ハドソン川の奇跡のレビュー・感想・評価
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不時着水の奇跡をやり遂げた機長の、キャリアに裏打ちされた瞬時の判断力を讃えたイーストウッド監督の傑作
不時着水の前例のない全員生還の、奇跡の航空機事故を多角的な視点からコンパクトにまとめ総括したルポルタージュ映画。アメリカの良心を人格化したクリント・イーストウッド監督の楷書的な映画文体の誠実さと、主演トム・ハンクスの「アポロ13」に並ぶ判断力と行動力から滲み出る正義感が一体化した模範解答の正統再現ドキュメントでも、英雄称賛のヒロイズムより瞬時における人間の最善の選択を眼目とした視点と追跡の話術が、より真実味のある感動を生んでいる。
事故翌日の朝から始まる話の展開がいい。サリー機長が見る悪夢と幻影で最悪の結果を描写し、一歩間違えれば大惨事になっていたかも知れない恐怖を理解させる。その上で搭乗から救出までの出来事を二分割にして、ひとつは不時着水の瞬間までを管制官とのやり取りをメインに墜落事故として見せて、もうひとつは救出に向かったフェリーやNY市警の活躍する緊迫した脱出劇を再現する。素人から判断すると波の高い海と違って静かな川に着水することはあり得るのではと思ってしまうが、空港に戻らず川に不時着水することが如何に無謀なことなのかが、管制官の描写で分かる。国家運輸安全委員会の事故調査委員会の追求も、その着水の選択に疑問を投げかける。全てのアルゴリズムを使用したコンピューターシミュレーションや専門家の判断は、空港に戻り滑走路に着陸できたはずと、サリー機長とジェフ副操縦士を追い込む。この取り調べや最後の公聴会が大分誇張されているというが、この厳しい客観的な視点によって、よりサリー機長の判断の正当性が立証されている映画的な語り方が素晴らしい。それを象徴するのが、公聴会で操縦室音声記録を出席者全員で聞いた後、その席を離れて廊下で会話するサリー機長とジェフ副操縦士のシーンだ。副操縦士の的確な対応に賛辞を惜しまないサリー機長の冷静さと人柄が、豊かで温かい人間性を証明する。
鳥の大群と衝突してから着水するまで僅か208秒。戦闘機の経験も含めて40年以上のキャリアを持ち尚更に多くの事故調査に精通したサリー機長でも、その衝突から最終決断までほぼ35秒かかっている。公聴会で人的要因として設定された35秒は、音声記録から出された実際の時間に合わせてあるようだ。この35秒の判断に40年の実績を注いだあるパイロットの奇跡。そして、この35秒の素晴らしさを96分でまとめた映画の簡潔さと論理的な説得力が見事。
生命より大事なものがある?
ニューヨーククイーンズのラガルディア空港から、北カロライナのシャーロット空港まで
飛ぶ飛行機、US Airways Flight 1549 の事故。Sully機長の判断でハドソン川に不時着し、百五十五人全員の命を救ったという機長の勇断を NTSB(National Transportation Safety Board)がこの飛行機はラガルディアに戻るか、テターボロー空港にいけると異論を唱え、機長の個人的判断の誤りにまで発展する。
この映画は機長と副機長が2009年に出版した体験談を元にしたものだと。Highest Dutyという本になっているが、クルーも入れて、百五十五人以上の生命を預かる二人にとって、本当に責任の重い仕事だった。咄嗟の判断力と長年の経験で、ハドソン川に無事に水着したわけだが、二人のチームワークも重要だったと思う。この自叙伝とクリント監督のこの映画によって、機長、副機長、クルーの心の負担は少しでも軽くなったと思う。それに、乗客の彼らに対する感謝は何倍にもなったろう。
この映画は専門用語で、少し難しすぎたから、シミレーションの話をしているところなどはあまり理解できていない。
、
何かに導かれたような人生の使命に感動
ドキュメンタリーと映画が見事に融合した、とても素晴らしい体験だった。
全く無駄なストーリーもないし、過剰な演出もない。
この映画に関わる全ての人にプロフェッショナルの仕事を感じた。
恥ずかしながら、普通ならこの奇跡の事故のドキュメンタリー映像の単品映画なら自分は観ようと思わなかっただろう。
しかし、トムハンクスを主演に置く映画としてつくることによって、こんなにもドキュメンタリーを観たくなる試みを打つとは!!
