うつろいの標本箱

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うつろいの標本箱
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解説

大学の卒業制作で手がけた「くじらのまち」がPFFアワードなどで高い評価を受け、15年にはPFFスカラシップで製作した「過ぐる日のやまねこ」が公開された新鋭・鶴岡慧子監督が、シンガーソングライター・黒木渚のアルバム「標本箱」をモチーフにメガホンを取ったヒューマンドラマ。黒木の歌詞で描かれる女性の強さや揺れる思いを登場人物の6人の女性に託し、些細な日常の中で生まれる女性たちと9人の男性のすれ違いや出会いを、ある1日の物語として描いていく。主人公の大学生役を、16年7月にアイドルグループ「ゆるめるモ!」を卒業した櫻木百が務める。

2015年製作/95分/日本
配給:タイムフライズ

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(C)2015 タイムフライズ

映画レビュー

0.5監督業記念

津次郎さん
2021年6月28日
PCから投稿

むかしから教職の欠点として「社会経験がない」ことがしばしば指摘される。
日本では義務教育→教育学部を経て、エスカレーター式に「先生」になれてしまう。
かれらのほとんどが働いたことがない。
働いたことがないひとが、青少年を教育する──わけであって、どういうことが起こるか、推して知るよりまえに、日毎ニュースにて、教職者のさまざまな様態が世間を賑わしている。

日本の新進の映画監督にも、おなじことが言える。
大学もしくは専門学校で、映画を専攻し、どこかの監督に師事して、何かのアワードで賞をとる。
天才ともてはやされて劇場公開作をつくる。
数年後、誰も覚えていない。
拙作が積み重なる。その繰り返し。
映画の勉強をするまえに、どこかでアルバイトしたほうがいい。

日本には、誰も知らないアワードで受賞したり、来歴に「黒沢清に師事」と記述できる映画学校はあっても、大衆を指向した映画学校はない。映画が権威をまとっていて、労働者が見に行く映画がつくられない。
だいたい技法以前に、人間を知らないひとが人間を描けるわけがない。

この監督だけでなく、日本の若手女性映画監督全般に言えることだけど、日本という(特殊な)場所では、10代や20代ならば「女子」のステイタスが、当人の凡庸(or無能力)をスポイルしてくれる。女流映画監督でございとメディアにニコニコ笑顔で写っておくだけで買ってくれる社会がある。
だけど30になったら、子育てや講師へ逃げる準備をしないと、七光りだったり資産家の親がいなけりゃ、映画監督では食えない。

かといって、世界を知り、経験を積み、人間を知る──ことは多くの若手映画監督にとって諸刃になってしまう。なぜなら、世界を知り、経験を積み、人間を知ってしまえば、恥ずかしくて、とうてい映画なんか作っていられなくなる、から。知っての通り、無知や厚顔も才能です。

日本の映画監督が表出しようとするのはつねに漠然とした感覚のようなもの。きみはそれでいいんだと肯定されて生み出されるものはアマチュア精神のかたまりにしかならない。そもそも漠然とした感覚は漠然とした感覚に過ぎない。例えばカメ止めがなぜいいのかと言えば漠然とした感覚を信じずに大衆を面白がらせる工夫が施されていたから。

映画が無教育な大衆を蔑ろ(ないがしろ)にしているなら既に限界だが、むしろきょうびの日本映画は、生まれてこのかた映画を一度も見たことがないひとに見せるのでなければ、ただ怒りを買うだけ。
海外では女性が性で寛恕されておらず、大衆は優れた映画がアートハウスとブロックバスターの境界を持たないことを知っている。ノマドランドのクロエジャオがマーベルやDCコミック(の監督)に抜擢されている。すでに外国映画にはアートハウス(芸術)とブロックバスター(ミーハー)の間仕切りがありません。
すなわち、大海を知らず庭の池で育ったなら、恥ずかしくて、とうてい映画なんか作っていられなくなる。──という話。

imdbで1.0。
imdbは、国内のレビューサイトより一回り(いや二回りほど)点が辛い。が、こういったマイナーな映画は採点者が少ないので、採点者が少なければ、とうぜん点が高い。とはいえ、酷い作品にしても3や4あたりでおさまるのが普通。(10点制なので国内レビュー(5点制)に換算するとその二分の一。)採点者少なくて1.0は珍しい。

映画というより作品というより「なんかやってる風景を撮ったリール」。「21世紀」系の女流全般に言えることだけど「監督業記念」に撮ったものが貯まったら、もうつくるのやめようよ。0点。

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津次郎

4.0読み心地のよい短編小説のよう

issyさん
2016年10月8日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

知的

幸せ

映画『うつろいの標本箱』の試写会にて、一足先に鑑賞して参りました。
この映画は、新進気鋭の若手監督が、これまた新進気鋭のミュージシャンの楽曲からインスピレーションを得て、これまた瑞々しい可能性に溢れた役者さんたちと作り上げた作品。
ネタバレを避けつつ感想を述べるならば、読書の秋に観るにふさわしい「短編小説を電車の中で読んでいるような気持ちになる映画」でした。
あらすじ的なことは、公式サイトを参照いただくとして。

この映画で語られるのは、ごく普通の人たちの日常のワンシーン、のようでいて、そうでもない、ちょっと特別な出来事の重ね織り。
若い男女数人の群像劇、なんですが、みんながみんな、それぞれの暮らしの中で自分に正直に生きていて、なんとなくうまくいかないこともあるけれど、ちょっとだけ、前に進めたね、というようなお話。
小説を読むように、想像の余白が残されているのが、この映画の一番面白いところでした。
「短編小説を電車の中で読んでいるような映画」といったのは、小説の世界観にはまりそうになったところで、駅に到着してしまって、ふいに現実に引き戻される。そんなザワザワ感も楽しい映画でした。

そして、作品自体に対する感想を離れたところでいうと。

作り手の、作品に対する愛情がすごく感じられた映画でした。
表現することへの真摯な想いにあふれていて、
それが、作品全体の嫌味のない感じに、
きれいごとではいかない日常を描きながらも、どこまでも優しい人たちが紡ぎ出す穏やかな物語に昇華されていたように思います。
この時期に公開されてよかった。
「秋に観るに、ふさわしい映画」です。

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issy
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