トリプルX 再起動 : 映画評論・批評
2017年2月21日更新
2017年2月24日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー
危険なことが好きな奴、みんな兄弟! 理屈は捨てて、楽しい祭りに血をたぎらせよう
ヴィン・ディーゼルと言えば「ワイルド・スピード」なこの時代、「トリプルX」を覚えている人も随分と減ったことだろう。もともとはポール・ウォーカーとのW主演だった「ワイスピ」一作目の後、自らの単独主演アクションとして作ったのが2002年の「トリプルX」だった。
ヴィンが演じたのはエクストリームスポーツが大好きなヤンチャ野郎。シークレットエージェントにスカウトされ、型破りなオレ流で世界を揺るがす陰謀を解決する。簡単に言えばガサツな007である。
ところがヴィンは「ワイスピ」2作目からも「トリプルX」の続編からも降板してしまう。ヴィンは死んだことにされ、コードネーム“トリプルX”をアイス・キューブが引き継いだのが2005年の「トリプルX ネクスト・レベル」。残念ながらというか案の定というか大コケしてしまった。
身勝手な所業を反省したのか、ヴィンは「ワイスピ」に主演兼プロデューサーとして復帰、疑似ファミリーの絆を描くサーガとして再構築してシリーズを立て直したのはもはや現代の神話である。しかし15年ぶりに「トリプルX」まで再開すると聞いた時は不安になった。「ワイスピ」には“家族”という明快なコンセプトがあるが、「トリプルX」にはヤンチャでガサツなゴリ押ししかない。能天気なノリが身上とはいえ、果たして現代に通用する最新版を生み出せるのか?
ところが、だ。ヴィンはみごとな力技でやってのけたのだ。敵役に香港アクションの雄ドニー・イェンを招き、タイから「ワイスピSKY MISSION」でも組んだトニー・ジャーを迎え、インドから「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」の美女ディーピカー・パードゥコーンを連れてくるなどアジアを意識した座組は多人種混合で成功した「ワイスピ」に倣ってのことだろう。
今回打ち出した新コンセプトは“トリプルX”を概念と捉えること。もはやトリプルXは主人公のあだ名でもコードネームでもなく、アドレナリン中毒の荒くれ連中の総称となった。同じ魂を共有している以上、ヴィンもドニーもディーピカー姉さんも、ネタバレだから言えないあの人もみんなみんな“トリプルX”なのである!
とりあえず理屈は捨てて、本作の「危険なことが好きな奴、みんな兄弟」精神に触れて欲しい。そして「自分も仲間に入りたい!」と血をたぎらせて欲しい。バカげたアクション映画であることは否定しないが、こんなに楽しい祭りなら今後ともぜひよろしくお願いしたい快作である。
(村山章)