パターソンのレビュー・感想・評価
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詩人は、名乗ろうが名乗らかろうが詩人である
久しぶりに心を鷲掴みにされました。
パターソン市に住むパターソン氏
バスの運転手で詩人。
彼の1週間を淡々と描いた映画
恋人と小さなベッドで迎える朝
詩をなんども繰り返し推敲し小さな秘密のノートにかきとめ
同じ路線を一日中ぐるぐるとバスで周り
乗客の会話に耳を傾けて微笑む
繰り返すルーティン
静かな日々の中で恋人への愛を綴り
街中の名もなき詩人達に敬意を払う
風変わりな恋人
不満ばかりを口にする上司
懐かない犬
全てを受け入れるパターソン
なんてことない一コマから美しい詩を生み出し
誰にも聞かせず、自分を詩人と言うかどうかも
曖昧。
静かで地味な街
パターソンは自分そのもの。
だけれど
そこから生まれた偉人もいるし
そこを目指して遠くからくる人もいる。
パターソン自身もまた、
誰かにとってはなんてことない平凡そのものであり
また、他の誰かにとってはかけがえのないものである。
恋人が誰から観てもアーティストなのに
自分ではカントリー歌手やカップケーキ職人を目指す人であるように
誰も自分の事はわからないし、
自分を決めるのは自分
詩人は、詩人である。
自分で名乗ろうか名乗らかろうが
それは溢れてくるものだから。
若い頃の竹中直人激似のアドリブに、アダム・ドライバーがマジ笑い
ありふれた日常の幸せ?
変わらない日々の愛おしさ?
はて。この映画そんなこと言ってるだろうか?
みんな色々と悩み苦しみ、それでもなんとかトータルで見ればまぁトントンくらい。人生うまくいかないけど、まぁギリ何とかなったりするよね。我慢我慢。
そう受け止めたのは、私の陰気がすぎるのかしら?
主人公の悩みは主に家庭にある。
美人だし好きなんだけど、働かないし、家は変な色に塗るし、カップケーキでビジネスとか、ギター練習してカントリー歌手とか、wannabeなことばっかり言ってる妻(日本で言うところの、いい歳こいてバンドマン的キャラ)。晩御飯のパイも美味しくないし、映画の趣味も合わないし。
特に、主人公が描いてる詩を「もっとみんなに見せるべき」とか余計なこと言ってくるデリカシーのなさ、無理にねだってきたギターを「あなたからのプレゼント」と言う厚かましさ(しかも手始めに聞かせられるのが、線路で毎日働く人の歌!人の金で買ったギターで!働いてない嫁が!無自覚に!)。このあたり、主人公がかなりストレスを感じている表現がなされていたけど、どの批評もあんまり触れてないですよね。謎。
主人公が露骨に落ち込んでる時に「私、出て行った方がいい?」だって。そんなこと言われたら、「いいよ、ちょっと散歩行ってくる」と主人公は言うしかないですよね。その辺りの主人公の性格踏まえてナチュラルにかましてますよね。あの嫁。
会話に女の影が少しでもちらついたら「女?」と顔をしかめるメンヘラ成分もしっかり配合。まぁ主人公が好きならいいですけど、あの嫁、かなり痛いですし、映画上でもそう表現されてます。
直しても直しても倒れる郵便受けみたいに、主人公にとって家は基本我慢の場所。対して主人公の平穏は家の外にある。
仕事の愚痴も趣味の話も、相手をしてくれるのはバーのマスター(バーで過ごしている時の主人公の笑顔の、なんと伸びやかなこと!)。仕事場の同僚は、何だか自分より家庭とか色々大変そうだし、話を聞いてると自分はまだマシかな、と思えてくる。
仕事中も客の会話に耳を立てれば、アナーキストを気取ってる厨二の大学生とか、モテマウントを取り合ってる童貞男子とか。「どいつもこいつもしょうもないなー。アホやなー」と耳をそばたてて笑う主人公。詩人少女(わかってる感を醸す嫁と詩の話をするより全然楽しい)とかランドリーラッパーとか、犬絡みヤンキーとか、まぁ外を歩いてると珍妙な出会いもあるしね。嫁は弁当に美味しくないカップケーキ入れてくるけど。
しっかしバスの故障と作詞ノート損失のダブルパンチは流石に凹む。嫁を我慢する気力もないので、外に出たら、初対面で意気投合した珍妙な日本人が新しい作詞ノートをくれるという、結構大きめのアゲ。これでまた何とか生きていけるわ。よかたよかた。
どの論評も「平穏な日常、変わらない日々」的な話をしていますが、私の目には何も起きないどころか、日常の悲喜劇をピックアップ+ディフォルメした、結構しっかりめのコメディに見えました。イライラしたり、笑えたり、リアクション取りやすい映画ですよ、これ。
昔に比べると随分わかりやすい表現をしているにもかかわらず、「何も起きない、平凡な日常」とか言われるジム・ジャームッシュの不憫さ。なんかジム・ジャームッシュに、ベタな「ジム・ジャームッシュっぽさ」を押し付けてません?
