日日是好日のレビュー・感想・評価
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女優はいいが
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ふとしたきっかけで従妹の多部と共に茶を習うことになった黒木。
先生の家には日日是好日と書いた掛け軸があった。
やがて紆余曲折を経て24年が経ち、教える側に回ることになる。
その頃に改めて日日是好日の意味を理解する。
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昔よく使ってた表現で言うところの徘徊型映画。
特に目的もないままに時が流れ、何と24年も経ってしまう。
その間にお茶以外のプライベートでも色んなことが起こる。
多部の退職と結婚、高校生の天才現る、恋人との結婚直前での別れ、父の死。
ただどれもサラッと触れられるだけやから、盛り過ぎな感じはした。
全ては黒木が自分を不幸と感じてしまったり自分を責めたりしてしまう出来事で、
でもお茶があったから心が揺れまくる中にも平常心を持て、乗り越えられた。
だから全体を通して禅を学んでるようなところがあって、
どんな時にも今ここを意識するってことで幸福を感じられるという話やったな。
日日是好日は、そうすればどんな日でも好い日と解釈できるという象徴的な言葉。
主人公の黒木は真面目なのに要領が悪過ぎて何をやってもうまく行かない。
そういうのに感情移入できる人からしたら最高の作品なんかもなあ。
ただおれはデキが良過ぎて、そこがちょっと共感できんかったな。
でもそのへんをうまく表現できる黒木はええ女優やなあって思った。
もちろん希林もええ味出してた。見終わった後は妙に清々しかった。
「道」を観てから観るといいかも
「日日是好日」はお茶を通してある女性の人生の起伏を魅せる映画だ。
何の気なしに、母の勧めるままに、お茶を始める二十歳の典子。多分、お母さんにしてみれば「ただ者ではない」武田のおばさんの、佇まいの欠片でも、娘の人生の財産になれば良いな~、みたいな軽い提案だったんじゃないだろうか。
「真面目で不器用な」典子は、従姉妹の美智子と違い、好奇心や積極性で自分の人生をグイグイ切り開いていく様には思えない。
親心から来るさりげないアシストだ。
真面目が功を奏した形で、典子は少しずつお茶の楽しさに目覚め、人生の浮き沈みの傍らにいつもお茶があった。
美味しいお茶と、季節の移ろいと、自然と五感がもたらす感動が、典子の人生の道筋を確かに彩っているのだ。
さらにこれは一つの「世界」を極めようとする映画でもある。
些細なきっかけで始めたことでも、続けていくうちに朧気ながら輪郭が掴めてくる。茶碗、掛け軸、お菓子のしつらえに、一体となった「世界」が見える。
現実の枠を飛び出すような、心に広がる壮大な「世界」を感じる瞬間。その静かな高揚が、典子の表情や仕草から伝わってくる。
作法を意識せずとも所作をこなせるようになっても、亭主の意匠を感じられるようになっても、油断はならない。
間違えたり、雑さが抜けなかったり、精進に終わりはない。長い長い道のりだ。
そしてお茶の精神とは、「一つとして同じお茶はない」ということだ。またご一緒しましょう、の約束が叶わないこともある。
人との出会いも、季節の巡り合わせも、幾筋もの道が折り重なった産物だ。その日は一生に一度しかない日なのである。
ここまで書いて気がついた。
この映画は「道」を見立てたお茶室だったのだな?
フェリーニの「道」、茶道という「道」、そして典子さんの人生という「道」。3つの道が重なりあい、響きあう監督のしつらえだったのか!
