劇場公開日 2019年11月15日

「マフィアの殺し屋を、一人の人間として描いた一大叙事詩」アイリッシュマン さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0マフィアの殺し屋を、一人の人間として描いた一大叙事詩

2019年12月26日
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面白い!面白すぎる!
Netflixでの視聴とはいえ、アベンジャーズ/エンドゲーム以来、フルの状態で2回観ました。

「タクシードライバー」等の名作を手掛けた巨匠マーティン・スコセッシ監督の最新作!
今作は製作費の膨れ上がりや上映時間の長さ等で元の制作会社であるパラマウントフィルムが手離してしまったところ、Netflixが多額の出資をして製作された複雑な経緯を辿っています。

僕はマーティン・スコセッシの作品は「沈黙」、「ヒューゴの不思議な発明」、「タクシードライバー」、「ウルフ・オブ・ウォール・ストリート」の4つしか観ていなくて、「グッドフェローズ」等のギャング映画は観ていません。

まともにスコセッシのギャング映画を観てない自分がこんなに長い映画を観て楽しめるのかと不安はありました。
ですが、そんな心配は全く不要でした!
3時間半の映画ですよ!?
まさか2回観るとは思いませんでしたよ(笑)

労働組合の委員にしてマフィアに所属してる殺し屋としての顔を持つ実在の人物の半生を描いた一大伝記映画です。

その主人公フランク・シーランを演じたロバート・デ・ニーロ。
彼を用心棒にさせていた労働組合のトップ、ジミー・ホッファを演じたアル・パチーノ
そして、マフィア「ブファリーノ・ファミリー」のトップであるラッセル・ブファリーノを演じたジョー・ペシ。

イタリア系ハリウッドスターのレジェンドが一挙に集結しただけでも凄いですが、やはり彼らの演技は本当に素晴らしいです!

今回のロバート・デ・ニーロは抑え目な演技でしたが、普段は穏やかながらも裏に狂暴さも秘めている感じが本当に素晴らしいです!
対してアル・パチーノは物凄く感情的に行動しながらも、言葉で人を惹き付けるカリスマ性溢れる役が本当に素晴らしい!
ジョー・ペシも物静かながら存在感が凄いです!

また、劇中で起こる会話劇から突然銃撃や爆破シーンが起こるのも相まって結構ハラハラしました。

またストーリーも、自分が観た「ウルフ・オブ・ウォールストリート」と同じように非常にテンポ良く進んで行って、尚且つ面白い!
1960年から70年代当時の労働組合とマフィアとの繋がりや、それによって生まれる人間関係が凄く興味深く描かれます。
ちなみに今回のストーリーは非常に情報量が多かったので、2回目観たときの方がより楽しめました。

この映画で描かれているのは、「ゴッドファーザー」のようにマフィアを恐れる存在として描くのではなく、一人一人の人間として描いているので、犯罪者でありながら物凄く人間臭い物語が展開されます。

これは同じくアイリッシュマンを観た僕の友達が言ってたことですが、
「この当時の労働者って、マフィアと付き合ってないとやってられなかったって事ですよね。」

まさしく言葉通りだと思います。
実際、劇中のロバート・デ・ニーロもマフィアと関わり始めた理由は「家族を守るため」なのですから。
家族を養うためにお金が必要になり、お金を稼ぐためにマフィアの仕事に手を貸しますが、終盤では…
アル・パチーノも然りです。
労働組合と密接に関わりがあるマフィアと付き合っていたから、みんなに支持されますが、それ故にあのような末路を辿ってしまったというのがなんとも皮肉です。
非常に人間臭くて何とも言えない気持ちになります。

本作で数少ない好きじゃない部分をあげるとしたら、終盤(デ・ニーロの晩年)の部分がテンポが急に遅くなってしまって、そこはさすがに長く感じてしまいました。

しかし、観終わった後は何とも言えない余韻に浸る事が出来ました。
こんな凄い傑作はNetflixオリジナルとしてはなかなか観れないと思います。

ありがとう、ロバート・デ・ニーロ!
ありがとう、アル・パチーノ!
ありがとう、マーティン・スコセッシ!
最後まで諦めずに映画を作ってくれて、本当にありがとう!

さうすぽー。