ハドソン川の奇跡のレビュー・感想・評価
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事故のその後と真実
奇跡の生還ドラマかと思っていたのですがそれだけでは無く、そこから始まる疑惑と追い詰められながらも冷静に真実を見極めていこうとする機長の人間ドラマに惹きつけられました。
英雄と讃えられながらも、国家運輸安全委員会の指摘により狂い始める機長の運命。40年にも及ぶキャリアも崩れ去ろうとしていく。家庭だけでなく、仕事に対する自信や誇りまでもが揺らいでいく様子に胸が締め付けられそうでした。
コンピューターによるシミュレーション結果では空港への帰還は可能だったとか、エンジンは動いていたとか、不利な結果を突きつけられる。精神的に追い詰められながらも最後まで諦めなかった機長。公聴会での冷静な指摘、お見事でした。と、同時に事故のデータ分析で、“人的要因”という重要な要素を見落としたまま調査していたという事実も驚きでした。エンジンの方も、後で現物を確認したら破損していました。コンピューターに頼り過ぎた誤った調査により、誰かの人生が狂わされていたのかもしれないと思うとゾッとします。
英雄から一転、容疑者へ。簡単に人生を狂わされていく様子に悔しい思いもしましたが、追い詰められた時、自分を守れるのはやはり自分だけなのだなと思いました。揺らぐ思いの中、自分を見失わず最後まで闘い続けた機長の姿に勇気づけられました。
本当のヒーローは〜〜
《お知らせ》
「星のナターシャ」です。
うっかり、自分のアカウントにログインできない状態にしていまいました。(バカ)
前のアカウントの削除や取り消しもできないので、
これからは「星のナターシャnova」
以前の投稿をポチポチ転記しますのでよろしくお願いいたします。
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誰もが知っている出来事を単なるパニック映画にせず
その後の機長「サリー」に訪れたドラマを
丁寧に描いた何と言う大人なそして秀逸なドラマ。
飛行機のシーンも、殊更に英雄的な面や
事故の恐怖を煽るのではなく
淡々と、1人1人が自分のするべき事を全うしようとしていて
きっと実際のプロはこんな感じかもしれないなあ〜〜と
思わせる様な控えた描写が
「サリー」にある事実をもたらされた時に大きな感動を呼ぶ。
日本で言う、事故調査委員会のような組織の人々も
今回は損な役回りでは有るけど、
彼らもまた、プロである以上は厳しい質問もするだろうし、
プロとプロとのぶつかり合いが物語をグイグイとラストへ
引っ張ってくれる。
そんな中で
ニューヨークの一般市民の1人が「サリー」に有る言葉を告げる。
あなたは155人の乗客乗員だけで無く
飛行機の記憶 9.11のあの深い悲惨な絶望から
「ニューヨーク」の人々を丸ごと救ったのだ!と。
こんなに中身の濃い作品をサクッと96分で
仕上げてしまうクリント・イーストウッドの潔さ!!
流石、プロ中のプロだな〜〜
良い映画観たな〜〜!と思いたい人に是非お勧めです!!
エンドロールは最後まで観てね!!