フェリーニの映画を掛け軸に、典子さんの淹れてくれたお茶を楽しむ。
是非とも心までポカポカするような、温かいお茶をお供に観賞して欲しい。
結構な御点前でした。
日本人の感性の磨かれ方
樹木希林の遺作となった作品。黒木華と多部未華子がお弟子になって、茶道を指南されるのが微笑ましい。最初に形だけなぞっておいて、後から心を入れるという考え方。これは、日本文化の隅々まで行きわたっていたのではないか。型から入って、十分に習得したら、型を崩してよい。
何年も茶道に親しむことで、少しずつわかってくることがある。「茶道」を習慣にすることで、それが自分の日常に必要なもの、時間になっていく。恋人に裏切られたり、父が亡くなったり。そんな悲しいことがあっても、型を覚えていることで、気づいたり、救われたりすることもある。フェリーニの名作映画「道」を以前に見た時は、まったくわからなかったけれど、その凄さがわかるようになった。「道」は、「茶道」に掛けた言葉だろう。人としての良さは、毎日の積み重ね、習慣に心を入れていくことで培われるのだよって言われているかのよう。
「一期一会」「聴雨」、冬は冬の良さを夏は夏の良さを味わう、その時、その時の瞬間を味わい楽しむ。そんな禅の世界をも表しているように見える。
樹木希林が癌を患い、痛みに耐えながらも、次の映画界を担う若手女優二人に、「茶道」や「日々是好日」の考え方やら女優としての有り方を伝授したのではと考えさせられる作品。
日本の細やかな感性で
とても好きな作品。
配信で2回目の鑑賞。
1度目も好きだった印象はあったが、すっかり忘れていた。
淡々とした毎日でも、季節の移り変わりや、小さな生活の音や目にするもの、ひとつひとつを大切にして生きて行きたいと思える作品。音楽もとても心地よい。
日本人ならではの感性で楽しめる良さだと思う。
海外では、虫の声も雑音に聞こえるらしい。
虫の声を楽しめる世界で生きてることに感謝。
黒木華さんが素晴らしい。
ちょっとした表情や、声のトーン、話し方、全てがこの作品にピッタリだ。多部未華子さんも良かった。
何よりも、樹木希林さんが素晴らしい。
この作品の後すぐに、この世を旅立たれることになったことでさらに、セリフのひとつひとつが心に響く。
最近、マインドフルネスで瞑想をしているが、それと同様、今、この時を精一杯味わうこと。そういうことだ。
お父さんが急に亡くなり、海で「お父さん、ありがとう!」と典子が雨の中で叫ぶシーン、心にグッときて涙が溢れた。私も2年前に父を亡くした。映画とは違って、急ではなかったし、高齢だったので覚悟はできていたけれど、それでも、今も、父にありがとうと伝えている。生きている時も、もっともっとありがとうと言いたかった。
忘れがちな、毎日を大切にすること。
今いる場所で、自分らしく生きること。
そんなことをしみじみと感じることができて、2回目を見てよかった。またいつかリピートしよう。毎日の忙しさに、また大切なことを忘れた頃に…。
すごくいい作品、大満足です
25年間の春夏秋冬を優しくしっとりと描いた秀作
お茶をたてる時のお湯の音
木々を打つ雨の音
柔らかく部屋の中まで照らす陽の光
素敵な器に入った個性的な和菓子の数々
脳を刺激する掛け軸の字や絵とダイナミックな筆圧
温かそうで今にも畳の匂いがしてきそうな綺麗な和室
等々が全編通して五感を気持ち良く刺激してきます
黒木華さんの自然で悩める主人公の好演も良かったですが、やはり本作は樹木希林さんが素晴らしかった
先生だけども「私もいつまで経っても上手にできないのよ」なんてたくさんの生徒の前で言っちゃう所や生徒に作法の意味や必要性を聞かれても「そんなこと聞かれてもねえ、知らないわよ、考えるもんじゃないの、感じなさい」みたいなことを言われます、とにかくすごく自然体で余裕、大きい、大きすぎる
でもって所作が綺麗、静かに流れるような動きは到底 一朝一夕では成し得ない技、苦労と努力を重ねてきた大女優の貫禄を目の当たりにし圧倒されました
掛け軸の解説をしてくれたりするのも良かったし、こういう有意義で幸せな時間を過ごせると本当に心が豊かになるだろうなと思いました
”日々是好日”、毎日毎日 来る日も来る日も同じことを繰り返し過ごせるのは喜ばしいこと、人間それが一番幸せなんだろうな、と樹木希林さん演じる先生が語るくだりが一番グッときました
ジュリーの「土を喰らう12ヶ月」や富司純子さんの「椿の庭」と同系列のしっとりとして五感を刺激してくる名作群の一本です
すぐに分かることと時が経って分かること
頭で考えずに体で覚える。慣れれば勝手に手が動く。五感を使って季節や音を感じる。同じ日は二度とない。
最近樹木希林の言葉に感銘を受けることが多く見てみたかった作品をやっと見た。もうすでに他界されていることが本当に惜しい。
