マンハント : インタビュー
福山雅治×ジョン・ウー監督 最強タッグが作り上げた圧巻の“優美”なアクション
「男たちの挽歌」「M:I-2」などで知られる巨匠ジョン・ウーが、オール日本ロケを敢行したアクション大作「マンハント」(2月9日公開)を完成させた。パートナーに選んだのは、日本を代表する歌手・俳優の福山雅治。今作で本格アクションに初挑戦した福山と、「長年の夢」であった日本での映画撮影を実現させたウー監督が、互いの魅力を語りつくした。(取材・文/編集部、写真/根田拓也)
映画は、佐藤純彌監督、故高倉健さん主演の「君よ憤怒の河を渉れ」(1976)の原作となった、西村寿行氏の同名小説を再映画化したサスペンスアクション。殺人事件の容疑者に仕立て上げられた国際弁護士ドゥ・チウ(チャン・ハンユー)と、真実こそ正義と信じる刑事・矢村(福山)が、事件の真相究明に奔走するさまを描いた。
「日本に引っ越しましょうかね(笑)。日本語が話せればなあ……」と日本愛を語るウー監督。若き日には、尊敬する俳優である高倉さんの新作映画を毎月のように見ていたという。「高倉さんが亡くなられたことが悲しく、残念でした。高倉さんを記念する映画を撮れたらと思っていたところに、(香港の映画会社)メディア・アジアから『マンハント』を撮らないかというオファーをもらったんです」と企画の成り立ちを述壊する。
この記念すべき作品の主演のひとりとして頭に浮かんだのは、2013年にウー監督が手がけたCMに出演した福山だった。「素晴らしい雰囲気を持っている素敵な方で、ハンサム。人間や社会に対する愛を込めて音楽活動をされていることも、まさしく私の理想とするヒーロー像とオーバーラップしているんです。ラッキーなことに、オファーをお受けいただけました」
出だしから絶賛された福山だが、世界で活躍する巨匠からのオファーに「本当に驚きました」と目を丸くする。「嬉しさと同時に、僕なんかが監督の作品世界のなかでちゃんとアクションを表現できるのかと、本当に心配しかなかったんです」と本音を吐露。しかし、その不安をウー監督に素直にぶつけると「大丈夫」と力強い答えが返ってきたという。「監督がいいって言っているんだからいいんだと(笑)。僕がどうこう考えるのは止めて、監督にゆだねました」と現場に飛び込んだと話す。
福山とウー監督は、多数の言語が飛び交う現場でも、「言葉の壁を感じることはなかった」と声をそろえる。ウー監督は、「物語に対する考えも一致して、心が通い合っていたんです。初めて一緒に映画を撮りますが、長年一緒に仕事をしてきたような感覚でした」と福山との相性の良さを明かし、福山も「作品が共通言語になっていく。色んな言葉が飛び交っているからやりにくいということはなかったです」と振り返る。
撮影現場に入る前から、福山のウー監督への信頼は厚い。「『今回はどのようなテーマで撮ろうと思っておられるんですか』と質問したら、映画の内容も、日本映画への思い入れも、高倉健さんに対する思いも、非常に丁寧にお話しして下さった。とても信頼できるお人柄というのが最初の印象でした。撮影中も、迷ったりわからなかったりしたことを聞くと、毎回必ず、すごく時間をかけて丁寧に説明して下さる。そのおかげで、監督が表現したいものにどれだけ自分が近づくことができるかと、演者、現場スタッフみんなが監督のためにという思いになっていったんです。そういう求心力が今回の現場は強かったと思います」
そんな今作の大きな見どころとなるのは、矢村とチウが息を合わせる圧巻の“バディアクション”だ。手錠で繋がれた2人が繰り広げる華麗なノンストップアクションは、ウー監督の真骨頂。福山は、撮入の約1カ月前から劇中で使う小道具の拳銃を常に携帯し、アクションの練習に取り組んだという。
福山「プレッシャーはとてもありました。チャンさんは弁護士役で僕が刑事役なので、戦いのプロとしての役割は僕が担わなければならない。これはますます大変だなと(笑)。相手を制圧する圧倒感、圧力が見えなければならない。アクションという型だけではなく、刑事という職務に命を懸けているという覚悟の量を表現できないと、監督が望むものにはならないんだろうなと思っていたので、そのことは常に考えていましたね」
そんな福山のアクションを、ウー監督は「優美」と表現する。激しさのなかに美しさを宿すアクションを演出するウー監督にとって、福山は理想的な“アクションスター”だった。「アクションのなかで、その人物の感情や表現したいものを見せてくれています。音楽的な要素もすごく感じました」
俳優としての姿勢にも感服した様子で、「福山さんは何をやるときも真剣そのもの。毎日現場に入ると、まず私と話をして、今日はどういうものを撮るのか、求められるものは何なのかを非常に詳しく聞いて準備する。そして、整理して一気に撮るんです。自分の仕事や求められているものに対して本当に真剣で、真面目。こんなにプロ意識の高い俳優さんを見るのは久しぶりです」と熱く語る。
ウー監督の言葉に「光栄です」とはにかむ福山が、「次、もし監督と一緒に作品を作れるのであれば、今回感じたこと、経験させていただいたことを活かして、もっと高いリクエストに応えられるかもしれないと思っています」とアピールすると、ウー監督も「あまりにも素晴らしい方ですので、今福山さんに合う脚本を一生懸命探しています(笑)。次回は時代劇ですね」とほほ笑み返す。ゆるぎない最強タッグの誕生に、次回作を期待せずにはいられない。