真摯であり続けること
"土曜プレミアム" で鑑賞。
実際の映像は当時のニュースで何度も観ました。
奇跡の不時着の後、このようなことが起こっていたとは。
事実はフィクションよりも奇なり。
パイロットとしての経験と冷静な状況判断でハドソン川への不時着を決めたサレンバーガー氏でしたが、国家運輸安全委員会はその判断が誤りだったのではないかと執拗に追求。
事故調のメンバーは書類やコンピュータによるシミュレーション結果を元に、「ああだったのではないか?」「こうだったのではないか?」と後からなんとでも言えるような事柄を並び立てて来ました。サレンバーガー氏は苦悩を深めるばかり。
保険会社の意向が働いていたことは確実です。
乗員乗客全員が生還したにも関わらず、何故ここまで責められないといけないのか。サレンバーガー氏の長年の経験まで否定するような訊問に怒りすら覚えました。
これが事故調査だと言われればそれまでかもしれませんが、事故調の面々に「じゃあそこまで言うんやったら、あんたがやってみろよ」と言ってやりたくなりました。
事故当日のシーンが何度も形を変えて描かれ、サレンバーガー氏自身が何度も事故について検証していました。あの判断は本当に正しかったのか。空港に緊急着陸することが出来たのではないか。繰り返される自問自答。
苦悩の果て、公聴会での逆転劇で溜飲が下がりましたが、自分の成すべきことを責任持って全うし、周囲だけでなく己自身にも真摯に向き合い続け、誠実であろうとしたサレンバーガー氏の勝利を心から讃えたくなりました。
※修正(2024/03/31)
事故の裏に隠された衝撃!商法(詐⚫)
映画説明の抜粋↓
「奇跡と称賛された史上最大の航空機事故に隠された、衝撃の実話を本編ノーカットで地上波放送!」
観た人にしか分からない商法です。
どこのテレビ局か予想してみてください。大体の人は当たります。内容はとにかく引っ張ってるだけです。
そして、残念なことに映画監督も引っ張りすぎて(機長の戦闘機回想シーンのインサートは脈絡がなく特に酷く)話の整合性が取れなくなり後半急いで詰め込みやっつけ仕事になっています。
その証拠に、公聴会で尋問している女性のキャラが、かなり狂っています。(シミュレーション何回したか人的要因があると機長に指摘されてしぶしぶ35秒待機したシミュレーションをして全パターンのフライト失敗して、やられたって顔して、次に用意していた機内音声を公聴会の全員で聴いた後、精査した人達が集まっているはずの会場は静まりかえり、個人的感想ですがシミュレーションしていて機長がいたからこそ乗客乗員は救かったと思っていたと称えます。)
不自然に尋問中に左エンジンが発見され、状態が精査されないまま現場スタッフの見立てのまま伝えられます。実話と言いつつ盛ってます。
映画ワクワクでみた人は、時間返せと思うでしょう。(ただ、下調べを少しした人ならパッケージの段階で変だと気付くでしょう。感動物でもなければ乗客乗員の絆も感じられない暗めの写真で沈みかけの飛行機でハイポーズ空に機長どーんですから。で、雲で隠すように引っ張りサブタイトルを書くと。)
あわや大惨事をどう捉えるか。
イーストウッド監督の作品が大好きだ。
本作も、どの観点で見るかで感想が変わる題材がモチーフ。
NYで離陸後すぐにバードストライクに直面し、NY上空からの落下を短い時間の中で判断してハドソン川に着水し、155名全員の命が助かったサレンバーガー機長の判断を、事故調査委員会はミスや過失がなかったか追求していく。
それと共に、42年間飛んできた経験に、自惚れがあったのではないか、何かが間違っていたのかもしれない、と自問自答していくサレンバーガー機長。
無事着水し全員の無事を確認できたから良いようなものの、そもそも155名の命を危険に晒してしまったのも確かであるし、川に着水という大きなリスクを取ったのも確か。自身の中では最善を尽くしたが、もしかしたら乗客誰かが命を落としていたかも、もしかしたらNYの街中に飛行機が暴走墜落し多くの命を奪っていたかも、あらゆる紙一重だった危険性にうなされ、追い詰められていく。
周りやマスコミ、会う人皆が奇跡だと称えてくれているだけに、機長本人の感想とは乖離が大きく、賞賛に値する行動だったのか、困惑混乱し、また囲んで詰め寄るマスコミに家族も頭を悩ませる。
