万引き家族のレビュー・感想・評価
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考えさせられる家族のカタチ
【鑑賞のきっかけ】
本作品は、「誰も知らない」(2004年)や「そして父になる」(2013年)で、家族の在り方を描いてきた是枝監督が、新たな発想で、家族とは何かを問う意欲作と感じ、興味深く鑑賞することとしました。
【率直な感想】
本作品で描かれるのは、貧しいけれども明るい5人家族。
そこには、日雇いの父・治と、クリーニング店勤めの妻・信代がいて、息子の祥太、信代の妹・亜紀、祖母の初枝がいた。
家族の生活の頼りは、祖母の年金であったが、足りない部分を「万引き」で賄うというのが、家族だけの秘密。
そんなある日、近所の団地の廊下でひとり佇む少女を、見かねた父が連れて帰る。「ゆり」と名乗る少女は、6人目の家族となっていく…。
「万引き家族」という題名なので、犯罪を何とも思わない人たちなのかと思いきや、そこで描かれるのは、本音を言いながらも、明るく仲良く暮らす家族の姿でした。
住んでいる一軒家からして、どこか昭和の高度経済成長期の、貧しいけれど、強くたくましい家族のような気がしてしまいました。
ところが、この一家のひとりひとりには、ある事情があったのです。
物語が進行するにつれ、次第にこの家族が、「万引き」だけではなく、普通とは違う一家であることに観客は気づき始めます。
このギャップが大変に興味深いところで、家族以上に家族的な一家、それぞれが思いやりの心で、お互いを支え合っているような一家が、その見かけとは全く違う家族であることに戸惑いを隠せないことでしょう。
ここで観客は家族を結びつけているもの、いわゆる絆とは何かを考えさせられることと思います。万引きを容認するような家族であれば、結びつきは単なる「お金」なのか?でも、そうとばかりは言っていられないようなことが、物語後半のある事件を通して明らかになっていきます。
家族以上に家族的と言えば、「ゆり」という少女は、両親から虐待を受けていて、その一家は、家族であるはずなのに、家族的でない家族と言え、この「万引き家族」とは、全く真逆の位置関係にあるのも興味深い点でした。
【全体評価】
万引き家族のそれぞれの役者たちの演技の素晴らしさ、そしてそれを引き出した是枝監督の力量に圧倒された傑作として、満足度の大変に高い作品だったと思います。
斬新な視点で描く家族の在り方
正直、驚いた。今まで、こんな家族なんか観たことなかった。私の家族感は崩壊してしまった。本作は、極めて日本的な雰囲気で究極の家族を描いた是枝監督の渾身作である
訳あり5人家族は、祖母・初枝(樹木希林)の年金を当てにして、万引きを生活の糧にして昭和レトロ感溢れる一軒家で暮らしていた。ある日、浩(リリーフランキー)は、寒さに震えている子供・じゅり(佐々木みゆ)を見過ごせずに家に連れていく。妻の信代(安藤サクラ)はじゅりの腕の傷をみて引き取ることにする。その日を境に、家族の生活は徐々に変化していく・・・。
じゅりを加えた6人家族は貧乏だが、いつも明るい雰囲気で本音を言い合っている。演技巧者を揃えた家族の会話は、本当の家族の日常を切り取ったかのように自然で生々しい。明日はどうなるか分からない。だからこそ、彼らは、今日を悔いなく懸命に生きている。それが彼らの明るさの理由だろう。
大人4人は純粋な善人ではない。一癖も二癖もあり狡賢い面を持ち合わせている。そんな4人が紡ぎ出す家族の絆は生々しい。家族の絆は家族になれば自然にできるものではない。互いを強く想って築き上げるものだという作品メッセージに心揺さぶられる。また、本作は幼児虐待という今日的なテーマも取り入れている。幼児虐待に対する信代の台詞には説得力がある。粗野だが、全身全霊で子供を守るという強い母性が感じられて胸が熱くなる。安藤サクラの決意を滲ませた演技が秀逸。
終盤、ある事件が発覚し、そんな家族はバラバラになり独白という形で一人一人の過去と家族への想いが語られる。特に信代と翔太の台詞が、この家族の素晴らしさを端的に現わしていて心洗われる。安藤サクラの抑制の効いた凄味ある演技が出色。
本作は、打算による相互依存でできただろう家族が、毎日を共に懸命に生きることで、互いを思い遣る気持ちが芽生え、徐々に絆を深めていく物語である。斬新な視点で描いた家族の在り方が心に突き刺さる秀作である。
どうするのが正しかったのかを視聴者に考えさせる作品
家族の愛に飢えた者たちが集まって、自分たちの家族を形成した物語。
血の繋がった本当の家族ではないが、たしかにそこには愛があり、皆そこでの生活に満足していた。
