永遠のジャンゴ
劇場公開日:2017年11月25日
解説
ロマ(ジプシー)音楽とスウィング・ジャズを融合させた音楽で、後のミュージシャンたちに多大な影響を与えたジャズギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの知られざる物語を描いた伝記映画。1943年、ナチス・ドイツ占領下のフランス・パリでもっとも華やかなミュージックホールに出演していたラインハルトは、満員の観客を魅了し続けていた。その一方でナチスによるジプシーへの迫害はさらに悪化し、多くの仲間たちが虐殺され、家族、そしてジャンゴ自身にも危険が迫っていた。非情な現実に打ちのめされていたジャンゴにナチス官僚が集う晩餐会での演奏が命じられる。ジャンゴ・ラインハルト役に「ゼロ・ダーク・サーティ」「黒いスーツを着た男」のレダ・カティブ、「ある秘密」「ヒア アフター」のセシル・ドゥ・フランスが脇を固める。監督は「チャップリンからの贈り物」「大統領の料理人」などの脚本を手がけ、本作が初監督となるエチエンヌ・コマール。
2017年製作/117分/G/フランス
原題:Django
配給:ブロードメディア・スタジオ
スタッフ・キャスト
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ジャズのみならず、ギタリストだったりギターに興味がある人には伝説の存在であるジャンゴ・ラインハルト。ジプシージャズの第一人者として知られているのだから、よく考えたらわかるはずだった。ナチスドイツがユダヤ人だけでなく、ロマの人々や同性愛者も迫害の対象にしており、同時代を生きていたジャンゴにとってもホロコーストは他人ごとではなかったのだと。
ジャンゴ・ラインハルトの伝記映画、ではあるのだが、この映画はジャンゴが様々な形でナチスと関わった二年間にのみ焦点を絞っていて、銃後の戦争映画のバリエーションでもある。定住しないロマの出身であるジャンゴは政治や戦争に興味を持たず、ただプロの音楽家として生きているつもりだったのに、否応なしに民族の一員であるアイデンティティに気づかされる。
ジャンゴがナチスに演奏を強要されるというドラマチックな挿話をメインにしつつ、静かな葛藤と成長のドラマに仕上がっていた。
2020年1月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
ナチスがジプジーを殺し始めているという情報を聞きつけると、ルイーズはLouise de Klerk(Cecile de France )ナチスの迫害からジャンゴ ラインハルトDjango Reinhardt(Reda Kateb)を助けるため、ナチスの将校にもつき、ジャンゴのために力を貸す。
婚約者であったロシア人画家の自殺による愛の破局で、心の癒しをジャンゴの音楽でみつけ、ダンスを踊ることで自分が変わっていったと、ドイツの将校に話すルイーズ。一旦心が死んでしまった彼女だが、彼のギターが再び活力をあたえる。そのため自分がナチスからの暴力にあっても、ジャンゴの才能を守るためにも愛を貫くためにも、オーストリアに逃亡させる段取りをつける。
ドイツ将校やその家族がパーティーをしている間、ジプシーの若者が見張りの目を盗んでオーストリアに逃げるシーン。ここでジャンゴの楽団の演奏は力強い。皆を音楽と酒で酔わせ、逃亡手伝う。
彼の才能のためというが愛している人を逃がすため、ルイーズの犠牲精神に心を打たれてた。ジャンゴが『あなたは怖い』というシーンがあるが、それは
ジャンゴ『怖い』
ルイーズ「大丈夫よ。スイスとの国境でナイチンゲール(国境越えを助けてくれる人)が待っているから」
ジャンゴ「あなたが怖いんだよ』
ルイーズも革命の分子のようだ。自分が殺されるのをわかっていて、ナチスの手からジプシーやジャンゴを救う。あっぱれ!
ジャンゴはベルギー生まれのロマ人で作曲家でギタリスト。この映画はナチスの迫害から逃れオーストリアに行き、フランスに戻りコンサートを開くまでを描いている。彼のジャズのスManouche Jazz,というらしい。これはスイングと伝統的なジプシーの音楽が混ざったものらしい。当時ナチスはこのようなアメリカのジャズ(黒人の文化を劣勢と捉えていた)を受け入れていなかった。コンサートではスイング、ブルース、ダンス、そして立ってもいけないと。これらの一部はいまだ、クラッシック音楽界の鑑賞の仕方である。
これは歴史を踏まえた作り話なのでジャンゴの本当の生活とは違うらしい。それに、ナチというとユダヤ人が犠牲者のトップに浮かぶが、黒人、ジプシー、身障者、ゲイなども組織的に淘汰していたわけで、この映画で初めてジプシーの迫害の歴史が垣間見られたこと、感謝する。ジャンゴが作曲した『ジプシーの仲間に捧げる鎮魂歌』(Requiem for Gypsy Brothers) の譜面は全部残っていないらしいが、心にしみる鎮魂歌だ。
2019年7月6日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
知らなかった。こんな荒んだ時代にこんなに熱くプレイする男だったとは。ナチスによる迫害は知ってはいたけど、幼い頃の火傷によって左手薬指と小指が動かない状態だったことを初めて知った。こりゃ野口英世以上だ。
ロマ(ジプシー)音楽とスウィングジャズとの融合。メロディもどことなく異国情緒たっぷりの情熱的。CDも持っていて、真似できないとコピーも挫折した経験があるのですが、二本指でここまで弾くにはかなりのテクニックが必要です。ジャンゴ演ずるレダ・カティブの運指も相当練習したと思われるくらい。
ミュージシャンの伝記映画はドラマであれ、ドキュメンタリーであれ、ほとんどが麻薬に溺れて消え去ってしまう。しかし、ジャンゴは煙草吸いすぎだけどヤクはやらない珍しさ。ナチスもフランス憲兵隊も彼らを迫害するけど、自由という信念を貫き、国に従属する気は全くない姿勢。音楽を聴いて楽しんでもらえばそれでいいんだ!
ステファン・グラッペリやルイ・アームストロングの名前も出てくるし、彼の音楽のルーツもある程度わかる。ナチス将校の前で演奏する際には、テンポの速い曲はダメ、シンコペーションは5%まで、ブルースはダメ、ソロは5秒以内で・・・無茶苦茶じゃないですか!(笑)。
教会を借りてパイプオルガンで作曲する姿もいいし、これがラストのレクイエムに繋がる。字も書けないんだから、写し取るのも大変なのだろう。それがこんなに悲しく響いてくるとは。
2019年5月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
ジャンゴの名を知ったのはMJQ(モダンジャズカルテット)のトリビュートアルバムだった。ジプシーというのは蔑称のようなのでロマ民族と呼ぶが哀愁に満ちた彼らの旋律は血を越えて胸に響く不思議な力を秘めている。然しながらジャズと結びつくと一転してアップテンポな明るいものになり、正直どれを聞いても同じに思えてしまう。彼は18歳の頃に負ったやけどで左手の薬指と小指が使えず独特の奏法を編み出した。映画では30才代のパリでの円熟期からスイスへの逃避行の数年間が描かれている。ナチスのユダヤ人迫害の陰でロマ人狩りはあまり知られていないがおよそ22万人が殺害されているそうだ。そんな中でも彼は音楽の才能に助けられ生き残ることができたといってよいのかも知れない。劇中の演奏はストーケロ・ローゼンバーグによるものだが当人の時代より洗練されているようだ。ミュージシャンの伝記映画は数あるが本作は残念ながら作り手の思い入れ程は響いて来なかった。