海の産屋 雄勝法印神楽

劇場公開日:

海の産屋 雄勝法印神楽

解説

東日本大震災による津波で被災した宮城県石巻市の小さな村を舞台に、石巻の伝統芸能・雄勝法印神楽が人びとを勇気づけ、絆を結んでいくさまを描いたドキュメンタリー。宮城県雄勝半島にある石巻市の漁村・立浜は、東日本大震災の大津波で46軒のうち1戸だけを残して被災。絶望的状況の中、12人の猟師が村に残ることを決断する。男たちは生活の再建とともに失われた神楽面や祭具を作り直し、海辺に柱を立てて舞台を作り、祭りの復興にも乗り出す。600年前と変わらない太鼓と笛の音やリズム、神楽の舞いが、被災した人びとの新たな力となっていく。監督は「ほかいびと 伊那の井月」の北村皆雄と戸谷健吾。ナレーションは寺尾聰。

2017年製作/75分/日本
配給:ヴィジュアルフォークロア
劇場公開日:2018年1月2日

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映画レビュー

4.0シネマテークで上映初日の2本立て!

2018年4月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

雄勝法印神楽と羽黒修験という、何ともひっかかる魅力的なドキュメンタリー。 久々、何十年ぶりかの映画2本立て(今は入替制だけど)でした。 とにかく、シネマテークさんありがとう。 前回観た黒森神楽の廻り神楽から、3部作のような意味での上映だったので、仕事を後回しにして初日に駆け込んだ。 フォークロアとしての記録でもあり、難しい言葉もたくさん出てくるけど、修験と切っても切れないただならぬ関係の神楽をもっと知りたいという欲求が満たされるというか、まだまだ知らない世界がたくさんあってよかったという安心感と、自分の根底にある熊野や花祭や白山が修験という未知の領域から絶えずわたしを呼んでいることへの答にならない再認識の旅へ誘ってくれた。 7日初日は両監督が舞台挨拶で登壇。 配給しているヴィジュアルフォークロアにも興味津々。 単なる記録映像というだけでなく、民俗学的にもしっかりした研究が行き届いた眼差しでとらえたからこそ、伝えたいものがこちらにちゃんと伝わる作品でした。 まずは1本目の『海の産屋』から。 三陸を襲った津波シーンからはじまるように、3.11ですべてを失った雄勝の海に暮らす漁村で、神話さながらに国づくりをはじめる住民の姿が映し出され、震災の翌年に1年掛かりで見事に復活した雄勝法印神楽のドキュメンタリー。 出羽修験の流れをくむ神楽は、海と山を生業にして暮らしている住民たちが担う。 その豊かな恵みに感謝しながらも、ときに牙をむく大自然の前に呆然としながらも、何十年に一度の津波があろうとつづいてきた神楽を、この地で生きる糧として心の中心に置いていることに感動する。 カメラ側から「海を恨んでいないのか?」との質問に、「なんもなんも、恨むようなことはない」と。 手を掛けた養殖場がすべて根こそぎ流された漁師も、豊かな海のプラス面だけでなくマイナス面もしっかり受け止めるという言葉が返ってくる。 なぜなら、それで無になるわけでなく、津波の翌年は豊漁となることを意味はわからないが知っていていて、自然の摂理の中でしか生きられないことをよく知っているからだ。 そんな中で行われる神楽も、村人が子供の頃から親しみ、今でも孫や子供らが食いついてみるくらいの人気がある。 最後の演目が、産屋。 火山列島の日本ではどんな災害に見舞われようと、豊かな海と大地が命を生み育て、わたしたちに至るまで産まれることでつないでくれてきた。 ここでいう法印とは修験のことで、600年前に羽黒修験の山伏が伝えたという、生まれ清まりの思想が根づいているのかもしれない。 明治という日本文化の解体により、神社と寺はまったく違うものに変えられてまったく見えなくなっている修験が、こうしたところに残っているのがうれしい。

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