男の子の祥太もそこでの生活に満足していたと思う。ただ、祥太は思慮深く、賢い。
この家族には問題があった。万引きを日常的に行い、家族もそれを知ったうえで当たり前のように流している。生まれて間もない頃からこの環境にいる祥太も万引きを行っていたが、徐々にこの万引きという行為に疑問を抱くようになる。
祥太は「お父さん、お母さん」と呼ばなかったことから、子供を万引きという形で形成された家族が正しいのかという疑問も抱いていたのかもしれない。現状の家族には満足しているが、自分がその家族に入る過程から心の底から「お父さん、お母さん」と呼んでいいのか分からなかったと思う。
祥太はある日万引きをわざと店員に見つかるように行う。それは妹のように可愛がっているゆりが万引きをしようとしたときである。祥太は自分が大好きな家族が万引きという悪い行いをすることが耐えられなくなっていたのだと思う。
祥太の行いによって家族は捕まり、ばらばらになるが祥太の気持ちは軽くなったように見えた。家族が好きだからこそ、その家族が悪い行いをしてるのに平気で過ごしてしまうことが祥太にとって辛かったからであると思う。
子供を万引きをした夫婦は愛はあったがやり方が間違っていた。
対照的に祥太は正しく生きる子供であった。今ある家族がどれだけ幸せなものであったとしても万引きを繰り返していた家族は一度捕まるべきであったし、「誘拐」という形で形成された家族は一度ばらばらになるべきだったと思う。
そして一度ばらばらになった上で「自分にとっての家族」について考え、これからそれぞれがどうするかを考えるべきであったのだと思う。最後の祥太、ゆり、亜紀の描写から視聴者は想像力を働かせてられた。
寄せ集まった人たち
皆。血が繋がらない人たちの共同生活
ひどい生活ぶり。子供たちに万引きさせたり
学校にも行けなくて お金がなくて…万引き
でも。皆が優しいし楽しくてあったかで心地いい
食事する風景も大した物を食べている訳じゃないのに皆が笑顔で楽しそう(本当の家族の様にみえる)
安らげる場所
この人たちに共感はできないけど虐待をうけている子供は親から離れて良かったのかなと思わせる
でも。万引きは良くないと祥太は思っただろうし
ゆりに万引きをさせたくなかった
最後に幼いゆりが一人で遊ぶ姿
寂しげな表情が 見つめる先は……何を意味するのか(ぎゅっと抱きしめてもらった事を思い出している)
幸せはどちらにあるのか問いかけている
……しあわせって 偽家族 それとも本当の家族
みにくいもの よわいもの
仕事柄、こういう人たちによく遭遇するので、よくある「考えさせられた」みたいなテキトーなコメントを打てない。
こういう、下層とされ、貧困状態にある人たちに対して、ぶん殴りたいほど腹立つこともあれば、自分の力では考えもつかない発想を見せつけられて、自分の無知と無配慮を恥じることもある。まあ腹立つことが8割だけど。
池脇千鶴と高良健吾は損な役だが、あれが世間なので。
この映画を不快だとか日本の恥だとか言ってるレビューもたくさんあったけど、その通りで間違いない。この映画で描かれているような面が日本にはある。そういうことを知らないで生きられるという自分の幸福に気づかないまま、無意識に下層を見下し続ければいいと思う。
彼らのような人の存在をありえないと思う人がいる限り、虐待も貧困も増える一方なのよなぁと思った。
安藤サクラも松岡茉優もよかったけど、何より樹木希林よ。みかんの食べ方がやばい。貧困世帯のばあさんでしかない。怖いよ。
ずーっと、なんだかんだ言ってこの家族なりの絆はあるやんと思っていた。でも各々事情聴取を受ける中で、松岡茉優が家族から樹木希林への援助を知ったときの様子や、安藤サクラが池脇千鶴から「じゅりになんて呼ばれてたの?」と聞かれたときの反応などを見るに、「実は当の本人たちが一番自分たちの絆を疑っていた」感が出てるような気がした。
ほんとに絆があったら、警察の言うことなんか蹴散らすでしょ。
社会制度から爪弾きにされて、そこにうっすら反発して生きて、それでも社会制度に100%抗えていない様子が、なんともリアルではあった。
家族の絆とは何?家族の原点とは何?結論は出ない
児童の虐待が目につく昨今、ユリに一番感情移入した。
ユリ以外は一つの家族と思いながら見ていたが物語が進むにつれみんなバラバラというのがわかる。
そんなことは気づかせないような万引きを軸にした貧困でも暖かな家族。
虐待されていたユリをかわいそうに思いそのまま引き取って(誘拐ではない)育てるなんてそんな暖かい家族が今の日本にいるだろうか?
