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自宅にて鑑賞。日本劇場未公開のPOV。相変わらず妙な邦題(副題)附き。友人が自殺したコヴィントンの森へフラッシュライトゲームなる肝試しに訪れた五人の若者達の運命を描く。森は呪われており、灯を消す事、名前を書かない事、廃墟になった教会に立ち入らない事と三つのルールの元、虚勢を張り、悪ふざけを繰り返す若者達には、序盤からしっかりフラッグが立つ。POVと云うチープな描画を効果的に活かし、構成が巧みな上、各キャラクターもしっかりしており、細部に亘り作り込まれている。POVに抵抗が無い向きにはお薦め。75/100点。
・何故か手元の灯りが点滅を繰り返す際、鈴の様な音がする。ほぼ無音に近い微かなSEのみのエンドロール。S.ヤングの“ロビン”、散々な目にあっているが、足を引き摺る様な怪我を負ってる素振りも無く、川から上がっても余り濡れていない。人気者であり乍ら彼女を毛嫌い、意地悪をする我が儘なC.ブリッジスの“ニア”、ストーリーのスパイス的な役割としてキャラクターが立っていた。世界観がしっかりしている分、決まり事が多いのも本作の特徴かもしれない。
・POVによる呪われた森への探訪と云えば、最早マスターピースとも呼ばれる『ブレア・ウィッチ・プロジェクト('99)』を想起するが、写されない事で煽る恐怖を継承した不気味なテイストはその儘に、本作では丁寧な設定やキャラクター、世界観等で数多作られた似た設定の後継作の中では、頭一つ抜けている。尚、件の正式な続篇となる三作目『ブレア・ウィッチ('16)』は('13年に撮り終えていたらしいが、正式な理由はアナウンスされない儘、'15年公開となっている)本作の翌年に公開された。
・明かりの無い廃れてしまった森でカメラのライトが目印となり、撮影を繋いでいく(カメラを回す必然性と云う)アイデアやその中に誰が撮ったのか判らない映像が紛れ込んでいたり、点灯を禁じられているにも関わらず点滅を繰り返す古めかしい外灯、闇に蠢く野犬や蝙蝠、蛇等、獣の要素が追加されているのも佳い。血の涙や串刺し等はあるものの直接的なゴア描写は少ない。そんな中、有刺鉄線の素手タッチやトラバサミ等、地味に痛い描写が雑じっている。
・ざわめきに聴き間違えるせせらぎ、時折なびく風音と小枝が軋む音、更にこの異様な状況で降り掛かる睡魔、知らぬ間に刻まれた名前と状況を活かした怪異が忍び寄り盛り上げる。宙に浮く死体やヌルヌルした得体の知れないクリーチャー、牙を剥く獣に黒い魔女の様なシルエット、呆然とただ立ち尽くすだけの友人、川原に集められた死体の山等、一瞬しか捉えられないのを合わすと、薄気味悪い超常的なショットも多い。
ただPOVと云う撮影法や演出(何故そのTPOで撮影してる、或いは手ブレや画的な情報不足で判り難い等)に一定の拒否反応があって然りだし、どうしても通常より見劣りしてしまうのも事実で、この撮影・演出法ではよく考えられていると云うのが一般的で好意的な評価であろう(つまり知恵が絞られ、創意工夫が施されてはいるが、革新的と迄は至っておらず、森を舞台にした思わせぶりに進行すると云う縛りのファウンドフッテージ系では、本作が現時点での限界に近い表現なのかもしれない)。
・鑑賞日:2018年2月10日(土)