培ってきた経験や感覚を、208秒の中での判断で発揮したことが、人為的な奇跡なのか、自惚れによる人為的なミスになるのか、難しい判断だが、最後には引き揚げられた壊れたエンジンがサレンバーガー機長の証言を証明し、データやコンピュータが実際の現実とはかけ離れたり想像であると知らしめてくれた。
ただし、演者がトムハンクスな時点で、もう機長そのものが、何をしていてもベストを尽くしているように見えてしまうのがデメリット。駆け出しの副業の会社のサイトが実際より大きく見せているという会話があっても、胡散臭い機長なのかな、という印象には全然ならなかった。もっと善悪どちらにも見えるようなキャストにすれば、もっと見ている側はどちらを信じるべきかを客観的に見られたと思う。飛行機事故調査が題材の他の作品、フライトの方が、個人的には考えさせられた。
でも、作中、「ここ何年かの中でNYに良いニュースがもたらされた、特に飛行機関連では」という台詞があり、その感覚がNY市民のこの着水事故の見方にも、サレンバーガー本人にも大きく影響しているのを感じる。だからこそ事故が題材でありながら、全体を安心して見られるようにという、イーストウッド監督の配慮とトムハンクス主演の効果なのかもしれない。
かつ、サレンバーガー機長が、あわや街に突っ込んでいたらと最悪の事態の想像に襲われる描写は、死者が出なかった結末でこそ奇跡と称えられているが、再びNY市民が9.11のトラウマを思い起こさせられ、多数の犠牲者と深い悲しみに襲われていた可能性を示唆する。
機長が責任感のある人物で、確認も怠っていないこと、副操縦士がハンドブックと照らし合わせながら臨機応変に設備スイッチを操作し機長と連携していること、CA達が最善を乗客に尽くし、注意を怠っていないこと、クルー全員が落ち着いていることがしっかりと描かれていて、実際の方々の名誉を傷つけていないところは良かった。
ただし実際は、操縦官はありえない量の機器チェックリストをこなすようで、イーストウッド本人もご高齢になってきているし、老人でもわかりやすいような内容に落とし込んだと感じた。
余計な発言をせず思慮深いが必要な発言だけし、管制塔とやりとりをしながらも情報を適宜取捨選択し不時着に集中する機長と、操縦交換後はサポートに徹して、目で見て経験したことをもとに機長は正しかったと寄り添い、たまにポロッと面白く場を和ませる副操縦士。名コンビだ。副操縦士役の俳優さんはエリンブロコビッチでシングルマザーのジュリアロバーツをサポートする相手役だった。とても良い配役だと感じた。
【実話】乗客155名全員の命を救出
バードストライクにより、エンジンが故障
その状況の中でハドソン川に着水着陸
機長の冷静な判断により、
乗客155名の命を救った実話物語
勿論、副機長との連携も素晴らしかった
シミュレーションで副機長の発言
「次は暖かい日に」がウケた
エンドロールでは実際の当時の機長たちと
乗客が集まり、再会を祝っていた
飛行機には何度乗っても怖いですが、
時間かかっても新幹線にしようと思った
フライトを連想したが
クリント・イーストウッド作品は、後味の悪い映画が多い。この映画も最後に裏切られるのではないかと心配していた。例えば、機長の体内からアルコールが検出されて、英雄から犯罪者になってしまうとか。それじゃあ、「フライト」と同じになってしまうか。
結局、機長の主張する通りタイミングがポイントとなり、35秒経過後のシュミレーションでは近くの飛行場には無事に着陸できなかったことが証明され、機長のハドソン川着水の判断が正しかったことが証明されるシーンは圧巻で、感動的なエンディングだった。久しぶりにクリント・イーストウッド作品では感動してしまった。
感度!
本当にあった有名な事実に基づく映画。
ハドソン川に着水した機長、副機長が目立ちたかっただけではとマスコミ、事故調査委員会からの追及。
シュミレーターを使った近隣の空港まで誘導し、着陸できたのでは?疑われる。
しかし、すべてのシュミレーションでは、結局着陸が無理だったとの結論。
調査委員は、結局褒め称える事に。
飛行機の操縦士が想定出来ないシュミレーションでは経験のない川への着水なんて神業をこなした機長はみんなのおかげと謙遜する。感度したわ!