もし自分がそう思っても行動には移せない。
自然にそういう事ができる素晴らしい家族なのだ。
バラバラになってからの家族はどうなるのだろう?
元の家族の元へ戻る人、旅立つ人、刑務所で何年も服役する人。
それぞれだろうけれどやっぱりゆりが気になる
ゆりちゃん、幸せになってね。
それにしても警察や児童相談所は映画の中でも機能していないように見える。
この家族の行く末
樹木希林や安藤サクラの存在感はもちろん、子供たちの何気ない行動や言動を演技の枠を超えた自然な振る舞いとして演出する是枝作品の十八番も相変わらず健在だ。
社会的な問題をテーマに取り込んだ作風にも見えるが、この疑似家族が解散した後の子供たちの様子をエンディングに持ってくるあたり、まあストレートに"本当の愛情とは何ぞや"と言うことなのではないかと思う。
個人的には松岡茉優演じる亜紀のその後が気になった。
凄い作品だ👍
貧困の中で、これも家族か・・・
受賞直後に鑑賞後
3年ぶり2度目の鑑賞
是枝監督の作品は
「家族とは?」
という問いかけがあると思う
この家族は血がつながっていなかったり
でも心は通じているっていうか・・・
実際に合った事件を連想させるエピソードもあって
少し考えさせられた
いい映画だと思うけど
自分は、こういう「答えの出ない」作品は少し評価が低くなってしまう
是枝裕和作品の集大成
複数、是枝裕和作品を視聴したが、本作は集大成と言える。
家族の在り方がテーマになっており、血縁関係に基づいた家族が本当に正しいのかを問ている。
血は繋がっていなくとも、気持ちが繋がっていることで成り立つ家族が描かれている。
また、国語の教科書にのっている「スイミー」は、これは社会と言う大波に対して、弱い力を持った人間が疑似的な家族(スイミーなら大魚)に粉していることの暗示であると思った。
血がつながっていることに加えて、愛を持っていることも重要なのだと再認識した。
「家族」とは
キャスティングが最高、身に迫る演技に引き込まれました。
治(リリー・フランキー)の事を最後まで「お父さん」と呼ばなかった祥太(城桧吏)の意味が伝わってきて,泣けてきた。
警察官の質問に対して信代(安藤サクラ)が最後の方まともに答えなかった気持ちも伝わってきて、、、。
「家族」というテーマに切り込み、問い続ける監督と、演者たちの絶妙な感情が画面越しに伝わってきた。
子供たちのキラキラとした飾らない姿が、この作品でも。愛おしくて素敵でした。
「誰も知らない」や、監督違うけどドラマ「幸色のワンルーム」でも思った事だけど、世間がいう正しい形ではないからと言って排除したり否定しないで欲しい。彼らの居場所に踏み込まないで、そっとしといて欲しい。
何が正しいのか、自分や世間の考えだけで勝手に判断し行動しないで欲しい。それが及ぼす影響をもっと考えて欲しい。
樹木さんが素晴らしい。
描いてる世界観と演者さんの清潔感がミスマッチで気持ち悪い。その中でも樹木さんの化かたは秀逸。
映像は流石です。が、その美しさが哀しさをより際立たせる技巧となってる様には見えない。
キッカケとなった児童保護施設の女の子に対する考え方も、監督の富裕層特有の目線で共感できない。し、深掘りできてるとは思えない。
問題提起するだけなら、ドキュメンタリーを撮れば良い。
世界の流行りに乗って賞を取ったから、観たという感じ。
法律とルールとモラルと
2回見た。
1回目で答えが出せなくて、
もう1回見た。
答えがでた。
「これは結論を出してはいけない。」
という答えがでた。
3回目見ると別の答えが出るだろう。
5年後見たら別の答えが出るだろう。
そういうテーマ。
保険に入るおばあちゃん。
押し入れに住むショウタ。
風俗の客の涙に共感するアキ。
お風呂でも水着を着るリン。
見えない花火を楽しむ家族。
「自分で選んだ方が強いんじゃない?・・・絆よ。」
でも1度もお母さんと呼ばれたことはない。
海ではしゃぐ家族を見て独り言をつぶやくおばあちゃん。
何を言ったのだろうか。
逮捕後“家”に戻ったアキ。
あまりにも変わらない家に何を思ったのだろうか。
バス停でショウタの肩に手を乗せるのを、ほんの一瞬ためらう父ちゃん。
「わざと捕まったんだ」から父ちゃんの姿が見えなくなるまで
振り向かないショウタ。振り向くのをガマンしたのか。
ビールケースに乗り遠くを見るリン。
何を見つけたのか。
来年このレビューを見た時、
果たして私は同じ感想を持てるだろうか。
今から楽しみだ。
是枝ワールド全開
いい意味でも悪い意味でも、相変わらず淡々と進むストーリー。しかし、複雑に入り組んだ「家族」の形を通して、家族とは一体何なのかをじんわりと問う。
血の繋がりが家族なのか?互いの気持ち?SEX?お金…?
