50回目のファーストキス : インタビュー
山田孝之×長澤まさみ、「50回目のファーストキス」で向き合った“素直な恋愛”
アダム・サンドラー&ドリュー・バリモア共演で大ヒットを飛ばしたラブコメディ「50回目のファースト・キス」を、山田孝之&長澤まさみでリメイクした「50回目のファーストキス」が、6月1日に公開される。山田と長澤は、30代の今だからこそ“素直”に演じられたという恋愛模様を体現。恋愛映画のゴールになりがちな“告白してキス”で、ようやくスタートラインに立つ2人の強い思いが、恋する勇気を与えてくれる逸品となった。(取材・文/編集部、写真/根田拓也)
映画は、ハワイ・オアフ島でツアーガイドとして働きながら天文学の研究をしているプレイボーイの弓削大輔(山田)と、事故の後遺症で眠ると記憶がリセットされてしまう女性・藤島瑠衣(長澤)の純愛を描く。
今作で久々にラブストーリーというフィールドに戻ってきた山田は、「単純に年齢的なもので、今でも本当につらいと思ったときに涙がバーっとあふれたり、嬉しいと思ったときに本当にニコッと笑えたりするのかなという不安はありましたけど、全然むしろ今の方ができました」と撮影時を述壊。「若いときの方が逆にトゲトゲしてる。『こんなんねえよ!』って思いながらやってるわけですから。(今の方が)素直にできました」
これには長澤も「確かに!」と強く同調。「大人になってからの方が、ラブストーリーに柔軟に挑める気がする。照れも少なくなって、ちゃんと向き合える」と、人生の経験を積んだからこそのアプローチの変化を明かした。
今作で2人が表現したのは、“大人の恋愛”ではなく、“大人になっても変わらない恋愛”だ。瑠衣がこの上なく嬉しそうに放つ「ファーストキスって最高!」というセリフが、年齢や経験を重ねても、恋愛中のドキドキ感やワクワク感が色褪せることはないと教えてくれる。
そんな長澤の演技には、間近で見ていた山田も「チャーミング」と太鼓判。毎日存在を忘れられても、瑠衣に思いを伝え続ける大輔の気持ちを代弁する。「瑠衣が『ファーストキスって最高!』って言ってくれることで、大輔も続けられた。新鮮なリアクションが毎回来ることが嬉しいし楽しいから、どんどん新しいことで楽しませようとする。で、それがスベったりもする。でもそれはそれで嬉しいんじゃないですかね? 『あっ、この微妙な差が彼女の好みにあるわけだ』みたいな。そういう、ひとつずつ瑠衣のことを知っていけるところが、こういう2人の関係に繋がったんじゃないでしょうか」
約11年前に「そのときは彼によろしく」で共演した2人だが、当時はあまりコミュニケーションがなかったという。今作で約1カ月間に及ぶハワイロケを敢行し、その距離は一気に縮まった。山田が「僕は共演できてとても嬉しかったですし、ハワイでもとても楽しかったです。幸せな日々でしたよ」とはにかむと、長澤も「私も嬉しかったです。本当に共演者の仲が良くて、ホテルの1階にバーがあったので、みんなで毎晩一緒に過ごしました。青春をしてる感じで」とニッコリ。「修学旅行みたいだったよね」(山田)、「そうそう! じゃあ何分後に下ね~みたいな感じで(笑)。そういう空気感が作品のなかにも映し出されている感じがして、チームワークがあってよかったですね」(長澤)
今作では、これまでコメディ作品を多く手がけてきた福田雄一監督が初めて恋愛要素に注力し、病気に対する悲しみや、伝えきれないもどかしい気持ちをユーモアで包み込んだ。数々の作品で福田監督とタッグを組んできた山田は、「コメディをできる人はすべてできる。コメディって全部の要素が入っているので、これだけ実績がある人は、何やったってそりゃできると正直思います」とその手腕に全幅の信頼を寄せる。
「銀魂」で福田監督作初出演を果たした長澤は、「『俺はまだ本気出してないだけ』を見て、シリアスな作品も撮るんだと感じた」と、福田監督の意外な一面を発見したと話す。「やはりコメディって難しいじゃないですか。基礎がしっかりあるからこそ今の福田ワールドが成立しているわけで、そのふたつが融合された作品であるということがこの映画の魅力。この作品自体が福田さんのためにあったようなものでもあるし、今作で福田さんとどっぷり仕事ができたことは、すごく恵まれていたと思います」と真摯に語った。
それでもやはり福田組。長澤が「(佐藤)二朗さんとムロ(ツヨシ)さんが、『福田組でハワイに来るなんて』って毎日言っていて。それがなんだか愛があって、あたたかい気持ちになりました(笑)」と福田監督作常連組の様子をバラすと、山田は大笑い。8月に「銀魂2(仮題)」の公開を控え、福田監督のもとでコメディエンヌとして開花した長澤と、今作で役者としての幅をさらに広げた山田の今後の動向に、期待は高まるばかりだ。