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決して愉快な作品ではない
大きく感情を揺さぶるような娯楽作品でもない
ともすれば、どこかでありそうな話
作品をとられた谷監督ご自身語られていたが
観た瞬間のインパクトは薄くとも
後から何かあったときに、ふと思い出される
何か持ち帰ってもらったものが後々何かを考える
きっかけになったり、考える糸口になったり
そうして鑑賞料以上のものになっていること
そういう思いをもたれているようだった
実際、自分自身も少しばかり家庭の事情があり
この作品の主人公である山内 樹(やまうち いつき)と
倉田 歩(くらた あゆむ)の双方に少しずつ自分を重ね
どちらの立場も一部分ずつ共感できるように感じていた
さらに作品の端々に細かく描写されているものを
観ているうちに『氏より育ち』という言葉が
頭に浮かんでいた
また『親子』という言葉の意味を改めて考えていた
血の繋がりか、共に過ごした時間の繋がりか
どちらがより親と子を形作るのだろう
そんなことを思っていた
この辺りは実際の作品を観て拾ってみてもらい
感じてもらえたら嬉しい
この作品は一人の父親から
山内樹が受け継いだもの
倉田歩が受け継いだもの
それぞれに違っていて
それぞれが『一人の息子』なのだろう
そんなことを考えた
また監督はこれまで3作の作品を撮られて
共通するテーマは『向き合う』という事と
最近になって気づかれたそうだ
それならば、この作品は家族、もしくは人間関係と
向き合うということがテーマになるのだろう
きっと多くの方は優しい気持ちになったり
改めて周囲の方を思いやるきっかけになったり
するのではないかと思う
自分は家族に対して何らかの気持ちが沸くという事は
正直に言って薄く
どちらかというと主人公の二人が自分が存在することを
許されたような
まるで心の家なき子が帰る家を見つけ
帰り着いたような
そんなラストシーンに、どこか安堵の覚えている
そういう自分を感じ、それと向き合っていた