というわけで、結構面白かったです。映画館以外の鑑賞のレビューは書かないのですが、色々見てたら、どの論評も随分な的外れに見えたので思わず書いてしまいました。
でもまぁいろんな論評を見れば見るほど、私の勘違いなんでしょうね。この映画は多分、ありふれた日々の幸せや変わらない日常の愛おしさ、を詩的に描いているのでしょう。きっと。
愛犬のブルちゃんが可愛い。
何気ない日常を描いた作品。主人公の静かな佇まいに癒される。明るい妻とは合うのかなと思った。けど 月が夜太陽によって輝ける様に彼にとっては彼女は居なくてはならない存在。
彼の頭の中はいつも詩をつくることで一杯。唯一くつろげる所が食事の後にブルちゃんと散歩しながらバーに立ち寄って仲間との会話。
ふたりがキスすると必ず吠える。ヤキモチ どっち 詩のノートまで破るし多分♀なのかも。
ノートを破られた時は相当なショックだったと思う。毎日新しい日がやって来ると言われ新しいノートをもらって。また新たな月曜日がきて新たな詩を書き始める。
何気ない日常の大切さ幸せな事に気づかされる作品。
毎回ポストを倒していたのはブルちゃんだったのね。
詩人の一週間。士官学校上がりのバスドライバーの一週間。
ジム・ジャームッシュ レトロスペクティブ2021の鑑賞3作目。
コレはトリコになりますわ。ヤバいくらい好き。日常のルーチンを通して描かれているモノの意味を深読みする時間を与える間の作り方。なんの特別感も無い、ありふれた街の風景。淡々とした台詞回し。想像力を刺激する設定と登場人物達。コレはヤベー、惹きつけられますわw
帰り路で見かけた少女は自作の詩を「秘密」のノートに書き溜めている。双子の姉は母親と2人でビルの中にいて用事を済ますのを待っているのだと。
「双子」の片割れは人と過ごし、
「双子」のもう片割れは一人で秘密のノートを開く。
誰にも見せない秘密のノートは、誰にも見せた事の無い自分自身の人格の一面。コピーを恋人に見せようとした、その日に、恋人の愛犬に微塵に食いちぎられる。
自分自身を失った気分で滝を眺めているトコロに現れた不思議な男から渡された白紙のノートに、自分の中にある、もう一人の自分が語り始める。日常の何でもない内心を、別の人格が眺めている様に。
そんな感じ。
双子。アメリカではマイナー人種の恋人。彼女が描く白黒のオブジェ。インド人のバス運行管理者。チェス好きで金欠なバーのオーナー。恋人をフェイクガンで脅す男。詩を愛している不思議な日本人。
そこに意味を見いだそうとすれば、トコトン噛み締められる、正に詩の様な映画だった。
コレは見ておくべき映画だと断言出来ます。名作でも傑作でも無いけど、強烈な引力で惹きつけられる映画です。
にしても。
な、な、永瀬?
ここで、永瀬?
aha、って何?
え?え?え?
まぁ。あの、超美女の恋人に新しいノートをプレゼントさせたくなかったんですかね?愛の物語になりそうだから?
なんか、大阪の男が、半分ファンタジーで、ニヤニヤしてしまいましたw
それでいいじゃないか、売れなくても人の生き様なのだから。
JIM JARMUSCH Retrospective 2021 毎...
