ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス : 映画評論・批評
2017年5月9日更新
2017年5月12日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー
落ちこぼれヒーローチーム試練の章!続編は泣かせと怪優ルーカー全力推しで攻める!!
ELOの名曲「ミスター・ブルー・スカイ」に合わせ、ノリノリで踊るベビー・グルートの後ろで、宇宙怪獣にボコボコに蹴散らされるピーター・クイル(クリス・プラット)たち。そんなノリノリボコボコを目にして「あ、平常運転じゃん」と安堵感に浸れるのが、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(以下:GotG)のたまらないところだ。マーベル・シネマティック・ユニバースの中でもヒーローの資質が問われる“落ちこぼれ”に見えて、しっかり“懐刀”な凄みをチラつかせる彼ら個性派集団は、今回も期待どおりの活躍を披露してくれる。
前回から3年ぶりとなる本作。アクションの増強は言わずもがな、続編としては正統的な、登場キャラたちの出自や葛藤を浮き彫りにする作りだ。特に軸となるのは、ピーターの父親をめぐるエピソード。行方知れずだった父エゴ(カート・ラッセル)が彼の前に現れ、事態を銀河規模の大混乱へと導いていく。
そんな状況においてもう一人、ピーターを育ててきた宇宙海賊ラヴェジャーズのリーダー、ヨンドゥ(マイケル・ルーカー)が深い関わりを見せ、映画は「生みの親」「育ての親」という浪花節な調べを響かせてくる。それがやがて、GotGやラヴェジャーズの絆を問う「ファミリー」といった大きなテーマを奏で、前作以上に観客を泣かせへと追いやるのだ。ファミリーって何だか「ワイルド・スピード」シリーズみたいだが、向こうに比べてこっちもドラックス(デイヴ・バウティスタ)を筆頭にハゲ率では負けちゃいない。
しかし泣けるとはいえ、そこは絶体絶命の危機でもウンコの心配をしている連中の物語だ。ググっと感動が極まるところで、登っているハシゴを蹴倒すようなギャグが挿入され、観ている側も感情のコントロールが慌ただしい。が、こうしたテイストこそが監督ジェームズ・ガンの持ち味であり、そんなカオスとカオスが合わさって調和を成すところ、他では得難い本シリーズの旨味といえるだろう。
しかし世の流れとは恐ろしい。2017年の今、ディズニーからこんなに怪優マイケル・ルーカーを全力で推す映画が生まれるなんて、いったい誰が想像しただろう? でもそれは決して間違っちゃいない。トロマを起点に悪趣味で固めたような脚本を書き続け、そのスピリットを抱えたままメジャーへと登ってきたガン監督と同様、はみ出し者が宇宙の救世主となる「GotG」魂を体現しているではないか! 自分、なんかイイこと言ってます?
(尾﨑一男)