ウインド・リバーのレビュー・感想・評価
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集団の怖さ
裸足で10キロも
ある女性の殺人事件の犯人探しが主軸ではあるが、大切な娘を失った悲しみ、ネイティブアメリカン居留地の現実、厳しい人生をどう生き抜いていくかが描かれている。
娘を殺された家族の悲しみ方が、よくみる白人映画の描写とは違っていて感心した。「マスターオブゼロ 」でデフが「白人家族と違ってセックスの話を親としない」と言っていたが、私たちが普段アメリカ映画でよく見る「親との関係性」「悲しみ方」も、それぞれの文化によって、様々なバリエーションが現実には存在する。
終盤、急にけっこうな銃撃戦が起こり様相が変わってしまった。映画的には見せ場だろうけど少し派手すぎかな。雪の中からの狙撃はすごくカッコよかった。エンタメと社会派のバランスという意味では良かったのかも。
女性FBIが頼りなくてどうなのと思ったが、最後まで被害者に心を寄せていたところが良かった。運の良さなんてない場所で生き残った彼女が娘を亡くした彼には少し慰めになったのかもしれない。
スノーモービルや雪深い居留地など、ふだん描かれることの少ない生活が垣間見られたのが興味深かった。
カナダの居留地でネイティブアメリカン女性の行方不明者がものすごく多いというニュースを以前目にしたので、この主題がもっと注目され、改善されると良いと思う。この映画ではネイティブアメリカンであるがゆえ、という理由づけはなかったけど。過酷な状況は弱い存在をさらに追い詰めるのだな。
想像できない氷点下
ジェレミー・レナーの抑えた演技が秀逸。エリザベス・オルセンと2人が出てると,どうしてもアベンジャーズ感が。
娘を失った二人の父の寂しさ感が半端なく伝わる。ネイティブの役者さんたちが上手い。死に化粧すらも伝承する手立てを奪われているのが酷。
採掘所に一緒に行った二人の警備員が殺されてしまい,可哀そうであることよ。狙撃シーンでは最後の一人を狙うのかなと思っていたが,結局,復讐のいけにえにする展開がベタかな。一番初めにちょっかい出した奴だったし。採掘所,今の時期は運転していないって字幕に出てたけど,誤訳?
話題
後半に急展開を迎えるのだが、あっという間に解決するのはちょっと出来過ぎな感じだが、まあ納得の結末。ハンターは犯人を同じ目に合わせて、FBI捜査官は彼に間一髪のところを助けられて病院送り。
過酷
単なるクライムサスペンスで終わらない重い感動
西部劇好きなら必見
☆☆☆☆ 簡単に。 ミステリーとして観たならば、それ程の深い話でも...
☆☆☆☆
簡単に。
ミステリーとして観たならば、それ程の深い話でも無い。
犯罪モノとして観たならば、犯人は直ぐに割れる。…と言うか、観客に向けて敢えて分かりやすく提示してくれる。
主人公の男の心に、深い傷を負わせた3年前の悲劇。
今それがまた、娘の友人に起こった現実の辛さ。
娘の父親へ投げ掛ける言葉は。そのまま、彼が3年前に受け取った言葉でも有る。
そう!これはお互いの親の立場が、そのまま入れ替わってしまった悲劇的な物語。
男はハンターとして、強い決意で娘の弔い合戦に向き合う。
なかなかタイミングが合わずにやっと観れましたが。シンプルで有りながらも、味わい深い作品で。スクリーンで観られて本当に良かったと思える作品でした。
2018年8月25日 角川シネマ有楽町
誇り
開拓者。言い換えると侵略者。
侵略とは、暴力、殺戮、略奪と、秩序も何もない世界です。そしてそれは、アメリカのとある地域では、今も普通に見られる光景でした。私達が散々聞かされてきた自由の国、平等な国アメリカというのは、実はごく一部の人間だけが持つ特権だったんですね。そしてこの特権は、単に先祖が侵略者だったから与えられているだけであって、本人の努力ではありません。逆に初めから特権を持たない者は、自由や平等はおろか、安全すらも手に入れる事は難しい。それが、アメリカなんですね。
