アスファルト
劇場公開日:2016年9月3日
解説
「歌え! ジャニス★ジョプリンのように」の監督を務め、俳優や作家としても活躍するサミュエル・ベンシェトリが、パリ郊外で過ごした子ども時代の経験をつづった自身の小説をベースに、イザベル・ユペールらの出演で描く群像劇。フランス郊外のとある寂れた団地に集まった、サエない中年男、夜勤の看護師、母親が留守がちな鍵っ子のティーンエイジャー、落ちぶれた女優、不時着したNASAの宇宙飛行士、服役中の息子を持つアルジェリア系移民の女性。たまたま団地に集った孤独を抱えた6人の男女に、3つの予期せぬ出会いが訪れる。ユペールのほか、バレリア・ブルーニ・テデスキ、マイケル・ピット、監督の息子でジャン=ルイ・トランティニャンの孫にあたるジュール・ベンシェトリらが出演。
2015年製作/100分/G/フランス
原題:Asphalte
配給:ミモザフィルムズ
スタッフ・キャスト
全てのスタッフ・キャストを見る

- ×

※無料トライアル登録で、映画チケットを1枚発行できる1,500ポイントをプレゼント。
2017年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
フランスのとある町に佇む公団住宅。ムダな要素をほとんど排除したこのミニマルな空間は、空っぽすぎてある意味、時代を超越したSF世界のようだ。住民たちも互いに没交渉で、とてもじゃないが強い絆で繋がっているように見えない・・・。なんだか今まさに世界中で起こりつつある社会の分断を投影しているような舞台設定、そして6人の(群像劇の)主人公たち。一方、エレベーターだけはマイペースに上下運動を繰り返し、人や物を運んだり、運ばなかったりするという、これまた巧みな物語上の仕掛けが観る者の心を惹きつけてやまない。アスファルトと言うより「コンクリート」。どこかひんやりとした触感が伝わりつつも、決して悲観的にならず、仄かなおかしみを込めて「誰かと繋がりたい」という思いを一筋の陽光のように差し込ませる。世の中に足し算の演出がはびこる中、引き算を使って全体を制御し、観客に様々な思いを想起させるこのベンシェトリ監督の才能に感銘を受けた。今後が楽しみな逸材だ。
2016年10月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
冒頭、団地の住民の寄り合いのシーンが乾いたコントのようで、ロイ・アンダーソンを思い出した。が、アンダーソンのように人間の存在そのものを俯瞰するような作風ではなく、登場人物ひとりひとりの傍らでさりげなく微笑んでくれるような映画だった。
主な登場人物は6人。ちょっとヒネクレ者の映画女優を演じたイザベル・ユペールは63歳という概念を覆すキュートさであり、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキの本当に社会の日蔭に潜んでそうな佇まいがリアルであり、仏頂面の宇宙飛行士を演じたマイケル・ピットは同性から見ても可愛らしい。
実生活で知り合ったら面倒臭そうだが、嫌いになれない人たちのほのかな交流が絶妙なセンスで綴られていく。フランスでは実はダサいコメディが人気だと知っているが、こういう作品を観るとフランス映画への憧れってなくならないなと思う。そして独り客を温かい気持ちにさせてくれるなんとも優しい映画である。
2022年6月27日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
街の片隅で生まれた不器用だけどハートウォーミングな交流が描かれていて、雰囲気はホントにカウリスマキでロイアンダーソン。
独創性はないけど、適度な緊張感と安心感を保ちながら気持ちよく見られる。
メインの6人の役者が絶妙に個性的なルックスをしていて、みんな役にピッタリで凄い。
2022年4月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
郊外の荒びれた公団住宅の住人たち、冴えない中年男は看護師の気を惹こうと必死、同じ階の隣人の老女優と快活な青年は世代ギャップを越えられるか、迷子の宇宙飛行士と健気に世話するアラブ系移民の老婦人の3つの偶然の出会いの物語を描いている。
劇中でピカソ団地と言っていたがタワーが無かったので別の団地でしょう、1960年代に移民用に多くの団地が作られたが1980年代以降、失業率が増加し非行化が進む移民2、3世の少年達によって犯罪が増加、団地はフランス社会から貧困で危険な地域だと見られるようになった。映画『憎しみ』(1995年)はそんな青年たちの暴動を描き社会問題にもなった。それに比べれば本作の団地は老朽化が進んだせいか穏やかに思える。
貧しく恵まれなくとも健気に生きる人たちのヒューマンコメディと言ったところなのだろうが、ルームサイクルの漕ぎ過ぎで入院とか、NASAの宇宙船のカプセルが屋上に不時着とか突飛すぎるでしょう、もっともフランス人はアメリカ人を虚仮にするのが大好きのようだから受けるプロットなのでしょう。いい年をして平気で嘘をつき、気を惹こうとする様は痛々しい。かっての栄光を忘れられない老女優というのもよくある話、いずれも取り立てて映画にするまでもないフィクション感が強く登場人物にも思い入れが出来かね、正直退屈な映画でした。