本当にクリントイーストウッド監督の意欲的な姿勢には自分の発想力が恥ずかしくなるほどに脱帽だし、尊敬します。
結果はわかっているのに、こんなにも冷や汗と安堵の涙を出したのは初めてです。
たったの2時間弱でこんなにも感動させてくれて本当に有り難うございました^_^
Xファクター
命を賭けて乗客を救ったのにシミュレーションで滑走路に戻れる可能性が...
クリント・イーストウッド
緊迫のコックピット
トム・ハンクスの誠実な魅力が光っている作品でした。制服姿がとても似合っていました。
パイロットのサリー(トム・ハンクス)の苦悩する様子が丁寧に描かれており、冒頭から引き込まれ、公聴会でのやり取りなど見応えが有りました。
多くの命を預かるパイロットの重責を考えると、知識、経験、冷静さ、精神的な強さが求められそうですね。
改めて大変な職業だと感じました。
NHK - BSを録画にて鑑賞
タイミング
吹替え版で視聴。
気になっていたが邦題から観るのをためらっていた…が、プライムビデオでも評価が高かったのでついに視聴。邦題はあてにならないと再々々々確認した。
これは奇跡ではなく「最善」。
タイミングが良かったことを奇跡と呼ぶのかもしれないが、機長はじめ全員が最善の行動を取ったからだということがよく分かった。
調査委員会も犯人に仕立てあげたいのではなく、何が最善かを調べることが仕事なので仕方ない。
それにしても何故この題材を映画にしたのか前から気にはなっていたが、観てみて少し分かった気がする。「英雄」は一面ではそうだが、反面では違った見え方をするもので、本作の主人公もその葛藤に苦しむ。
今回は結果が良かったからハッピーエンドだが、違った判断をしていたら正反対の烙印を押されていたかもしれない。
英雄的行為が人を英雄にするのでなく、結果が英雄にさせる。どうあっても正しいと思える自分でありたい、と思わせる映画だった。
年に一度は観たい。96分だし。
安定のトムハンクス
誰もが知っているあの事故なのに、誰も知らない驚愕の心理サスペンスが待っていたのです。このようなストーリーを、よくぞクイント・イーストウッド監督が発掘できたものだと感嘆しました。
エンジンが全部故障した航空機を、ハドソン河に不時着水させ、全乗客の命を救った事故を扱った映画です。
このできごと、「映画化は簡単でも、成功作にすることは不可能だ」と私は思っていました。
なぜなら、観客側は溢れるほどの報道や、テレビの再現ドラマなどで結果を熟知している事故だからです。
たとえ3分間の映画だとしても、手に汗握ることは不可能(結果を知っているから)であり、ましてや2時間近い映画にするなんて、ムリムリムリだと私は確信していました。
ですが、さすがはイーストウッド監督。
驚くべきシナリオを練り上げていたのです。
観客は、主人公と一体となって、結果のわからない、誰も知らなかった不条理な出来事に直面していくのです。
あれだけ多くの報道がなされていたのに、たしかにこの映画のメインテーマについては、誰も答えを知らない。
そこに向けて、主人公が苦悩し、悶絶し、誇りを失いそうになりながらも立ち続けるところ、観客もまた一体となって、苦悩を追体験し、悶絶を追体験し、そして人間の本質とは何か、深く自問自答することを迫られるのです。
熟練の映画監督の腕としか言えません。
よくぞ、このようなシナリオを練り上げたものだと感嘆しました。
再度繰り返します。
驚くべき着眼点、驚くべきシナリオ。
これぞ映画というべき、素晴らしい作品でした。
無数の飛行機が飛んでいる現代の話
実話の効能
人だからかかる時間、できる判断
真摯で抑制のきいたストーリーで学びが得られる形にしていただいたことに感謝したいです。Preparation is everything. 奇跡といわれる出来事の背景にはそこに至るまでの経験と学習、周囲への愛と敬意、日々の基本を疎かにしない行動が大切なんだと感じました。
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