歓びのトスカーナ

劇場公開日:

歓びのトスカーナ

解説・あらすじ

「人間の値打ち」などで知られるイタリア映画界の名匠パオロ・ビルツィが、緑あふれるトスカーナを舞台に、診療施設を抜け出して行き当たりばったりの旅に出た2人の女性が、次第に友情で結ばれていく姿を描いた人間賛歌の物語。おしゃべりで陽気だが、虚言と妄想癖で周囲を振り回してばかりのベアトリーチェと、過去のある出来事のせいで自分を傷つけてばかりのドナテッラは、トスカーナにある、精神を病んだ人たちが集う診療施設で出会う。何かと自分の殻に閉じこもるドナテッラに興味を抱き、彼女の過去に何か秘密があると勘づいたベアトリーチェは、ドナテッラを連れ出して施設を抜け出す。行き先を決めずに旅に出た2人は、その過程で次第に固い絆で結ばれていく。ベアトリーチェ役は、「人間の値打ち」に続いてビルツィ作品で主演を務めるバレリア・ブルーニ・テデスキが演じ、「ハートの問題」「ハッピー・イヤーズ」のミカエラ・ラマゾッティがドナテッラに扮した。イタリアのアカデミー賞と言われるダビッド・ディ・ドナテッロ賞で17部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、主演女優賞など5部門を受賞。

2016年製作/116分/G/イタリア・フランス合作
原題または英題:La pazza gioia
配給:ミッドシップ
劇場公開日:2017年7月8日

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映画レビュー

5.0大作出現に、こちらが黙る番だ

2025年5月7日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

この、けたたましいオープニング 😳💦

とにかく、イタリア人の早口と大声にはびっくりする。

「ディオールを着る女性が出演している」という予告篇を見て、ディオール推しの僕としては先ずそこに飛びついたのですけれど、ウ~ン・・・てんてんてん(笑)

イタリアで10日ほどを過ごし、やっと静かで落ち着いたパリに戻れたョ💦と「ホッ」とした僕は、
その矢先、パリの舗道で、何やらあちらから近づいてくる賑やかな群団に、も一、足がすくんでしまった事があるのです。
負けじと張り上げる元気な声の大騒ぎが1ブロック先から、遥か遠くから耳に届く。
「うッ、イタリア人だろうなァ」と判る。
やっぱりイタリア語である。
あの女性たちの賑々(にぎにぎ)しさにはまったく たまげたもんだ。

「ディオールしか着ないのよ」とまくし立てる金髪のベアトリーチェと、全身タトゥーをまとってうつむき、フードを被る女=ダンマリ痩せぎすの ドナテッラ。
二人の出会いは精神科が併設された婦人更生施設でした。

のべつ幕なしに喋るベアトリーチェには友だちがいないのだ。嫌われ者だ。だから新しい入所者の友だちが彼女は欲しかったのだ。
「ドクターかと思ったら同じ患者じゃん」と判明した時の、ドナテッラの拍子抜けの呆れ顔に笑ってしまうが、
あれは実にいいオープニングだ。

更生施設に、明るい陽の光と女たちのさんざめきが響き、暗くならないようにと細心して映画は作られる。

・・・・・・・・・・・・·

話は横に逸れるけれど、

◆あのバロック音楽の大家=アントニオ・ヴィヴァルディも、イタリアベネチアにあった「婦人更生施設」の職員でした。名称は「ピエタ慈善院」。
彼はそこの合奏クラブの指導者です。自身司祭 (=神父)でもありました。
ヴィヴァルディは、つまりその施設の入所者の女性たちのために、たくさんの協奏曲を書いたのです。
おそらくその楽団は、資金集めのために演奏会やツアーもやった事でしょう。
皆さんご存じ、あの名曲「四季」を奏でていたのは、婦人更生施設の、まさしく彼女たちだったのです。

もうひとつ、
◆親きょうだいに嫌われたはみ出し者の物語としては、アン・ハサウェイの出演作「レイチェルの結婚」を思い出したのだけれど、アン・ハサウェイ演じる薬物中毒者=レイチェルには、かばってくれるバディが誰もいなかった。そこがたいへん痛かったあの映画ですね。

