ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャーのレビュー・感想・評価
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「ライ麦畑」映画化を夢に見て
サリンジャーは短編小説の映画化を許可したものの出来に納得がいかず、以降は「ライ麦畑でつかまえて」を含め自作の映像化を断固拒否したとか。没後も、著作権を管理する代理人がその方針を変えないと表明したので、コールフィールド少年をスクリーンで見るのは著作権が消滅した後だろうか。
さて、そんなサリンジャーの伝記映画が、生誕100周年のタイミングで公開される。後半生は世間と接触を断ち隠遁生活を送ったことが知られるが、そこに至る経緯も含め、作家を志すようになった頃から、第二次大戦の従軍経験で心に深い傷を負ったことなどが明かされていく。主演ニコラス・ホルトは売れっ子だが、良い意味でスター然としていない、普通の佇まいが役に合っている。クレア役は、「シング・ストリート」で主人公が恋する年上の女性を演じていたルーシー・ボイントン。「ボヘミアン・ラプソディ」にも出ていたし、活躍の場を広げているようで嬉しい。
わたしも
作家の心の闇
作家たる人の人生。名作が生まれ至るまで。
サリンジャーが自分を突き通していなければ「ライ麦畑でつかまえて」は生まれていなかった。彼が意思を突き通すことができたのは、自分を信じられるほど描くことが生きることになっていた日々にあると思う。
本編では、ライ麦畑でつかまえてに辿り着くまでに彼に起きたことや心の動きを辿ると共に、作家たる人格になるきっかけを与えた、ウィットが彼に掛けてきた言葉や行動と師弟愛を知ることができる。
創作家の切実な声、創作のためのアドバイスはじめ、記憶に残したいドラマチックな台詞がいくつも。文学作品をベースにしている洒落感や言葉への配慮も好きでした。
サリンジャーと編集者との会話からなぞることができる彼の人となり。
「Bananafishは2語では?」「いや1語にする。意味を限定したくない」
「ノルマンディーに上陸したとき、この原稿の一部を担いでいたし、収容所を解放したり、入院してた間も書いていた…ぼくを救った作品です。」
サリンジャーのことを回想するウィットの言葉。
「間違いなく人生で最も価値のある25ドルだった」
描くことが生きることでもあったために、それを脅かす社会から孤立せざるを得なかったことも理解できる。
晩年も描き続けていたことが真実ならば、もう彼のアイデンティティを脅かすものはないから、人生をかけて描いてきた物語が世に出ていくことを願いたい。
時は流れてしまったけど、物語は伝っていく限り生き続けるし、作家は誰かの心で作品が生き続けることを望むと思うから。
サリンジャーとくにライ麦畑が好きな読書家のための映画
ライ麦を読んでないという立脚点
サリンジャーを読んだことがないw。
実家のじぶんにあてられた部屋の書棚に「ライ麦畑でつかまえて」があった。
上半分青く、下半分白く、らくがきみたいな顔が描かれてある。
(読んだ人なら)だれもが見たことある白水社のやつだ。
おそらくじぶんで買ったものだ。
開いて読み始めたことはあった。
たぶん一度や二度でなく、なんども読み始めた、はずである。
だが、今もってサリンジャーを読んだことがない。
映画はサリンジャーが作家を立志し、曲折を経てライ麦畑でベストセラー作家になり、やがて隠者になるまでを描いている。
サリンジャーの人生は戦争の影響が大きい。
『1942年、太平洋戦争の勃発を機に自ら志願して陸軍へ入隊する。2年間の駐屯地での訓練を経て1944年3月イギリスに派遣され、6月にノルマンディー上陸作戦に一兵士として参加し、激戦地の一つユタ・ビーチに上陸する。(中略)その後の激しい戦闘によって精神的に追い込まれていき、ドイツ降伏後は神経衰弱と診断され、ニュルンベルクの陸軍総合病院に入院する。』(ウィキペディア、J・D・サリンジャーより)
もともと繊細な人でもあったところへ、戦争後遺症がのしかかって、彼はますます人嫌いになる。極端にナイーブな人物像は、主演ニコラス・ホルトにぴったりだった。
