「家族という舞台」たかが世界の終わり(2016) まきさんの映画レビュー(感想・評価)
家族という舞台
ルイが主役の話、と思って観ていたら、なかなか呑み込みきれない部分も多かったですが、
「次男坊が12年間不在にしていた家族」が舞台の話、として解釈したら、切なく、痛く、愛の溢れた話になりました。
「ルイの不在を哀しみながらも生活していた家族」なら、当の本人ルイは、その舞台を乱す闖入者になる。
ルイの帰郷を張り切って迎え入れる、という役割を演じた母だが、
それまで「家族を支える」という役割を演じていた兄は、弟を素直に迎えられずに反発する。
ルイの存在をほぼ覚えてなかった妹ちゃんは、家族の舞台に巻き込まれた感じかな?
そんなルイが「これからはもっと長文かくよ!」「家においでよ」なんて言い出したから、これまで何十年と兄の役割を演じ続けていた兄は激昂。
弟を追い出すという形で、その舞台から引きずり下ろす。
ラストシーンの時計の音は、終演を告げるベルか。
度々出ていた、終わりを予感させていた兄の言葉は、余命わずかなルイの死や、「ルイが帰れば元の家族にもどる」の、どっちにもとれると感じました。
家族なのに、闖入者になるって辛いなぁ、って気持ちと、そこまでして家族の形を守ろうとしただろう、兄の気持ちを思うと壮絶でした。
「家族」という舞台だと解釈して観てみたら、気持ちを知るにはアップのシーンが頼りで、目が離せなかった。
解釈のひとつとして書き残します。
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追記
ラストシーン、目に涙を目一杯ためて怒鳴り付けるシーンは、
「こんなにおれは苦労したのに、お前はそんな見え透いた嘘で家族の関心を全部かっさらっていくのか!くやしい!さびしい!」
っていう気持ちにも見えたし、直前の、「わからないから美しく見える」
というセリフから、兄は弟に憧れてる部分がもしかしたらあって、それなのに全うなことを言い出す弟が怖くなったりもしたのかな?と思いました。
どちらにせよ、言葉が足らない兄弟は哀しい。
あと、最近知ったのですが、戯曲バージョンはルイが兄なんですね。設定変えた理由が気になる...
(20181104)