インクレディブル・ファミリー : 映画評論・批評
2018年7月17日更新
2018年8月1日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー
家族とは、強靭な絆とパワーで結ばれた史上最強のヒーロー連合なのだ
真っ赤なコスチュームに「i」のマーク、さらには「007」を思わせるゴージャスなメロディに彩られながら、あの家族がついに帰ってくる----だなんて書くと、あたかも長い長い年月が経過したかのようだが、ここで我々は冒頭から新鮮な驚きに包まれることに。というのも本作は14年に及ぶブランクを物ともせず、前作のラストシーンからそのまま直結する形で物語を再始動させるのだ。
思えば、「Mr.インクレディブル」(04)は現在の映画界を席巻するヒーロー要素を先取りし、これにファミリー要素を掛け合わせるという大胆不敵なスピリットを持った作品だった。そこから見えてくるのは「家族という、ややこしくも才能に満ち、底知れぬ力強さを秘めた存在」。それは当時、リアルな子育てに奮闘していたブラッド・バード監督の率直な思いでもあったに違いない。
この基本軸に今回はまたひとひねりが加わった。世の中は相変わらずヒーローに冷たいまま。だが、ひょんなことからママが大企業のバックアップを受け、悪を挫くヒーローとして大活躍することに。代わりにパパは家庭内のことを一手に引き受ける主夫へと転身。つまり前作とは真逆の立場で各々のストーリーが展開していくのである。
これが久々のアニメーション復帰となるバード監督は、持ち味とも言えるシンプルなデザインを崩さぬまま、むしろディテールに高密度の意匠を組み込んで楽しさを倍増させる。そしてたまらないのは、バイクや列車でのアクションに始まり、やがて海や空にまで展開していく趣向の詰まったシークエンスの数々。このあたり、「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」(11)などの実写映画で磨かれたバードの創造性と革新性が、モロに活かされていると見ていいだろう。
一方、おなじみの赤ちゃん(ジャック・ジャック)も飛躍的な進化を遂げる。あらゆるものに対して好奇心がいっぱいで、無限の可能性が開かれたこの愛らしい存在。ご機嫌を損ねると手がつけられなくなる点も含めて、多くの観客からにこやかな眼差しを集めること間違いなしだ。
かくもファミリーの誰もが今回も縦横無尽の活躍を見せつける。がこれはきっと、観客一人一人にも通じる鏡のようなもの。それに気づいた時、この映画のスーパーパワーは真の意味で我々に希望と活力を与えてくれるのかもしれない。そして誰もが改めて確信するはず。家族とは強靭な絆で結ばれた、史上最強のヒーロー連合なのだ、と。
(牛津厚信)