「チビヤギの選択」ガラスの城の約束 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
チビヤギの選択
理屈も正論もどうでもいい。
喜怒哀楽すべての感情に直接ゴリゴリと刺さり、激しく揉みくちゃにされる最高の映画。
全ての感情が本物。
良い波も悪い波も全部ストレートに全身で受け止めてしまって、鑑賞後は精神的にも身体的にもボロボロになった。
過去と現在を行き来する繋ぎ方が完璧。
昔の映像を観るたび、「どうして今はこうなったんだ…」と思わずにいられない。
その過程が紐解かれ、未来をどう選択するかが描かれる作品。
親として、人として、かなり最悪だった両親。特に父親レックス。
社会の常識に囚われない生き方、というよりも常識外れすぎて完全にアウト。
個性ある人生は時に憧れるけど、子供が苦しんでいいわけがない。
ユニークで大胆過ぎるその方針と機転と知識量に惹かれるも、酒に浸り子供へ支配的な態度を取る彼には腹立ち嫌悪感が増し、しかしどうしてこうも憎み切れない。
嫌いになって愛しく思ってまた嫌いになって、ひたすらにその繰り返し。
幼少期は分からなかった、その生活の異常性がだんだん実感していくのが苦しい。
ガラスの城の設計や狼が仲間を呼ぶなんて楽しさも束の間、食費を酒にまわし街の喧嘩で負ったひどい傷を手当させ、子供のために別れを選択することも出来ない。
両親が頼れないならこの家を出て自立しようだなんて、小学生以下の子供が決断するにはあまり過酷な現実。
どんなに期待して信じても裏切られる。
でもどんなに裏切ってもその根には愛があった。
一番父との繋がりが強かったジャネットだからこそ拒絶感も強くなる。
少女に言わせたくない言葉が次々出てくるのが本当に辛かった。
ガラスの城の設計図は夢と現実の間の象徴みたいだった。
形にすることよりも夢を見続けることを選んだ中途半端な父親。
セメントの穴をゴミが塞ぎ、その光景に目を塞がなければならない環境なんて。
レックスが会いたくないと駄々こねるほどの、「魔女」みたいな祖母アーマ。
この母にしてこの息子あり、か。
あってはならない弟への仕打ちには心底軽蔑。
溺れてしまう、と苦しんだレックスの過去に少し触れることができたのは良かったけども。
しかしそれでも別れには落ち込んでしまうもの。
そういうものなんだ。
どんなに否定しても拒絶しても、切っても切れない、切らないことを選択した家族の情。
人間は必ず矛盾するもの。
擁護はしないけど否定もできないのは、ジャネットの気持ちが理解できるから。
レックスの気持ちも少しは分かるから。
誰が何と言おうと楽しい時間はたしかにあったから。
振り返った時にあんなに笑顔が溢れる家族をどうして否定できよう。
ここまで極端じゃなくても親に憎しみを抱いたことのある人は多いのではないか。
その内容に大小の差はあれど。
私も母親に自分の育て方を激しく責め立てたことがある。
正直、過去の怒りや恨みは時間が経っても否定しないけど、それは別として親への愛情はあるし親からの愛情も感じる。
そんな自分の事情に少し重ねてしまい、余計にこの物語に入り込んでいた。
多かれ少なかれ、これは皆の物語なのかもしれない。
波乱に満ちた人生だったと思う。
学校や家を出てからの子供たちの苦労も想像に易い。
それでも家族の辿り着く先のカタルシスがあんまりにも良い形で、もう言葉にならない。
たわいもない思い出話でこんなに笑える。それが答えなのかも。
あの団欒こそガラスの城じゃない。
綺麗事で塗り固めるわけでも、強く批判するだけでもない視線が心地良い。
家族一人一人のとても複雑な心情を丁寧に描写して、ドラマに徹してくれる見せ方が好き。
ありのままの感情をきちんと示されることで、彼女たちをたしかに感じることができた。
ただ、この家族とは違う選択をする人や許せない人もたくさんいると思う。
当たり前だし、それはそれで良いと思っている。
何を大事にするかは人次第だし、受難としか思えないシーンも多かったので。
顔面歪ませての「ぶっ殺せー!」は結構本気だったでしょう。あのシーンすごく好き。
楽しく顔を見合わせるシーンに泣き、辛く胸えぐられるシーンに泣き、終始泣きすぎて頭ガンガン痛めながらの鑑賞。
最後の方なんて嗚咽が止められなくて喉から変な音は出るしエンドロールでメガネが外れてどこかに落ちるしスクリーンを出てからも涙が止まらないしでもう大変だった。
とにかく全ての人間の感情が強烈に私の心臓に襲いかかってくる。凄い映画だった。ありがとう。
根底に愛があってもやられた側が嫌だったらどうしようもないな、と思いつつ、本人にとっては結局「良い思い出」になるんですよね。
そのバイアスのかかり方もリアルですごく気持ちがわかるのでまたぼろ泣きしてました笑
強さも弱さも見せられる家族の形は良いですよね。
そうしておいた方が後々ラクになると思うし。
腕相撲のシーンは白熱しましたね!直後の殴りの最悪さも含めて。
「あの団欒こそガラスの城」
うんうん、わたしも激しく共感ですー☆
父親の教育方針は、確かに、社会?世の中に対する反骨心剥き出しの偏向し過ぎ感ありありですが、根底に流れる“愛”は感じ取れたことが救いでしたワ(^。^;)
・お金持ちは立派な部屋に住んでても、汚れた空の下。
・プールでのスパルタ式泳ぎの教え方。
・大やけどの傷跡を、生きる上での心の強い拠り所になる!という諭し方。
・大学中退のピンチにヨレヨレお札での学費の工面。
・星は永遠に朽ち果てないプレゼント。
・・・等々にね♬
(理想的な)父親らしくあらねば!なぁーんて関係ないんだよね。強さ(この作品では強がり?)も弱さも赤裸にさらけ出す生き方こそが、真の親子(娘)の繋がり、強い絆が結ばれるのでしょーかねー(^_^)/
ふふ、「ぶっ殺せぇーっ!」シーンは、ワタクチも強烈に脳像に残りましたヨ(>_<)