妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII : 特集
「いま見ないでいつ見るの?」それ程、今回の“レジェンド”は最高なんです!
恥ずかしくて言えない! まさか! 見たことないなんて!
“未体験”なあなたに贈る──「絶対共感!」《はじめての山田洋次》

見るなら今でしょ! 「これまで見たことがない」という人たちに向けて、そう言わずにはいられないほど最高かつ最適な作品がいよいよ公開。日本映画界の“レジェンド”=山田洋次監督の最新作「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」(5月25日公開)は、3世代で暮らすごく普通の家族の姿を通して、「あるある!」「分かる!」という見る者の共感をあおり立てる一作なのだ。
映画.comも分かっているようで、分かっていなかった──
本作で“再認識”した、なぜ山田作品を見ると皆が「面白い!」と言うのか?

どうして山田洋次監督作は、老若男女を問わず、見た人誰もが「面白かった!」と感想を語るのか。原作・監督・脚本の「男はつらいよ」シリーズや、脚本を手掛けた「釣りバカ日誌」シリーズなど、ファンの期待に応え続けてきたのはもちろんだが、王道的ヒューマン・コメディの雰囲気が醸し出されるあまり、「ああ、こういうお話ね」と、つい見た気持ちにさせられてきたのも確かだろう。そこで今回、分かっていたようで分かっていなかった我々映画.comから、恥ずかしながら……唯一“見たことがなかった”スタッフを選出。山田監督作を初体験した。

現在86歳という監督の年齢や、扱うテーマなどから「シニア向け」と考えていた山田洋次監督作。だがそれは大きな間違いだった。もちろんシニア層は大いに共感するだろうが、それよりも下の世代、30代、40代も強く共感できるポイントがしっかりと描かれていた。

強く共感できるということは、それほど登場人物たちに親近感を感じ、物語に引き込まれているという証拠。繰り出されるギャグにも、ついつい頬が緩んでしまう。まさかこんなオーソドックスなドラマで爆笑するとは、思わなかった。でも本当におかしいんだから、仕方がない!

自分は、3世代一家の長男であり、妻子を持つ夫・親である幸之助(西村まさ彦)に最も自分を投影してしまったが、この気持ちは、家族を持っている人なら誰でも理解できると思う。そんな共感の積み重ねが丁寧に描かれ……つい“ホロリ”! 奥深い作品力を実感させられた。


かつて、こんなにも鑑賞中にうなずいたことがあっただろうか?
映画.comが山田洋次“初特集”を決めたのは──怒とうの“家族あるある”

なぜ今回、満を持して山田作品を初特集するに至ったのか。それは、この「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」が、まさに怒とうと言うべき共感の宝庫「家族あるある」に満ちていたからに他ならない。「未経験者」だったスタッフはもちろん、見た者は「こんなにうなずきながら見た映画はない」と証言。「はじめての山田洋次」としてベストな作品だと判断したのだ。

本作の夫婦は、夫は会社で働き、妻は家で家事を受け持つという形で描かれているが、西村演じる夫も「アイツは1日中家でゆっくりしていていいな……」と、妻の家事を軽んじる。でも近年の試算によると、家事は年収約720万円相当の労働という評価。妻としては、「ちゃんと働いていると認めてほしい!」という状況なのだ。互いを認め合えないと……全面戦争に突入!

生活費を稼いでくるだけに、「自分が家庭で一番偉い」と考えている夫も少なからずいるだろう。しかし仕事に集中できるのは、妻がしっかりと家事をやってくれているから。お互いに相手をリスペクトできれば万事上手くいくのに、余裕がないときはそうにもいかない。相手の気に入らないところを指摘し合っては、「俺のおかげ!」「私のおかげ!」と主義主張をぶつけ合うんだよなあ……。

本作では、一家の家事全般を担当している専業主婦の史枝(夏川結衣)が、空き巣にへそくりを盗まれてしまったことをきっかけに勃発する、夫・幸之助との大波乱が描かれる。あなたは、「俺が稼いできた給料から、黙ってへそくりなんてしやがって……」という夫派? それとも「何かあったときのために、どこの家でもみんなやってる! 20年掛けて貯めたんだからいいじゃない」という妻派のどっち?

「決して手を抜いているわけじゃない」と言いたいのが、妻の言い分。「家事は肉体労働なのだから、そりゃ、昼寝くらいするわ!」というわけだ。しかし夫はそうは思えない(ここで納得できると話は楽なのに)。またもや「俺だって眠いんだ。寝不足の目をこすりながら働いてるのに……」と不満がタラタラ。「昼寝なんてサボってるのと同じだ!」──ああ、言ってしまった……。

意地を張りすぎる夫婦ゲンカは、やがて泥沼状態になるのは“あるある”。劇中ではついには妻の史枝が家を飛び出してしまう展開に。そして……「この洗濯機どう使うんだ?」「靴下をどこにしまってるか分からない!」「メシはコンビニで買ってくるしかないのか?」と、いなくなって初めて痛感する、家事を担当していた妻のありがたみ。仲直りするには……あなたならどうする!?

監督を敬愛する映画.com副編集長が特集“最後”の訴え──
山田洋次の魅力が全部詰まった本作こそ、《はじめての山田作品》に推したい!

“最後”に、山田洋次監督を敬愛するファン代表として、映画.com副編集長・大塚史貴が登場。山田監督とのエピソードも交えながら、「説教くさい」というイメージは誤解であり、本作が優しい気持ちに包まれる「はじめての山田作品」としてベストであると、心から訴える!