幼少期に少し茶道をやっていたこともあって序盤から入り込んだ。一つ一つの動作が懐かしくこんなことやったなぁと自分の体験に重ねながら見た。
幼い頃はその所作の意味もお道具の種類もわからずただ言われるがままやっていたからお稽古に行くのがつまらなかったが、大人になってふとした自分の仕草にあの時のお手前の意味を感じることが多くあった。流れるような品のある仕草。一つ一つの所作に意味があったことを後から知る。道具も季節によって使うものが多くとてもお稽古で覚えきれなかったがなぜその茶器を使うのか、季節ごとの掛け軸や茶菓子の意味、全てのものに意味があって奥深い世界。貴族の道楽と言えばそれまでだけど、ただただ現代では必要のない手技をわざわざ習う人が絶えず継承されていくのはそういうことなのだろう。
黒木華の成長していく姿、特に自信がついてきてからのお手前中の姿はハッとするほど美しく流れるような所作に吸い込まれるようだった。師範を務めた樹木希林、視聴後知ったが茶道は初めてで稽古をしたことはなく直前に見本を数回見ただけで完璧にコピーして演じたというからすごい。それであの貫禄。名女優と言われ人々を魅了する理由がよくわかる。セリフは少ないが会えば包み込むような雰囲気と笑顔、そして一言一言に重みの意味のある言葉。同じ人が集まっても二度と同じ日はない。【どのような日も自分にとってかけがえのない一日である】という教えという掛け軸の言葉。刺さる。
『私は不器用で機転が効かない。ここにも私の居場所がない』何年も続けているお稽古なのに自分より後輩が自分より出来て自信を無くしたり恋人との結婚が白紙になり人生の真冬期状態の典子の呟き共感した。何もかも上手くいかず誰からも必要とされてないような目の前の道が見えなくなるような不安孤独。そんなシーンも淡々と流れ季節は春に向かう。
作中、父親が倒れるくだりはベタな流れだったが人生そういうものなんだろう。樹木希林と黒木華以外の脇を固める人物の描き方は少々雑だった感は否めない。特に美智子はもう少し何とかならなかったのかという感はある(少々デリカシーにかける点。毎週会っていたのに距離のある感じ)
淡々として盛り上がりはないが私は好きな作品だった。
考える前に、先人の知恵にゆだねる
これは原作がでたときに、
本屋さんで手にとってひきこまれて
その場でほとんど読んでしまい、
その後も心に残っていた本なので、
今回の映画化は
とてもたのしみだった。
形をくりかえして心を入れる。
それは、先生もそうとしか
教えようがないのだと思う。
私は学生時代、能楽を
やっていたけれど、
舞や謡などは理屈抜きに繰り返して
覚えるしかない。
自然に動けるようになってはじめて
自分なりの解釈などを
すこしづつ入れられるようになる。
その頃茶道を習っていて、
能の舞の姿勢や足運びと、
お茶のお運びの姿勢が
よく似てることに感動した。
あるとき、ふっ、と
腑に落ちる瞬間がある。
もちろん、全てではないけど、
典子が掛軸をみて滝をかんじたように、
水や雨の音をききわけたように。
それは不思議な快感だ。
そしてそれは、無心な繰り返しの中で
初めて得られる。
「こんなことしてなんの意味が
あるんだろう」とか、
「何の役に立つんだろう」
という前に
素直に繰り返す姿勢は美しい。
「稽古」とは古いことをなぞることだ。
ひたすら体に覚えこませる。
そうしてはじめて見えてくることがある。
まず形を作って、そこに心を入れる
自分が、自分が、という個性の主張、
自由という言葉に
かえって縛られてやしないか。
我、というのは尖った形だ。
尖ったところをすこしづつ
丸くしていけば動きやすくなり、
色々なものが
見えてくるのかもしれない。
茶室は狭いけれど、
精神を解き放つことができれば、
大いなる宇宙である。
人智を超えた大きな営みの流れに、
自分を合わせることができるのかも
しれない。
心静か、ということは
なんと幸せなことか。
なんでなんで
自己満足
作者の自己満足という風に感じてしまった。
自分が本当に何をしたいのか分からない、自分だけ前に進めない感じがする。そんな人生だけどお茶のお稽古で変わってゆく。そんな話。
観る年代によって感じ方は違うのだろうけれど、典子と美智子、2人ともものすごく普通で、そこら辺にいる若い女の子といった感じ。一緒じゃないとお稽古嫌だ、とか2人で目を見合わせて笑う感じとか。
その後歩む人生も、特に周りと違うことは訪れない。悩みも、何もかもが言ったら悪いけど普通。
他のお茶に通う生徒たちも皆同じ。特に着物を着てたくさん集まっているシーンなんかは皆同じでちょっと異様。
日本文化を、お茶を美化しすぎていないだろうか。いや、主人公がお茶という世界に入ってゆく自分に酔っていないだろうか。
そんな生徒たちの中で、お茶の先生の樹木希林だけ違う雰囲気で違う世界に生きている感じがした。
整った!!