だがその人となりには毀誉の両極がある。
優れた文才の一方で、妻をないがしろにし、恩師に不義理をし、ついに出版もやめて俗世間とのかかわりを悉く断つ。
むしろその偏屈ぶりが主題の映画だった。
余談だが、映画はそのまま「My Salinger Year」(2020)につながる。まるで後日譚/続編のようにつながる。
(邦題マイ・ニューヨーク・ダイアリー。隠遁者になったサリンジャーに代わって、世界中から大量に届くファンレターの処理をするエージェント、のアシスタントの話。サリンジャーは一切出てこない。)
ところで、読んだこともないじぶんが言うのもしつれいな話だが、サリンジャーはわりと一発屋な感じなのかな(すごく寡作なのかな)──と映画を見ていて思った。
だとしても、それはとほうもない一発だった。
なにしろ「ライ麦畑でつかまえて」は世界30ヶ国に翻訳され、累積販売部数6,500万部。現在も毎年25万部が売れ続けている。(──とエピローグのテロップに書いてあった。)
書き終えた「ライ麦畑でつかまえて」を担当に渡すシーンがこんな台詞だった。
サリンジャー:『ノルマンディーに上陸したとき、この(原稿の)一部を担いでいたし、収容所を解放したり、入院してた間も書いていた・・・ぼくを救った作品です。』
担当者:『(初稿を読ませてもらえるなんて)光栄だよ。戦争の話?』
サリンジャー『問題を抱えた青年のクリスマス休暇の話です』
JDサリンジャーという人は、数多の人びとに愛された20世紀最高の作品を書き上げながら、ぜったいに他人に理解してもらえないじぶんという人間を、一生涯持て余しつづけた人間だった。──という映画。
さて、サリンジャーのライ麦畑といえば、村上春樹のお気にでもあり、山の手の文化人ならたとえ読んでなくても、読んだことないなんて言えない──そんな御用達の必読書。(だと思う。)
ゆえに「サリンジャーを読んだことない」と白状するのは田舎の百姓のわたしでさえいささか恥ずかしかった。
なんども断念したがまた読み始めようw。
3.3良作ではあるが
教授が非常によく、あの場面だけで大いに価値があった。
が、全体的に物足りなさを感じるのは「ライ麦畑でつかまえて」を読んだことがないからだろうか
”全ては本に書いてある”が如く、主人公の感情が曖昧に感じられた
それが狙いだったのだとしても、まさに「視聴者」を置いてけぼりにしていると言えるのではなかろうか。
サリンジャーを見ていても、世の中の「天才」と言われた才能を有する者たちは、それを分解すれば才能とは「続けられた」才能と言えるのかもと感じた。
大いなるひらめき、誰もかけないと言われたものも死屍累々の数をこなした先にあるのではないだろうかと感じた。それは努力の天才とも言われ、努力と天才は紙一重なのかもと見ていて思った。
しかし、「それに」囚われてしまうと、他のすべてをシャットダウンせざるをえない。マルチにタスクを振り分けるとパンクしてしまうのだろう。本作を見ていて、自分だったらどう有りたいかも考えられて良かったように思う。憧れの職業を”なんの見返りもなく”ただ挑戦できるか。これが世間一般で言うところの「天才」の構成要素なのかもと思った。
少し学問としての文学を学びたくなりました。
少しかじりたくなる
サリンジャーを知る。
ライ麦畑も読んだことなけりゃ、
サリンジャーも名前しか知らない。
ただ傑作とされてる事は知ってるので、
さてどんな人だろう?と思って観たら、
見応え充分。良い伝記映画だった。
今で言う不良少年、野望に満ちた少年が
戦争によって狂わされてしまう様子が描かれてて辛かった。
僕も漫画家をやってるので、
作家の生き方はわかってるつもりだけど、
ここまで孤独になって、自分を掘って行くのは大変だし、
こうはなれない憧れと畏怖入り混じった感情で最後まで
観た。
自分の才能を見せつけてるための作家活動か?
と言う問いには頭を殴られてるような衝撃があった。
そりゃサリンジャーには一生なれんわな。と。
成功を収めてからも、
いや成功を収めてからの方が悩んでるサリンジャーを観て
戦争がなかったら、そうなっていたのか?