犯罪者であろうと警察であろうと、何にせよ一方向からの正義なんて存在しない。世の中は簡単に線引きなんかできないのだ。バス停で祥太が放ったひと言をあなたはどう捉えるか?パルムドール受賞の名に恥じない良作です。
どこにも愛はなかった
寂しい者同士、肩を寄せあって作ったかりそめの家族。祥太の万引きがバレなくても、社会と接点をもたずに育つ子供に明るい未来が待っているわけがないことは大人なら誰しもわかる。初枝が亜紀の存在を隠しながら両親のところへ行き強請りのようなことをしているのも、復讐めいた感じがして恐ろしい。
だけど、この家族を不道徳だとか無知で片づけることが誰にできるのか?家族を取り巻く人々に愛はあったか?虐待する親、綺麗事を並べる警察、誘拐を知ったパートの同僚、駄菓子屋の店主だってもう一歩踏み込んでいれば・・・。
結局どこにも愛はなかった。そこにリアリティーがあった。
家族、幸せって何だろう
本当の家族、幸せって何だろうと考えさせられる。
血は繋がってないし、お金はないし、ゆっくり出来ず、好きなことが出来てた訳ではないけど
あのころが幸せだった、ということを俳優の表情と目で表現していたのが素晴らしい。
海辺でみんなを優しく見つめる樹木希林。
取調べを受けながら何かを思い出し、遠い目をする信代。
最後にもう1回”我が家”を見に来るアキ。
バスを追いかける治を目で追い続ける祥太。
そして、ラストシーンの何とも言えない・・・リンちゃん。
みんな家族だった。そして何か、悲しい。
もどかしさが胸をかすめる作品
「万引き家族」とのタイトルであるが、その家族構成がイマイチ説明されず、少しずつ会話の節々や当事者同士の距離感でそれを推察していくしかないのだが、現代の底辺層の生活が本当にこのようなのか?と言う不安というのか、なんとも言えない感情が胸のあたりをウロウロとしたまま物語は続いていく。
言わずもがなの名優たちがそれぞれの味を出しているのだが、やはり本当のその配役の人間がそこに居るような演技はさすがである。それは特に子役の二人が輝いており、お兄ちゃん役の城桧吏
くんは物語の中核を担うキャラをしっかりと演じきっていた。
また安藤サクラはお世辞にも美人とは言えないが、独特の魅力や艶っぽさがあり、素敵な女優だと再認識できた。
万引きという比較的軽いと思われがちな犯罪(りっぱな犯罪ですが、、、)から家族構成を魅せていく手法、またそれと並行して社会のおかしな点を糾弾していく姿勢には感服します。
またそれぞれの特に子供達の表情や心の機微を描くのが非常に秀逸だと感じました。
最後に少しずつ家族のそれぞれの中身が明らかになっていくのだが、治と信代が正当防衛とはいえ殺害し、埋めたというのはなんともピンとこない。またリリー・フランキーも色々な役柄をこなすカメレオン俳優ではあるが、安藤サクラと共に見せる屈託の無い笑顔には元々の人の良さというものがにじみ出ており、リアリティに欠けていたとも感じた。
しかし、ラストのゆりちゃん(りんちゃん?)の描写は悲しすぎる。まだ日本のどこかにこの様な状況が起きているのだと思うと非常に悔しい気持ちでいっぱいである。
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