打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? : インタビュー
菅田将暉を笑わせた、広瀬すずの意外な“一人カラオケ”好き
アニメ映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」が、8月18日公開される。1993年に奥菜恵、山崎裕太主演でドラマ化、95年に劇場公開された岩井俊二監督の同名作を、「モテキ」「バクマン。」の大根仁氏が脚本、人気アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」の新房昭之氏が総監督を務めた話題作。打ち上げ花火は横から見ると、丸いのか、平べったいのか? 親の都合で突然の転校が決まってしまった中学1年の少女なずなと彼女に思いを寄せるクラスメイト、典道たち少年が過ごす花火大会の日の物語。なずな役の広瀬すずと、典道役で声優は初挑戦となる菅田将暉に聞いた。広瀬が“一人カラオケ”が好きという意外な趣味の話も飛び出して…。(取材・文/平辻哲也、写真/江藤海彦)
――役にあたって準備したことはありますか?
菅田将暉(以下、菅)「まず台本の読み方が分からないので、台本を読みながら、コンテの絵を見るくらいしかできなかったです。原作の映画は改めて見ました」
広瀬すず(以下、広)「私も台本を読んで、映像を見て、セリフを読んでみて。それくらいでした。年齢がすごく離れているわけではなかったので、強弱をつけるよりも、このままでいいかな。(そうでないと)原作にあるような、匂いのある質感をもった映像がもったいないな、と。実写と変わらない言い回しでセリフを言ってみて、監督からなにかこうしてほしいとかあれば、できたらいいなと思っていました。でも、監督も『そのままでいい』とおっしゃってくれました」
――原作はどうご覧になりました?
広「話を頂いてから、見ました。私、大好きです。なにかドキュメンタリーを撮っているような感じで、バスのシーンも上から撮っているじゃないですか。ど真ん中になずなちゃんがいる感じがたまらなく好き。画面から匂いがする感じで、蒸し暑い感じとか…」
菅「なんかホームビデオっぽいよね」
広「やりたいと思いました!」
菅「(ホームビデオを)やってみたら、いいんじゃない? 広瀬すず監督で(笑)。(岩井監督の作品は)美しいですよね。アナログな質感だったり、匂いってのも分かるし。どこか刹那的でノスタルジーなところもある。あの時のあの瞬間を切り取っている感じが、今、映画を作る上で大事だと思うからこそ、刺激的な作品だなと感じます」
――収録は昨年4月だったそうですが、どんな様子でしたか?
菅「日数でいうと2、3日。ほとんど、すずちゃんとふたりきりで、1日だけ(クラスメイト・祐介役の)宮野(真守)さんがいました。普段の撮影だと、スタジオやロケでも人がたくさんいますが、声のときはブースで数人スタッフがいて、僕らがいる。今まで映画を作ってきた環境とはまるで違っていて、不思議な感じでしたね」
――アフレコではなく、プレスコアリング(先に音を収録し、絵を合わせる製作方法)。絵がほぼない状態で声を吹き込んだそうですね。
菅「普段(の映像の仕事)だったら、もっと考えることがたくさんあります。画角の把握もしなきゃいけないし、現場の空気は俳優部が作るものだから、いろんな気を回したり、作ったりもしますけども、これに関しては、ここだけの世界というのが大事でした」
――広瀬すずさんは「バケモノの子」で声優を経験済みですが…。
広「でも、全然違いますね。(「バケモノの子」の収録は)全員でやるものだったので、同じシーンはない絡みのない役者さんも毎日、現場入りしていて、顔を合わせていました。最初は、監督の隣で、みなさんがやっているところを見学させてもらって、自分の知らないシーンも見ているし、顔も合わせています。5、6人のシーンでは、マイクの前で自分が話すときは一歩前に出て、終わったら下がって、というやりかたでした。(今回は)その場にいる人数が少なかった。私はその方が好き、やりやすい環境でした。なずなは跳ねているような役ではなかったので、やりやすかったです」
――広瀬さんは、松田聖子の「瑠璃色の地球」を歌うシーンがありましたね?
