アリータ バトル・エンジェル : 映画評論・批評
2019年2月19日更新
2019年2月22日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー
日本漫画のハリウッド実写化として画期作。CG描画の大きな瞳が評価の分かれ目か
遂に、である。日本の漫画の世界観と精神性に対する真っ当なリスペクトを感じさせ、ハリウッドの大規模予算ならではの圧倒的なビジュアルとダイナミックなアクション描写を堪能できる作品がとうとう完成したのだ。
原作は、木城ゆきとが90年代に発表したSF漫画「銃夢(ガンム)」。日本オタクとしても知られるギレルモ・デル・トロから紹介され惚れ込んだジェームズ・キャメロンが、20世紀フォックスと共に映画化権を獲得。当初は自らメガホンをとることを望んだキャメロンだったが、「アバター」続編の製作と重なったため、「スパイキッズ」シリーズや「シン・シティ」2作など視覚効果を駆使したアクション映画で実績のあるロバート・ロドリゲスに監督を託したという経緯がある。
主人公のアリータは、脳を除く全身が機械のサイボーグ少女。人間とサイボーグが共生するクズ鉄町で発見されたとき、記憶を失っているが、実は300年前の格闘術を体得した最強兵器だった。町を支配する勢力から狙われたアリータは、大切な仲間を守るため、次々に放たれる強敵との戦いに臨む。
アリータをはじめとするサイボーグ戦士たちのボディのリアルな質感と、映像の緩急を巧みに操るアクション演出は、まさに極上の味わい。昨今のアメコミヒーロー映画が陥りがちな、ありえない身体スピードと破壊力をだらだら見せるシークエンスとは対照的に、動作の中のかっこいいポーズと構図をスローモーションで印象的に表現し、漫画の“決めゴマ”に相当するインパクトをもたらしてくれるのだ。
アリータ役はローサ・サラザールがパフォーマンスキャプチャーを使って演じているが、その目は「原作へのリスペクト」として、ポスプロのCGで実際より大きく描画されている。この大きな目に馴染めるかどうか、さらに言うなら“萌え”を感じられるかどうかが、主人公への感情移入と作品に対する評価にも影響しそうだ。漫画なら大きく誇張された瞳の登場人物を自然に受け入れられるが、実写でも違和感なく親しめるかどうか。反応はどうあれ、実写にCGを加えたキャラクター造形の点でも本作が画期的であることは間違いない。
ストーリーとしては、概ね原作漫画の前半の要素を再構成した作りで、クリストフ・ワルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリという3人のアカデミー賞受賞俳優がドラマパートに深みを与えている。さらにもう1人、複数回オスカー候補になっている名優が重要な役でカメオ出演している点からも、製作陣が続編を視野に入れていることは明白。本作の興行面での成功が条件になるだろうが、晴れてシリーズ化され「漫画+ハリウッド」の新時代を切り開いてくれることを大いに期待したい。
(高森郁哉)