と思ってしまう。成功を素直に喜んでいたのかも…
ライ麦畑も戦争を経験したからこその作品だし、
戦争がサリンジャーにもたらした成功と苦悩は
計り知れない。
サリンジャーファンの方には、
発表はしなかったけど描いてたんだ。と言うラストは
胸が熱くなったのかな?
いかにしてサリンジャーは青春の権化となり得たか?を知る作品
自分は何か特別な存在だと思う反面、何の価値もない人間なんじゃないかと感じたり…、生きるとは何だろうと考え始めていた18、19歳の頃。出会ったのが『ライ麦畑でつかまえて』であった。
大人の作った社会に疑念を抱きつつ、大人になりきれないホールデン少年は、まさに自分の分身のように感じ、刺さった。大学の《好きな作家とその魅力》という課題でこの作品を取り上げたほどであった(その内容は忘れてしまったけど)
お陰様でその後、他の作家と作品にハマったので、作中の読者達のように取り憑かれ続けることはなかったけれど、『ライ麦畑でつかまえて』は間違いなく青春のバイブルとして刻み込まれたのである。
そのサリンジャーの伝記映画である。
まず91歳まで生きたとは知らなかった。しかも結構なブルジョワ育ちで、親子関係も悪くない。意外である。何かの寂寞感に迫られている彼の作品から想像出来ない。戦争体験が影を落としているのは分かった。
彼の作家としての人生を辿るには充分な作品ではあったが、彼の素晴らしさはやはりその創作物の中にしかないと感じるものであった。
願わくば彼の遺稿が活字となり、手に取る日が来ますように。
over-explain と bananafish
このオーバーエクスプレインという助言が決定的となった気がする。「ブルジョア的富裕層を批判してるね?」の質問に「読者次第だ」と答えるサリンジャー。戦友が次々と死んでいき、死屍累々とした凄惨な現場を経験したため幾度となくフラッシュバックに悩まされる日々。仏教にも教えられ、『ライ麦畑でつかまえて』の下地を作っていく様子がリアルだった。
しかし、あくまでもフィクション作家を目指すジェローム・デビッド・サリンジャー。赤い帽子を被った熱烈なるファンが「なぜボクのことをしってるんだ?」とまで言わしめるほどリアルなフィクションでもあったのだ。
ケビン・スペイシー演ずるウィット・バーネット教授との関係も描き方が上手い。処女短編となる『若者たち The Young Folks』にも因縁があり、掲載拒否を続けるも「作家に向いてるか確かめるため」とようやく認められたことを知るエピソードも美しい師弟愛だと感じた。
恋人ウーナをチャールズ・チャップリンに取られ、戦争のトラウマとも闘いつつ、ドイツ人医師シルヴィアといつの間にか結婚、そして離婚。しかし、最終的にはクレアと結婚。『ボヘミアン・ラプソディ』とは違った魅力を見せるルーシー・ボーイントンにも注目だ。
隠遁生活が彼の人生でもっとも長かったのだろうけど、この秘密めいた生活があってこそ、世界中で愛される要因なのだろう。未だに小説は読んでないけど、そろそろ読みたくなってきた。
小説を読みたくなった‼️
ライ麦畑を再読したくなった
学生時代に一通り読んだときに、なんとなくサリンジャーを読むとカッコいい、という青い感覚があったけど、どこまで理解できていたのか我ながら怪しい。
再読したくなった。
彼の作品が出来る背景や、人嫌いになっていく過程を、少し早足かなと思いつつ追うことが出来て、とても惹き込まれた。
筆を折ったとか私生活に謎が多いとか、途中から歴史上の人みたいな扱いだったけど、亡くなったのは最近の2010年だったんだなぁ。
駆け足すぎて淡々と進んでいく気がしたので、それが少し残念だったけど、きちんと深く描こうとすると映画の時間じゃ足りないんだろうな。
落ち着いた色合いの映像に、役者さんたちがさらっと、でもじっくりと演じてるのもよかった。
当時の作家はカポーティしかり、現実と妄想の世界の入り混じり方がなかなか凡人にはわかりづらいんだけど、出版されないままの作品がまだまだたくさんあるらしいので、いつか遺稿として出版されることを楽しみにしたい。
タイトルなし
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