広「(具体的な曲は)春に録った後に決まったんです。なにかを歌うとは聞いていたんですが、音楽を聞いていなかったです。その後に、(なずなが)歌っている映像のDVDをもらいました。(カラオケ店で)一人で練習しました。夏に収録しました」
――歌は得意ですか?
広「歌うのは好きです」
菅「カラオケとか行くの?」
広「一人カラオケです。人とは、そんなに行ったことないんです」
菅「何歌うの?」
広「合唱曲を歌っています。小学校の時に歌う…」
菅「『旅立ちの日に』?」
広「そうです! 『COSMOS(コスモス)』とか、Kiroroさんの歌とか。あと、『マル・マル・モリ・モリ!』」
菅「めっちゃおもろいやん。それ、なんかで密着してもらい。カメラ回してもらい。めっちゃおもろい(笑)」
――菅田さんは、宮野さんとの共演で声優さんの凄さを実感したそうですね。
菅「水の中に落ちていく、その中での声とか、ブワーと出てくる時の声とか、ご飯を食べながらのシーンの声とかを、宮野さんから『こうやって手を使うんだよ』と細かい技術を教えてもらいました。今までもアニメーションを見ていたけれど、なにげなく見ていたものは、こうやって作っていたんだ、とビックリしました。アンテナが広がりましたね。出演者の中では立木(文彦)さんが(デビュー作である)『仮面ライダーW』のナレーションをやってくださっています。一度だけお会いしたことがあるんですけど、めっちゃ声が低くて、伸びやかで、聴きやすくて、いい声。ムッチャかっこよかった。(仮面ライダーはスーツアクトの場面でアフレコもあったので)デビュー当時のことも思い出しましたね」
――好きなアニメは?
菅「めっちゃ増えました。(実写映画で出演した)『銀魂』はよく見ています。ジブリ、ディズニーも。ふと見直したりすると、号泣してしまいます。『平成狸合戦ぽんぽこ』は大人になってから見ると、パンチがありますね。風刺が効いているし」
広「私は、あんまり見てこなかったんです。ジブリの有名な作品をちょこちょこ。1年半くらい前に『耳をすませば』を見たんですけども、心が踊って、ワーとなってしまいました」
菅「うん、いいよね。あれ、高橋一生さんの声なんだよ。バイオリン職人の声…」
広「えっ、そうなんですか? あ、そうだ。もう一回見よう!」
菅「一生さんの声、めっちゃいいよね」
――本作の手応えは?
広「(主人公たちが)瞬間瞬間が生きている感じがします。こんな話がそのままあるんだろうなとすごく感じました」
菅「ロマンがあるし、映像も色気がある。こういう毛の生えそろっていないような主人公のお芝居は段々、(年齢とともに)減ってくるじゃないですか。久々にやれて、どこまでできたかなと思っています。そう、こないだオレンジ色のブレザーを着て、芝居をやったんですけども、さすがにキツくなってきたかなって思ったんです。噴射するタイプの花火を囲んで、キャッキャッ言っているシーンがあって、アクシデントで花火が倒れた。その花火が俺が座っているチェアの下に来て、グルグル回って、火の中に消えるということがあった。昔だったら、爆笑しながら、すぐにリアクションを取っていたと思うんだけども、体がすぐに動かなかった。年取ったなあ」
――まだ24歳ですよね?
菅「でも、(この主人公の)13歳と24歳じゃ、全然違います」
広「箸が落ちても面白い年ですもんね(笑)」
――「君の名は。」は上白石萌音、神木隆之介といった俳優が声を演じて、去年大ヒットしました。意識しますか?
菅「(広瀬に)意識しますか?」
広「みんな出ている人が知っている方ばかりでしたけども、意識はしなかったです。あんまり考えたことはなかったです」
菅「どうしたってね、大人がざわついている姿を見ているので、意識せざるを得ない部分はあります。いろいろ調べていくと、神木君、すごいな、と。素直に勉強になるなと思いました。(大合唱上映をやった「君の名は。」のように)劇場でサイリウムを振るような映画ではないけども、ここにしかないものは絶対あるので、それでいいのかあ。サイリウムは持ってこないでください(笑)」
広(爆笑)