「arrival 20161029」メッセージ いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
arrival 20161029
去年の東京国際映画祭特別招待作品で、どうしても観たいと思ってPC前でチケット争奪に参加したが、受付側トラブルにてあっさりノーゲットの憂き目にあい、だからか益々もってお待たせ状態だった今作品。やっと鑑賞することが出来、その期待に応えてくれるかとの不安が入り混じってのワクワク感であった。相変わらずソニーピクチュアズの高デザイン性に期待のボルテージも昇りっぱなしだ。
で、いきなり感想だが、非常に哲学的形而上学的な問いかけが頻繁に突きつけられる疲労感の濃い内容であった。SFとは食い合わせが良いので、この手の作品はスタンリーキューブリックを出すまでもなく、古今東西多くのプロットが存在するのだろうが、その中でも何とかハリウッド的に纏まった作品なのではないだろうか。
異星人とのコンタクト、即ち外国人とのコミュニケーションの難しさ複雑さを表現しているテーマ性において、メタファーとしての『ヘプタポッド』及びそれが発する異形の象形文字を演出することで相互理解に努力することを表わしている。だがその努力だけでは難しい時、“最終兵器”が登場し、物事が解決していくというストーリー展開となっている。
かなりご都合主義的な要素もあって、その理論性は凡人である自分には解りかねるのだが(法則や定理も台詞回しの中で登場するので考えていると置いてかれてしまう)、キモはその無限ループ、つまり始まりと終わりが繋がっている『環』の状態となっていること、だからエイリアンの吐出す墨状の文字もまた、『環』を描き、微妙な形状違いでワンセンテンスの文を形成している。まるで主人公の未来の子供に名付けられた『hannah』のような回文のように・・・
問題を解く答えは結果にある。およそ時間という概念を持つ人類には理解しがたい構造も、それが可能であるかのそうな錯覚を得られる演出効果、イメージの植え付け、理論的音楽等に、観ている自分が絡め取られるかの如く、ストーリーに心酔してゆく。
こういうところにハリウッドの底力を感じる映画であった。