することで、自分の才能の刺激になるかも」みたいな感覚だったんだろう。
そして案の定、あっさりと若くて可愛いキャロライナに心変わりする。
この残酷で身も蓋もない話を、私は恐ろしくも痛快に感じた。
何のごまかしもなく、現実を投射して見せてくれたと思った。
かつて新しく賑やかだった遊園地も、やがて少しずつ色褪せて、客足も遠のいていく。それはただの自然の摂理だ。
例えば話題になった「おっさんずラブ」や「逃げ恥」でも、年上女性と年下男性の恋愛が描かれたけど、私はアレが苦手だ。
私は明らかにアレのターゲットで、制作者の「こういう願望あるでしょ?憧れるでしょ?」みたいな意図を感じて気持ち悪くなる。
ひねくれた私は「舐めるなよ」と思ってしまう。
それよりも私はこの映画のほうがずっと好きだ。
「女性たちよ、自分の人生から逃げるな。男なんかに人生を預けるな。若い女と張り合うな。過去の栄光にしがみ付くな。今、目の前の人生を見つめて、歩いていけ」というメッセージを感じた。
ウディ・アレンの真意は分からないけど。