市井の詩人
パターソン (ニュージャージー州)はニューヨークから北西に35Km、バスを乗り継いで1時間もあれば行けるでしょう。映画にも映っていた大きな滝のある街で水力発電などで古くから工業の栄えたところでした。劇中では詩がサイドテーマのようですがジャームッシュ監督は若い頃に詩人のウィリアム・カーロス・ウィリアムズがパターソンにささげた詩集(劇中で永瀬さんが持っていた本)を読んで、とても興味を持ち何度も街を散策したようです、バスやバーでの人々の会話に触発されて映画化の構想を温めていたとのこと。主人公の名前もパターソン、バスの運転手をしながら詩作を嗜む物静かな青年で美人の妻とブルドックの倹しい暮らし、そんな一家の一週間が淡々と綴られる。
主人公の詩はアメリカの詩人ロン・パジェットの作、冒頭からマッチへの執着のような詩が綴られるが私には良さが分からない。少女の詩の方がましに思えたがこちらは監督が創ったそうだ。
終盤になって永瀬正敏が出てきたのには驚いたが、監督は滝の風景から日本を連想し、以前、同監督のミステリー・トレイン(1989)に出演していた永瀬さんに声を掛けたそうだ。
愛妻家ではあるのだろうが奥さんのパイを褒めながらも水をがぶ飲み、カーテンの模様の褒め方も素っ気ない、何気ない生活の一コマなのだが頷けてしまうから可笑しい、可笑しいと言えばブルドッグのマービン、留守番中の悪戯はよくある話ですが、ご主人の大事な詩のノートをビリビリにしてしまうのですが、いつも散歩中にバーの外で待たされる意趣返しのようでもあり受けました。
こういう平凡な日常描写はベテラン監督の腕の見せ所なのでしょうがなにせ単調なので若い人には退屈な映画かもしれませんね。
特別変わることのない日常
2016年11月22劇場鑑賞
朝起きて仕事に出て、帰りにいつもの店で一杯やって、特別変わることのない日常を淡々と描いた作品。
そんな日常の中でも美しさを見つけ、それを詩に紡ぐ。そんな小さな優しさがあります。
そもそもアダム・ドライバーがバスドライバーってのも、何ともジャームッシュならではのキャスティングですね。
しかも詩人、とてもユニークです。
また、この突飛とも言えるキャラクターに、アダム・ドライバーがすごいハマってます。
ユニークといえば、詩の制作に入ると風景や音楽が変わる演出が面白い。
一歩間違えるとただの笑いになってしまいそうですが、そうならないのがうまい。
そして「ミステリートレイン」以来ですよね?永瀬正敏がまさかの出演。
何でもジャームッシュから直接出演依頼が来たらしいですね、これは嬉しかったろうなぁ。
しかもこれが中々良い役所で味があります。
繰り返す変わらない毎日にも小さな変化があって、それは実は幸せの積み重ねで、そんな事を気付かせてくれました。
アダム・ドライバーの低音ボイスが会話とは違う”間”で言葉を紡ぐ。詩の朗読がよい。
一言でいうとアダム・ドライバーが演じるバス・ドライバーの何気ない一週間の話。
本当にただの日常。トラブルも些細なこと。大きな伏線もない。
でも異常なほど心地よく見れる作品。
まるで極上アンビエントを聴いてるかのよう。好きです。
バスの乗客の世間話に耳をかたむけたりする。
普通の映画ならのちの大きな出来事の伏線になったりするモンだけど今作は違う。世間話はただの世間話。
毎日のルーティンな生活がほんの少し変わる。
同僚の愚痴が変わったり。でもそれだけ。
いつもの日常レベルの変化を描く心地よさ。
アダム・ドライバーは堅実な人間。
妻は色々と影響されやすいアートな性格。急にギターを買ったり、カップケーキで生計を立てると言い出したり。
芯の部分でズレてるのに不満はなさそうな夫婦。うーん、おもしろい。
アダム・ドライバーは本当にいい役者だなぁ。
自分のこと、大切な人のことでもなんか他人事みたいにしゃべる。
生粋のまわりに振り回されるオーラ。
見た目もしゃべり方もすんごい個性があるのにしっかりその作品の役になってるのが素晴らしい。
アダム・ドライバーが詩を書いてそれを朗読するシーンが幾度も挿入されるのだけど、それが本当に心地良い。
あの低音ボイスが会話とは違う”間”で言葉を紡ぐ。
詩はそれほど興味のなかったけどこの映画をみて”なるほど、そういうことか”とナニカがわかった気がする。
独特
パターソン夫妻と街の人々の日常だなあと感じました。毎日のご夫婦の生活。詩人で真面目な夫とマイペースで個性的な妻。朴訥なご主人が天真爛漫な妻の料理に文句も言わず、だけど水は大量に飲んでいるシーンが可笑しかった。このご夫婦はとても深い深い感性の水底でつながっているんだろうな。うらやましい。
観ていくにつれて、心のなかに、この日常が崩れることがないように祈っている自分を見つけました。ドラマや映画って大抵はこの日常が壊れるストーリーだったりする。だから、最後まで普通だったことがなんだか嬉しいというかこれが人生だよねって思えた。
パターソンのパターソンさん
2回目の鑑賞
カラー版「ストレンジャー ザン パラダイス」
寝ちゃった、、、
全212件中、21~40件目を表示