劇場公開日 2019年2月22日

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「とんでもなく強くてキュートなピノキオガール」アリータ バトル・エンジェル よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0とんでもなく強くてキュートなピノキオガール

2019年2月16日
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鑑賞方法:映画館

地上が壊滅的な打撃を受けてから300年が経った未来、2563年。空に浮かぶ空中都市ザレムの下にあるアイアンシティのスクラップ廃棄場でイド博士はサイボーグ少女の頭部を発見、持ち帰って作り置きのボディに取り付ける。覚醒した少女は廃棄される以前の記憶を失っておりイド博士にアリータと名付けられる。身の回りのありとあらゆるものに興味津々で、街で出会った優しい青年ヒューゴに当然一目惚れしてしまう天真爛漫なアリータだが、彼女の失われた記憶の中には凄惨な過去が秘められていた。

画期的にデカい瞳のアリータに対する違和感は予告を眺め続けてきたこの1年ちょっとで完全に払拭されていたので、覚醒シーンでの彼女の美しさにまず胸をブチ抜かれました。ここは年頃の娘を持つお父さんとしての夢物語、すなわちショボくれた初老ジジイにとっては娘の代わりに現れた”ピノキオ"。人形一座に売り飛ばされながらも人間になりたいと願ったピノキオに対して、サイボーグが命を賭して挑む競技モーターボールに出会ったことからより強靭な肉体を求めるアリータはとにかくベラボーに美しくて強い。ここは強くて美しい女性ばかりを執拗に表現し続けたキャメロンの本領発揮であり、そこに『スパイキッズ』で子供の活躍を生き生きと描写してみせたロバート・ロドリゲスの作家性が滲んで、強くてキュートなヒロインが誕生したというところでしょうか。

徹頭徹尾美しすぎるマーシャルアーツで戦うアリータの姿はもう出来過ぎた香港映画のそれ。時折披露される滑らかな演武も眩しいし、そもそもクリストフ・ヴァルツやマハーシャラ・アリとかが出ているので高級感がありますが、容易に視認できるジェニファー・コネリー、エド・スクレイン、リック・ユン辺りはもうB級ラインナップ。エンドクレジット見るまで気づかなかったキャストにもキャスパー・ヴァン・ディーン、マルコ・ザロールといった名前まであってB級魂に貫かれたマニアックな人選に仰け反りました。もちろんミシェル・ロドリゲスもいます・・・今でもあの子のどこが?って信じられませんが。

正直『アバター』ほどの映像の革新性もないし世界観もそんなに深みを感じないし、これはたまたまでしょうけど『移動都市 モータル・エンジン』の世界観とも雰囲気が似ているのでさらに新鮮味が削がれているし、ここ数年そこかしこで問題になるホワイトウォッシュ問題をがっつり内包してしまっているのも痛い。私は敢えて原作を読んでいないので気になりませんが、原作を愛する人はこの辺りいい気分はしないと思います。ホワイトトラッシュ問題に抗議を示してリブート版『ヘルボーイ』を降板したエド・スクレインはこっちには出てるわけで、そんな枝葉末節が気になる人もいるかも。

様々なガジェットや設定もB級感満点。『A.I.』から借りてきたかのようなサイボーグ達、『ローラーボール』と見分けがつかずルールもさっぱり解らないテキトーな競技、モーターボール等は途方もなくダサい。そして何より残念なのは、夢中で物語を追っていたとしても恐らくは誰もがこれはひょっとして・・・?と気づいてしまう懸念が最後に示されること。前もって宣伝するわけにもいかないでしょうししょうがないと思うのですが、これは原作を知らない人は特に納得いかないと思います。

あとこれもしょうがないですが残虐描写が控え目。ここは『シン・シティ』並みにエゲツないやつを期待していたのですが、まあ集客を最大化するにはそこは切らざるを得なかったのかなと、映像の節々に漂うグロテスクな残り香を嗅ぎながら残念な気持ちにはなりました。

ということで色々と粗が目立つ作品ではありますが、そんなものは全部アリータの放つ魅力で帳消しになってしまいます。20年待った甲斐は十分にありました。正直IMAXでなくてもいいかなと思いますがなるべく大きいスクリーンでの鑑賞をオススメします。

よね