BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント : インタビュー
英国演劇界の“巨人”マーク・ライランスが日本、そして世界に届けたい夢とは…
2016年2月のアカデミー賞で助演男優賞に輝き、ハリウッドに一躍その名をとどろかせたイギリス演劇界の“巨人”マーク・ライランス。「ブリッジ・オブ・スパイ」に続き、巨匠スティーブン・スピルバーグ監督と2作連続でタッグを組んだ新作「BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」では、子どもたちに夢を吹き込む巨人を演じた。来日したライランスが語った、日本、そして世界に届けたい夢とは……?(取材・文・写真/編集部)
スピルバーグ監督と米ウォルト・ディズニーの初コラボとなった今作は、「チャーリーとチョコレート工場」の原作者として知られる作家ロアルド・ダールの児童書「オ・ヤサシ巨人BFG」の映画化。心優しい巨人BFGと、ひとりぼっちの少女ソフィーの奇妙な友情と大きな勇気を描いたファンタジーアドベンチャーだ。身長約7メートルながら巨人としては小柄で、人間を“ニンゲンマメ”と言い間違えたりする風変わりな話し方が特徴のBFGを、ライランスがモーションキャプチャーで演じた。
ライランスの素顔は、寡黙で達観したソ連のスパイよりも、温厚で純朴な巨人に近いのかもしれない。「BFGの耳が好きなんです。虫の歌声や植物たちのささやき声など何でも聞こえますから。私にもあれくらい大きな耳があったらいいですね」と微笑み、完成した映像でCGIによる巨大な耳を見て「とてもうれしかったですね」と目を輝かせる。「女性はどうかわかりませんが、男性の耳は年齢を重ねるごとに大きくなるんです。本当ですよ。私の耳もそう。自分で伸ばしたり、夜中にクリップで引っ張ったりしていますから(笑)」と、舌が滑らかになってくると冗談も飛び出す。
現在56歳、英国で最も権威ある演劇賞のひとつローレンス・オリビエ賞を2度、海を渡りトニー賞でも3度の受賞を誇るライランスにとってモーションキャプチャーは初めての経験だったが、最先端技術に苦労した気配は微塵もない。「一番のチャレンジは、セットのサイズの違いでしょうか」。BFGが暮らす「巨人の国」を少女ソフィーの目線で描く場面では、テーブルからグラスまで特大スケールのものが用意され、ライランスは高く組まれた足場の上で演技をしたという。「私の頭にカメラを着け、下にいるスタッフがiPadをくくりつけた棒を高く掲げて行ったり来たり走るんです。それで、(ソフィー役の)ルビー(・バーンヒル)と私は画面越しにお互いの顔を見ることができます。私たちはテクノロジーを通して気持ちを通い合わせたんです。そこが難しかったですかね」。
ライランスとスピルバーグ監督の蜜月は今後も続く。アーネスト・クライン著「ゲームウォーズ」の映画化「レディ・プレイヤー・ワン(原題)」と、歴史ドラマ「The Kidnapping of Edgardo Mortara(原題)」でも顔合わせが決まっており、前者は自身のパートの撮影をすでに終えたそうだ。「スティーブンの作品でオスカーを受賞したとれたことが何よりもうれしかった」と力を込めたライランスは、3度のコラボレーションで「ストーリーそのもの、あるいはストーリーを伝える最善の方法について常に考える」姿勢に多くのことを学んだと語る。さらに、「用意周到かつ真剣、それでいて周囲の人々を励ましてくれます。楽しみながら、みんなを鼓舞し束ねているんです」と巨匠のリーダーシップに絶大な信頼を寄せた。
BFGは、「夢の国」で集めた“夢”を調合し、人間の世界へ出かけては眠っている子どもたちにステキな夢を吹き込むことを仕事にしている。もし、ライランスがBFGになって、日本に夢を届けるとしたら?
「日本だけではなく、世界中の人々に届けたい夢があります。私たちはもっと団結し、お互いに支えあうべきです。この惑星も、太陽系もどんどん変化しています。私たちは協力しなければ、生き続けることができないでしょう。ですから、人々が十人十色であることを尊重できるような夢を届けたい。お互いの相違点を認め合う心が必要です。他者を自分の枠に当てはめるのではなく、自分と対照的な人とも友だちになりましょう。私も、他の役者のお芝居に対して『あれがいいとは思わないね』なんて思っていた時期があります。でも、それはいけないことでした。“違い”は存在するものなのですから。もし、何もかもが同一だったら、それは非常におそろしいことです。これが私の伝えたい夢ですね」