「つまらなくはない、勧めはしない。」未来のミライ 三条千草さんの映画レビュー(感想・評価)
つまらなくはない、勧めはしない。
落ちにイデオロギー的セリフでもって〆ようとした点がとにかく最悪。
若い社会人、ひいては現代のすべての日本人に対しての皮肉ともとれる「そこそこでいい、最悪じゃなきゃ。」が最悪としか言いようがない。
話の内容は血縁、過去の誰かがいてくれたから今の自分がある。そして子供の成長。けれど落ちは両親が発するイデオロギー。
賃金低い、結婚すると文句言われる、産休育休取れない、子供産めない、職場復帰できない、共働きしなきゃいけない。国は事態を悪化させるだけ。
それが全く関係ないハイソサエティ夫婦の、沈黙の螺旋の体言化ともいうべきセリフ。
過去の人間から脈々と受け継いできた血筋も、未来を生きる子供の成長も「そこそこでいい、最悪じゃなきゃ。」という今の大人がぶち壊すというメッセージなのか。
・トトロの「お父さんお花屋さんね」のパロディシーン
父親が「父」の仕事をしていない対比演出。
・「ハチゲーム」が女優の演技でペド全開。
・未来ちゃんのおひな様
自分の恋の障害になりえるものは何が何でも些細なものでも排除しておきたい、という女子中高生的感覚。
妹特有の要領の良さが出ていた。
・お母さんの子供時代
弟のいる姉の女王様感。
現代パートでの理想の母親像と自分との乖離・葛藤。
・ひい爺ちゃん
自転車の話→「人は繋がっている」ことの直接導話、ここであっさりしすぎてモヤモヤする。
・高校生くんちゃん
この「大人でも子供でもない世代」が子供くんちゃんにもつ嫌悪感を代弁。
・庭の木
樹形図。分岐が違えば自分はいなかったことに対しての象徴。
パートごとには納得するものもある。
主人公の上白石の演技は最低だが他は問題なく、ひいおじいちゃん役の福山雅治が流石ですらある。
映像はきれいだ。
個人的に迷子になる「駅」を舞台に一本、ひいおじいちゃん(福山雅治)とひいおばあちゃん(真田アサミ)で一本映画を作ってほしいくらいだ。映像美にため息が出る。
だが、落ちがとことん、とことんまでに最悪なのだこの映画。
あーもー。
なんでこうなるのかなあ。劇場を出る際それしか言えない。
映像美、センスのいい音楽、脇を固める名優陣に敬意を込めて☆を捧げる。
脚本だけならマイナス五千点付けたい。