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映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」 しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス
劇場公開日 2018年3月3日
解説
カナダの女性画家モード・ルイスと彼女の夫の半生を、「ブルージャスミン」のサリー・ホーキンスと「6才のボクが、大人になるまで。」のイーサン・ホークの共演で描いた人間ドラマ。カナダ東部の小さな町で叔母と暮らすモードは、買い物中に見かけた家政婦募集の広告を貼り出したエベレットに興味を抱き、彼が暮らす町外れの小屋に押しかける。子どもの頃から重度のリウマチを患っているモード。孤児院育ちで学もないエベレット。そんな2人の同居生活はトラブルの連続だったが、はみ出し者の2人は互いを認め合い、結婚する。そしてある時、魚の行商を営むエベレットの顧客であるサンドラが2人の家を訪れる。モードが部屋の壁に描いたニワトリの絵を見て、モードの絵の才能を見抜いたサンドラは、絵の制作を依頼。やがてモードの絵は評判を呼び、アメリカのニクソン大統領から依頼が来るまでになるが……。監督はドラマ「荊の城」を手がけたアシュリング・ウォルシュ。
2016年製作/116分/G/カナダ・アイルランド合作
原題:Maudie
配給:松竹
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2022年6月9日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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人の愛し方を知らない頑固で孤独な男エベレットと、家族に捨てられた体にリウマチの障害を持つ女モード・ルイスが、家政婦という雇われの形からではあるが徐々に絆を深めていく。その中でモード・ルイスは二人で生活する小さな幸せを絵画という形に昇華させていく物語。
一言で言ってよい作品だった。自分はどうも『孤独で頑固な男』キャラが好きだし、アートが関わる作品には自分もアートに興味があるためどうしても手に取りたくなる。01:28あたりのモード・ルイスの自分の創作姿勢の述懐(描きたいように描くだけ、鉛筆が目の前にあれば満足、深くは望まない)も勉強になる。
妻と接する中で徐々にユーモラスさを持っていくエヴェレット、夫との慎ましい生活の中で自分の中から素敵な世界を表現する力を発揮しそれが世間に広まっていく過程が醍醐味。この作品のように人の感情や『人が変わっていく』様子が丁寧に描かれた作品はあまりないと思う。
エンタメとしてのこの作品の欠点は、この作品にキャッチーなエンタメ要素が無い事。ドキュメンタリー的に平凡に慎ましく生きた個人の伝記を真摯に伝える作品であるのだから当然な傾向だと思う。どうすればいいかと考えると夫意外ももっと外見の良い役者を揃えて二人と外部の人間の葛藤のやりとりをより劇的なやりとりにして家も最初は汚くとも最後はとてもきれいで豪華な家にしたり最後のザマー感をより充実させたりすればより受けると思うが書いてて虚しくなった。堅実でテーマ性のある作品はどうしても売れないしつまらない部分があるのはしょうがないと思う。それをどうすれば本質に抵触せずに面白くするかが創作をする人間がもつべき肝なのだと思うが。
もう一つは、エヴェレットの今を作る原因の手がかりを何も描写していない事。材料がなかったのかもしれないし、フォーカスをモード・ルイスに絞ったからかもしれないが、どうして彼は頑固で孤独に生きているのだろうと気になった。
その他として、調べてみるとサリー・ホーキンスはシェイプ・オブ・ウォーター(2017)の主演女優だった。しあわせの絵の具が2016年公開なので身体障害の表現によりどうしても少し老けて見えるところがあって少しびっくりした。サリー・ホーキンスの顔立ちについてそれ以外の作品でもなんとなく既視感があるような気がして調べてみるとロッキーのエイドリアンに似てるというのがわかった(個人的感想)。役のあり方も今作と少しにてるかも。
2022年5月22日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
純粋が故に手のかかるモードと、根はとても優しいけれど愛情表現が下手なエベレットが心を通わせてゆく素敵なラブストーリー。
難しい役どころだったと思いますが、サリー・ホーキンスとイーサン・ホークのふたりの演技がスゴく良かったです。
切なくも温かい物語です。
電気も引いてないカナダの片田舎。モード・ルイスは不自由な体だが兄に住む家を売られ、叔母に預けられているが死産した経験を持つ。魚の行商を営むエベレット・ルイスの求人掲示板に応じ、家を飛び出したルイスは彼の家政婦として働くことになったが、孤児のルイスは人の使い方が分からずおろおろするばかり。
「ベッドは1つしかないから雑魚寝をしろ」と共同生活が始まる。しかし彼女は人の噂なんか全然気にしないむしろ面白がる性格で、暇を見ては壁や板切れに絵の具を塗りつけて花や人の絵を描いて行く。
極貧だが上を望まず不平も吐かない自然な生き様に胸が震える。
絵の好きな人はプラス1星付けるだろう。
どことなく埃っぽい風景。絵にすれば樹々たちの清々しさが観る者の心を存分に癒してくれるだろうに。しかし映画の出だしでは淀んだ川に投げ込まれた子猫のような気分にさせられてしまった。
モード・ルイスという画家を知らなかった。
物語が進んでいくうちにイーサン・ホークはどんな声や目線で彼女の言葉にできぬ哀しみを受け入れるのだろうか・・・そんなことばかり、気になって仕方なかった。演技者としてのセリフや立居振舞に関心を寄せていた。ところが、モードに怒りをぶつけてしまったシーン辺りから、そんな演技への興味はなくなってしまった。そして、僕はいつのまにかこの映画のエンドロールが流れる直前のシーンはどんな形で流されるのだろう?そんな興味でいっぱいになってしまった。
そう、どんな人間にも怒りは訪れる。でも、怒りは自分自身に盛る毒薬に他ならない。
この世のすべては変わり続けている。今、怒りを発せられたとしても笑顔を忘れたわけではないのだ。心身の病も自然の摂理と受け止め受け入れ「それは、仕方のないことなのだ。」と笑いながらうなずく瞬間がいかに大切なのかを思い知らされてしまった。
些細な、退屈きわまる同じことを繰り返す日々。いや、そうじゃないんだよ。窓の外はいつもいっも変化に充ち溢れている訳で、その変化を心耳や心眼で丁寧に感じ取ることが大切なのだ。
生きていくと言うことは汚れていくことなんだから、汚れるのが嫌であれば死ぬしかないのだ。
仕合せを実感する瞬間は誰にでもある。
しっかりと目を見開き心を静めてジッとしていないと感じ取れないよ。
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