まるで、墓場の様な場所に強制的に居住させられたネイティブ・アメリカンは、彼らに脈々と受け継がれてきた「誇り」ですらも、根絶やしにされていました。種を繋ぐことはただ単に子供を残すことだけではなく、その民族の持つ「文化」「生き方」「哲学」をも繋ぐことです。つまり、自分達の「アイデンティティ」を繋ぐことなのです。だからこそ、「アイデンティティ」を失った彼らネイティブ・アメリカンの絶望は、計り知れないものがあります。
気がつけば日本も、沖縄やアイヌの「誇り」を奪う様なことを現在進行形でもしているのではないのでしょうか。この作品を鑑賞して、そんな疑問が浮かび上がってきました。アメリカの問題を自国の問題として置き換えてみた時に、何かしらの事は感じるはずです。
勇敢な
時が癒すんじゃない。痛みに慣れるだけだ。
世に、復讐劇の物語はごまんとある。ラストまでサスペンスに満ち、行き詰る捜査に焦れ、怒りに震え、被害者遺族に共感と慰謝の気持ちで労わろうと寄り添い、対して、快楽に溺れた犯罪者に嫌悪を覚えるのはどれも同じだ。先住民に対する偏見や差別なども含め『レヴェナント』を思い出させる映画でもあった。
だけど、この映画の静けさは何だ?主人公ジェレミーの冷静さもどこから来るのだ?、そんな小さなしこりが、物語の進行とともに僅かずつ明かされていく。
被害者の父が、娘の不幸を目の当たりにしながらも毅然とした態度でFBI捜査官の訪問に接していた時、ジェレミーがやってきた。この場面が秀逸だった。なにも語らない。ただ、お互いの気持ちを知り尽くしている者同士の咆哮が、そこにあるだけだ。そしてジェレミーは言う、「時が癒すんじゃなく、痛みに慣れるだけ。痛みから逃げるな。逃げると大事なものまで失う」と。そのシーンで、ジェレミーの家族の過去の出来事もわかる。それがまた見ていて辛い。
ラスト。結局、取り戻せないものはどうしようもない。そことどう向き合っていくのか。そんな心が折れそうになりながらも、逃げたらすべて失ってしまうぞ、と自分にはっぱをかけながら、歯を食いしばって生きていく二人を後ろ姿が痛々しくも気高かった。
不覚にも居眠りしてしまった
問題提起のパワーの強い作品。
ウィンドリバーと呼ばれるネイティブアメリカン居留地で起きる少女の殺人事件を追う現地のハンターと、ひとりの女性FB Iとの、壮絶な、解決に向けた戦いに挑むおはなし。
これといって説明的な描写がないまま、出来事としてネイティブアメリカン居留地特有の事象がおきるので、あとからとても気になってくる。
私はネイティブアメリカン居留地については米ドラマなどで見聞きした程度だったので、こういう実情があるのか、と、映画を観た後、いろいろ調べてしまった。
こういう現実はついつい、見たとしてもそのあと忘れてしまい、ということを繰り返してしまう。
それがさらにその地域やそこに住む人々の不幸を生むことになるのだろう。
事実を知らない人にとってはそれを知る機会に、知る人についてはそれでも動いていない自分自身を見つめる機会となり、問題提起する作品としてとても学びのある映画。
自分がいかに作られた世界の中で、ぬくぬくと暮らしているのか分かる。そういう世界を作り上げるために犠牲になっている人がいることを、まずはきちんと認識したい。
それにしても強いひとというのは魅力的。やはり自分のためでなく、人のために誇りを持って動いているからこそ強いひとなんだろうなぁ。
銃声だけが響く沈黙の土地
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