でも、本作「歓びのトスカーナ」では、嫌われ者同士の二人の友情のタッグが素晴らしいのです。
あの二人三脚がね。
「プラス極とマイナス極」は反発していても引かれる(惹かれる)のだなァ。

「なぜ話そうとしないの?」
「私たち何を捜しているの?」
「幸せをほんの少し」。

― これは、ものすごくおしゃべりなベアトリーチェが、自分のべしゃりを抑えてドナテッラに語らせようとするシーン。
とっても良いではないか。

懐中電灯を付けっぱなしでないと暗い夜が不安で眠れなかった黒髪のドナテッラ。
無理やりのお節介焼き。ルームメイトになったベアトリーチェは、そんなちっぽけな懐中電灯を遥かに凌駕する《強烈な太陽光線ビーム》で、親友を敵から守ったのだ。

こんなふうに、どうしようもなかった自分の「弱さや欠け」が、「誰かの弱さや欠け」をあかるく照らした不思議 って、僕らの人生においても存在する。
思いもかけない「ナイスバディ」の誕生なのだ。
笑え!イタリアのテルマとルイーズ。

劇中、「養父母役」も、「施設の職員たち」も、これ以上ない最高の脇役の仕事で
ドラマをしっかりと支えて固めた。

新しいイタリア映画にも、ここまでの文芸作品が誕生していたとは、驚愕の2時間だった。

そして映画を観終わってしまうと、
あんなにまくしてていたベアトリーチェの、喋り過ぎて声がかれた、あのかすれ声がとっても懐かしい。
やかましくて耳を塞ぎたいと思っていたほどの騒ぎだったのに、あの声がもっと聞きたいと思っている僕がいました。

水の中から、再び子を抱いて浮かび上がったヴィーナスの誕生に、
もう僕は泣くしかなかったろう。
双方の女を黙らせようとしていたのは「男」だよね。
黙れ男どもと言いたいエンディングの余韻でした。

・・・・・・・・・・・・・

そういえば
我が「きりん家のお墓」には
行く当てのなかった、入れてもらえるお墓がなかった二人の婦人のお骨が、それぞれ一緒に入っているんですよ。
そこには陽の光がたっぷり注いでいるかな? 元気なおしゃべりがドアの向こうから聞こえてくるだろうか?
彼女たちも同じ境遇で出会って、骨になっても、いまは女同士で楽しくやっていてもらいたい。
里帰りのおり、墓苑を見てこようと思います。

「あなたがいてくれて良かった」。

星5つ。間違いないです。

✨ ✨ ✨ ✨ ✨

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きりん

3.5人類はダメな奴なんです

2024年10月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

イタリア映画はやっぱり世界で一番カメラが美しいと思います。洋服ひとつ見ても、色彩豊かですよね。トスカーナの風景も美しい。そんな美しいトスカーナが薄れてしまうくらいインパクトのあるベアトリーチェとドナテッロ。ベアトリーチェの様な虚言癖やギャンブル狂的な人間が回りにいたら嫌ですが、それも人間なんですよね。個人ではどうすることもできない場合がある。そもそも性格も遺伝や生まれ持ったものだとしたら、努力や自己責任という言葉にも意味がない。本当イタリア映画ってこういう包容力のある作品を描くのがうまいと思う。人類は“ダメな奴”だからという前提で生きてるからいろいろと寛容ですよね。

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ミカ

4.0愛すべき傑作だった

2023年5月7日
iPhoneアプリから投稿

綿密に練り込まれたキャラクター造形が素晴らしかった。
あんなにお喋りで嘘しか言わないベアトリーチェに
なぜかついて行くドナテッラ。
そして次第に仲良くなっていく二人。
どうしてだろうと思ってたけど、途中でわかった。
互いに互いの母親に似ているのよね。

ベアトリーチェの虚言が真実だった展開も好きだし、
施設にしろ、看護師にしろ、女性が優しくてね…。

二人が出会ってよかったですよ、本当に。
ラストの海のシーンもよかったし。

「17歳のカルテ」や
「テルマ&ルイーズ」を思い出させる
心の一作でした。

もうどうしようもなくなった二人だから、
ほんの少しの幸せを探しに。

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JYARI

2.5タイトルなし(ネタバレ)

2022年9月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