お茶を通して、季節を感じ、心が整うのを感じました。
24年もの間お茶を習うことにより、様々な人物や出来事との出逢いと別れを経験し、自分を見つめ直すことで、自分にとっての大切なものが何か、次第に心が豊かになっていくのを感じました。
水の音、お湯の音、季節による雨の音の違いなど、日常ではあまり気に留めない事柄を、心を落ち着かせ、一度立ち止まってみたり考えてみたり、現代だからこそ必要な生き方を感じ、"毎日が良い日"と思うことが出来る日々にしていきたい。と感じる映画でした。
何か1つをずっと続けていくことは容易くはないけど、生きていく中で、自分の自信に繋がっていくと思い、とても大切だと感じました。
黒木華さんと樹木希林さんの信頼関係も素敵でした。
樹木希林さんの遺作ですが、他の映画も見たくなります。
黒木華さんも、落ち着いていて、良かったです。
凛とする
勝手に持っていた大森監督のイメージ
素敵ですね
日本の原点が心に沁み込んでくる
日本人であることを強く意識できる極めて日本的な作品だった。全編を通して、物語のワンシーン、ワンシーンが自然に心に沁み込んでくる。観終わって心地良い余韻が残る。本作は、茶道を学ぶ女性の半生を通して、生きるための心構えを我々に教えてくれる秀作である。
本作の主人公は、大学生の典子(黒木華)。彼女は、大学生になっても自分の本当にやりたいことを見出せず満ち足りない日々を過ごしていた。そんな彼女を見かねた母は、彼女に茶道を勧める。彼女は戸惑いながらも、従妹の美智子(多部未華子)とともに、茶道教室に通い始める。そして、次第に茶道の魅力に惹かれていく・・・。
派手な作品ではない。しかし、典子たちが茶道を学ぶことは日本の原点を学ぶことに通じていて、我々観客も日本の心に触れることが出来る。茶道教室の先生役の武田のおばさん役の樹木希林の佇まいが素晴らしい。茶道の達人でありながらも、驕るところは少しもなく、典子たちを優しく、時にコミカルな雰囲気で茶道の世界に導いていく。樹木希林の佇まいは凄いというよりは、無駄がなく自然であり水の流れのように周りに溶け込んでいく。人生経験に裏打ちされた、泰然自若とした落ち着きがある。典子たちに語る台詞の一つ一つが、味わい深く人生訓のようだ。特に印象深いのは、形から入って、心は後から入れるものという言葉である。最初は真摯に学べ、考えるのはその後だ、と理解できる。我々が人生において様々なものを学ぶ時に忘れてはならない名言である。
典子は大学卒業後も定職に就かず、バイトをしながら茶道教室に通い続ける。その間、典子の身には様々な事が起きる。そのたびに、武田のおばさんは、優しく典子に寄り添う。そして、典子は、茶道教室に掲げられていた“日日是好日”という言葉の本当の意味を理解し人生を歩んでいく。
本作は、静かな作品だが、茶道を通して日本を強く感じることのできる秀作である。
茶道を通して、淡々と場面は展開していく。 時には楽しく、焦り、傷つ...
現代人へのプレゼント
現代に疲れた人々へのプレゼントのような映画だ。
今の社会は全てがはやい。効率を求めて無駄をはぶく。快適さを求めて自然にあらがう。
劇中では、就職活動というテーマを通してそれが語られる。主人公の様に迷いが多かったり、思いを直接言葉にできない人間に対して、企業は魅力を感じない。新人を育てる余裕もない。現代社会は、論理的で処理能力が高く即戦力になる人物を求める。
濁流の様な流れに乗れない人間に対して現代社会はあまりに冷たい。
この映画はかつての日本人が大切にしていた時間の感覚や人の育て方を思い出させてくれる。何かを覚えようと焦ったり、意味ばかり求めなくてもいい。自然に合わせて人間の暮らし方を考え、それを楽しめばいい。
大丈夫、ゆっくりでいい。周りに合わせなくていい。
美しい映像と役者達の所作が、そう語りかけてくれる。
眠くなったら途中で寝ても、いい映画だったと思えるような、癒しを与えてくれる映画だった。
雰囲気を楽しむ。
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