打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? : 映画評論・批評

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

劇場公開日 2017年8月18日
2017年8月15日更新 2017年8月18日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー

オリジナルのテーマを深化させ、アニメならではの魅力もフルに発揮した理想的なリメイク

人生は選択の連続である。もしあの時違った選択をしていたら、別の人生があったかもしれない。しかし、人生はやり直せない。だから人は葛藤する。あり得たかもしれない「if」の自分を想像するのはとても魅力的なことであるが、時に後悔の念を抱くこともある。

1993年に放送されたTVドラマ「if もしも」はそんな人生の分岐点で分かれたドラマを両方見せるというコンセプトだった。選択AとBがあり、それぞれの選択をした主人公がどうなるのか、その顛末を順番に見せていく。

岩井俊二のキャリア初期の傑作「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(1993)」は、このシリーズの1エピソードであり、選択の分岐によって青春の苦々しさと瑞々しさを共に見せる見事な作品だった。最初の選択で少年は後悔することになる。だからこそ、その後悔をぬぐうようなもう一つのストーリーが視聴者の胸を高鳴らせた。

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今回、アニメによってリメイクされた本作では、この人生の選択という点をさらに掘り下げている。「if もしも」のシリーズ全体を貫くコンセプトもしっかりと踏襲し、ドラマシリーズを知らない観客にも理解できるように、単独の映画作品として見事なアレンジを施している。

選択によって物語が分岐する設定は踏襲しつつ、その「if」の世界線が発動する点に理屈を与えて初見の観客にもわかりやすく、さらにオリジナルでは小学生だった登場人物を中学生に置き換えたことで、青春映画としての瑞々しさや、思春期ならではの危うさも増しているのだ。

原作者の岩井俊二はこの物語を「銀河鉄道の夜」のようにしたかったそうだ。その意向に沿ってか、ファンタジックな描写も大幅に加味されており、原作の魅力を上手に引き継ぎつつ、アニメーションならではの魅力をふんだんに盛り込むことにも成功している。

そして、特筆すべきは大根仁の脚本構成力だ。「if もしも」というドラマは、2つの選択肢を提示することで人生の面白さを描いたが、本来、人生には無数の瞬間、無数の選択肢があって、その選択の数だけ「if」が存在するはずだ。そんなあり得たかもしれない、選択されなかった「無数のif」にまで思いを馳せる。

オリジナルのコンセプトへの理解を十分に示し、アニメならではの魅力も存分に発揮し、テーマも見事に深化させている。理想的なリメイクだ。

杉本穂高

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