ファントム・スレッドのレビュー・感想・評価
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心理学好き用の映画
ファントム・スレッドってどんな意味なのだろう。予告を見た感じは、ただの神経質なデザイナーの話かなぁと思っていたが、どうして、どうして、凄すぎる極めて上質な心理劇だった。
主人公の佇まい、優雅な時、微笑む時(めったにないが)、そして、自分の時間を音や予定外の事で邪魔された時の豹変する表情、動きがやきつく。
役者として、うますぎる、目が離せない。(ダニエル・デイルイスって憑依型の凄い役者だとは知らなかった。)
アルマは、姑息な手段で彼を弱らせその時の彼につけこむ、そのルールに慣らされて行く主人公、二人の愛の形。
この映画は、いびつな愛の形の大人の映画だと思う。
エキセントリック
アルマはレイノルズと出会わなかったら、一生もっさりとした田舎娘のままの様な気がしました。逆にレイノルズもアルマと暮らさなかったら、人に興味を持てずドレス以外にハマるものがない人生だったのかもしれません。幸か不幸か、ハマる人と出会い刺激を受けたからエキセントリックな人間に変身ができて、変わった行動をとるようになった。人生は出会う人によっていかようにも変わる、ということを示唆しているようでした。
また、作品に出てくる様な芸術的なドレスを作る人間は、間違いなく恋愛は二の次だと思います。男性だからという理由ではなく、芸術家にとって創作が最もドーパミンが出て気持ちが良いからなのではないでしょうか。アルマ本人に才能があったら、きっとここまでレイノルズに執着しないのではないかと思いました。
すっきりとは理解不能、でも、自然。
独身主義の男から愛を受けるには…
相手の苦しみを誘い出し、それを癒すことができるのは自分であると。
二人の心の動きはすっきりと理解はできないが、不自然さは覚えない。
面白いです。
映画は音楽が大事です!
1にドレス、2に恋愛
「そのドレスは息をのむ美しさだった」。
文章ならそう書くだけで、あとは読者は好きに想像し見事なドレスがそこにあると認めてくれる。文章なら。
しかし映画だとそうはいかない。色・形あるものとして、実際に見せなければいけない。世界中の誰しもが、とまでは言わないにしても、大多数の人が認める息をのむほど美しいドレスを。
この映画はそれをやってみせて、アカデミー衣裳デザイン賞である。じゅうぶんに納得である。ここに大拍手。
だからあとの、偏屈な男の渋っ面まみれの恋愛はおまけだとみなしてもよい。この映画の宣伝文句をみると、この二人のあいだに生まれた奇矯な恋愛観を持ち上げているけど、そこにあまり先入観を与えてしまうのはいかがなものか。
これぐらいの恋愛観は、ありがちで、むべなるかなである。
まずデザイナーという人種は何事にも、ここはこうあるべきだと断定できる人であろう。客観的にそうだと主観的に決めつけることができて、疑いもしない人である。
家があり、家族がいて、仕事があり、彼女がいる。「男の恋は男の人生の一部であり、女のそれは女の全生涯である」というのはバイロンの言葉だが、つまりはそのあたりの感情のせめぎあいである。繊細で偏屈な男と大胆で素直な女の駆け引きが、生命力旺盛な蔦植物のように出来事をつなげて奥へ深みへと延びていく。そのところどころでドレスが花を咲かせている。この映画はそんな図式だ。
なんら慌ただしくないのに緊迫感は途切れず、映像は静かなのに饒舌で、美しさが正で醜さは悪の世界観に見ているこちらも徐々に支配されていく。
しかし、俳優といい、音楽といい、映像といい、その調和の見事なこと。まるで息をのむほど美しいドレスのようである。そうか、すべては裏糸で縫い合わされていたのかと、これまた綺麗なフォントのエンドクレジットをみて腑に落ちた。
豪華版冬彦
ひとつの愛のかたち
主演女優は「マルクス エンゲルス」で主人公カール・マルクスの妻を演じたビッキー・クリープスである。マルクスのよき理解者であり優しい妻である女性を好演していた。本作品では女の強さと優しさに加え、女の業とでも言うべきおどろおどろしさも表現している。
主人公アルマは伏し目がちの目、声を張らない喋り方、ゆっくりとした動作、はにかむような笑顔など、女の魅力満載だが、一方で強固な姉弟関係に割り込んで自分の居場所を確保する強引さ、強かさも持っている。神経質で気難しいデザイナーは、もともと線が細くてまったく彼女に太刀打ちできない。
それにしても原題の「Phantom Thread」はどういう意味なのだろうか。翻訳し難いので邦題も「ファントム・スレッド」になったと思われるが、直訳に近い「運命の赤い糸」でいいのではないか。見えない糸で結ばれた二人。サドとマゾ、破れ鍋に綴じ蓋など、あまりいい意味ではない言葉がぴったりの二人。そういう愛のかたちはこの世にたしかに存在する。
映画は、たとえ周囲がどう考えようとも当人たちが幸せならそれでいいのだと力強く肯定しているように感じられる。常識人としての姉の存在が効果的だ。
ダニエル・デイ・ルイスはスピルバーグ監督の「リンカーン」での力強い演技が印象的だが、本作ではひとりの女に心を乱されていく情けない男を見事に演じ切った。クリープスとの掛け合いは相手を説得しようというよりも主導権争いに見える。破局するかのようだが、それでも互いから目が離せない。見えない糸に結ばれているかのようだ。最後まで観て、タイトルの意味を考えて漸く納得した。
おしゃれで上質なミステリー
映像や音楽、演技や世界観、すべてにおいて質が高く、まさに映画芸術といった印象。
はっきり言って、設定や題材は全く興味がないし、多分自分には合わないだろうと思いつつも、主演と監督の名前で見た映画。そしてその予想や不安はズバリといったところで、質に非常に感心しつつも、基本的な面白さに欠ける(そう思ってしまう原因は自分にあるのだけれど)という思いは最後まで変わらなかった。
しかしながら、ミステリー要素が盛り込まれたストーリーには結構ハマってしまったわけで、興味深い愛のカタチを見せてもったような気がする。
ピアノとストリングス中心のクラシック音楽も非常に効果的だったと思ったし、何気にサントラ欲しいかも…なんて思ったりもした。
服飾を題材にし、徹底的におしゃれな雰囲気を創り出そうという意志が最後のエンドロールまで感じられ、完全に読み切れるはずもない文字を眺めながら、心地よい音楽とともに画面を見つめていた。久々に最後の最後まで映画を見きったような気がした。
興味がない題材とか面白味に欠けるなどと言いつつ、結構楽しめていたのかも─
よかった
人を愛することを知らない創作者というのは他人事ではなく、彼にも親になってそれを知って欲しかった。そういった共感はあるのだが、何しろ洋服に全く興味がないのであんまり面白くなかった。素晴らしいドレスにうっとりするのがこの映画の魅力の3割くらいはあると思う。
デザイナーの苦悩、衣擦れの音…。
アーティストの強度は真の愛によって揺らぐ
圧倒的濃密度の映画できのうきょうで7本近く映画館はしごして最後がこ...
強い男の弱さを握る
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