劇場公開日 2017年1月21日

  • 予告編を見る

「スコセッシの魂」沈黙 サイレンス ヒートこけしさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0スコセッシの魂

2017年1月22日
iPhoneアプリから投稿

スコセッシの魂を受け止めた。スクリーンに映るものとスピーカーから聴こえるものの全てがスコセッシの魂の発露だ(と勝手に信じている)。これほどまでに作り手の魂を感じた作品は無い。まさに集大成というべき傑作。スコセッシ信者の俺にとっても大切な作品になった

スコセッシのフィルモグラフィでいうと『最後の誘惑』『クンドゥン』に近い作品になるのかなと思ったら実は『ミーン・ストリート』に一番近いのかもしれん。ロドリゴはハーヴェイ・カイテルでキチジローはデ・ニーロ。あと『レイジング・ブル』のラストのヨハネ福音書の一節が本作にも呼応するなあ

スコセッシは『沈黙』を読んで「自分が映画にしなければならない」と思ったらしいけどまさに。この原作は暴力と信仰の映画作家であるスコセッシにしか映画に出来なかった(と勝手に信じている)

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』では狂騒を描き『沈黙』では静寂の中で物語る。対照的なスタイルでどちらもキャリア最高級の傑作にしてしまうスコセッシの老練ぶりここに極まれりという感じやな

窪塚洋介も言ってたように『タクシードライバー』『レイジング・ブル』『沈黙』を「スコセッシ魂の三部作」としよう。「すこせっしだましい」じゃなくて「すこせっし・たましい」

『沈黙』は『最後の誘惑』でパウロが言う「私のイエス」を巡る物語と捉えた。「信じるとは何か?」という根源的な問いとそれ対する答えは「自らで見つけるしかない」ということ。そして遠藤周作は同伴者たる「私のイエス」と出会ったんやな

『沈黙』で描かれているキリスト教は「信条」に置き換えてもいい。自分の信条が他者からの暴力などによって挫かれようとした時あなたならどうする…と本作は問いかける。ただ『沈黙』が素晴らしいのは挫けた人をこそ救う作品であること。遠藤周作の原作もスコセッシの映画も。ありがとうございます…

ヒートこけし