マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー : 映画評論・批評
2018年8月14日更新
2018年8月24日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー
プロローグ直後から怒濤の展開!まだまだ止まらないハッピーなウェーブ
まさかの続編はプロローグ直後から早くも怒濤の展開。母親、ドナの夢だったホテルを遂に完成させたソフィの妊娠が発覚し、本来ならダブル・ハッピーのはずなのに、夫スカイとの意識のすれ違いに悩んだソフィがドナの若き日に思いを馳せたことから、時間軸は過去と現在を頻繁に往き来。そんな慌ただしい物語の余白から、母になることの混乱と至福が、エーゲ海の風とABBAのメロディに乗って香り立ってくる。前作同様、何しろこのミュージカル、幸せな気分になれるのだ。
ドナ、ターニャ、ロージーのトリオバンド“ドナ&ザ・ダイナモス”の昔と今で6名、ソフィアの父親候補、 サム、ハリー、ビルで同じく6名、計12名の新旧キャラクターが入れ替わり立ち替わり登場するので、役者と役者を役柄で結びつけるのに少々手間取るかも知れない。でも、程なく混乱は収まる。キャスティングディレクターの努力の甲斐あって、例えば、ビル役のステラン・スカルスガルド(今)とジョシュ・ディラン(昔)は広めの額と淡泊顔がまるで親子のよう。その昔、淀川長治氏が言っていたっけ。ちゃんと似た子役が出てくる映画は手間をかけている分、1流だと。
製作総指揮には前作に引き続きトム・ハンクス&リタ・ウィルソン夫妻と、原案も兼任するリチャード・カーティスが新たに参加。カーティスは「アバウト・タイム 愛おしい時間について」(13)で代々タイムトラベル能力がある家系に生まれた主人公が、過去を変えようと奔走する姿を描いていて、家族の過去と現在という同じテーマを、世界注目の続編に形を変えて再利用したのかも知れない。
肝心の音楽も設定とベストマッチのチョイスだ。ABBAの出世作でありながら、前作では物語の枠に収まらずオマケ映像で紹介された“恋のウォータールー”を、若きドナとハリーが、ボーカルのフリーダが離婚の悲しさを悩ましげに熱唱する名曲“ノウイング・ミー・ノウイング・ユー”を若きドナとサム、今のソフィとスカイが歌い合う。勿論、てっぱんの“ダンシング・クイーン”新バージョンもあります!
極め付きは、ソフィの祖母役で花を添える、と言うかがっちり場をさらうシェールが、唯一のプロの歌手として本領を発揮する“悲しきフェルナンド”。実際、ジェンダーレスな歌声は今も現役バリバリだ。伝説のディーバまで蘇らせてしまう「マンマ・ミーア!」とABBAのメロディ。今年12月にはABBAが再結成されるらしいし、このハッピーなウェーブ、まだまだうねりそうな気がする。
(清藤秀人)