思っていたより薄い
6月3日@Netflix
Netflixを徘徊していたところを発見。
保護して、視聴しました。
最近若いころのトムの映画ばかり見ていたので、急に老けたなぁと思いました。
老けていてもトムは好きな俳優です。
この映画はハドソン川に不時着したパイロットのヒューマンエラーを問うた映画でした。
最後はしごくまともというかあっけない結果でした。
この映画のメインはトム演じるサリーが無実を勝ち取ることではなく、それまでの不安や葛藤、苦悩などの過程を見せたいようでした。
ただ、観ている側としては、ハドソン川の奇跡をとりあえず大急ぎで映画にしてみました感が強く、中身は薄いなと感じました。
本作は航空機事故の映画です しかし本当は人間の判断を機械的に管理する怖さを告発してもいるのです
昔、飛行機で出張ばかりしていた時期がありました
ふと気がつけば、CAでもないのに一週間連続で毎日飛行機に乗り続けていたこともあります
序盤の走って飛び乗る三人組みたいなことも二度三度(汗)
ジャンプイン!とトランシーバーで叫ばれて羽田空港をグランドサービスのお姉さんと全力疾走したことを思い出しました
機内に入った途端にドアが閉められて、飛行機が動き出したこともありました
満員の乗客の白い目が痛かった
それだけ飛行機に乗っていると、色々怖いことも何度か経験しました
事故にはならないささいなことです
だからニュースにもならない
ごく小さなこと
CAさんや、空港のグランドサービスさん同士が、小声で何か言い交わして不安そうな表情を一瞬見せてすぐに笑顔に戻るようなこと
でもそれが大事故の一歩手前だったのかも知れなかったのではと生々しく思い出されました
機長、副操縦士の的確な判断、CAさん達、グランド、整備などの大勢のスタッフの献身によって、自分は何事も無くこうして本作を観ることが出来ているのだと改めて思われました
もしかしたら本作のパニック寸前の機内の乗客のような体験をしたかも知れなかったのです
本作の事故は2009年のこと
2001年の911の大惨事の記憶がまだ生々しく残っていた頃です
福知山線の脱線事故は2005年のこと
本作は機長が乗客を救い
福知山線の事故では運転士が100名以上の乗客の命を奪いました
命を預かる仕事の怖さ、重さ
そしてそれを毎日毎日、機械ではない一人の人間が果たしていく
管理する側が人間を機械とみなした時、本作のように英雄を犯罪者のように扱い
そして、人間を機械のようにスケジュールに縛りつけようとした管理をしたとき鉄道事故は起きたのです
ほんの少し、僅か数秒
それが人命にかかわる仕事の人間の重圧
パイロットでなくても、鉄道の運転士でなくとも、あなたの扱うシステムのファイルのたった一文字の間違いで、そら恐ろしいトラブルが起きるかも知れません
そんな時代なのです
だから管理も厳重になり、機械が誤りがないかを管理しているのです
いまならAI が機長の判断は誤っていると言い出すかも知れません
あなたの判断が間違っているとAI が言ってくるかも知れません
本作は航空機事故の映画です
しかし本当は人間の判断を機械的に管理する怖さを告発してもいるのです
本物のエアバスを使い、エキストラにも本人さんが本人役で登場したりしているそうです
特に機内のシーンは迫真でした
映画化されて残すべき史実
劇場で観る機会がなくDVDを借りて観た。
映画館で観る迫力には及ばないが、映画にはない家族や関係者のインタビュー、事故にまつわる一変した人生を生の声で聞くと、”英雄”と呼ばれることの苦労もあるんだなぁと思えてくる。
彼とその家族は、こうなりたいと思って生きてきたわけではないのだが、誠実に生きてきたからこそ、アクシデントにも対応できたことで、感謝され賞賛もされたわけで、胸を張って生きてほしい。
今思うのは、本人たちが今も幸せに生きていること、ただそれだけをお祈りしたい。
この飛行機映画が伝えたいものとは?
『ハドソン川の奇跡』は、クリントイーストウッド監督にしては、上映時間も非常に短く、内容もシンプルなものだ。
バードストライクによって両エンジンが停止した飛行機を、ハドソン川に緊急着陸させ155名の人命を救ったサレンバーガー(通称:サリー)機長。
奇跡を起こした「英雄」とされながらも、事故のPTSDに悩み、メディアや国民からの過度の注目に困惑する。
さらには、NTSB(国家運輸安全委員会)から「飛行機は近くの空港まで戻れたのではないか、飛行機は無駄になったのではないか」と尋問され、まるで容疑者のような扱いを受けるサリー。
彼の心理描写を、回想を交えながら丹念に描いたのが本作だ。
この映画を観て、何を感じるかは人それぞれだが、監督が伝えようとしたもの、それは「人間らしさ」だろう。
クライマックスとも言えるシーンで、主人公サリーがこう語る。
“If you’re looking for human error, make it human.”(「ヒューマンエラーを見つけたいのなら、そのやり方もヒューマン(人間らしさ)を忘れないでくれ。」)
データやシュミレーションだけでは判明しなかったことが明らかになる、本映画の肝となるシーン。
ここに、クリント・イーストウッド監督が伝えたかったことがあると思う。
本編直後に挿入される「実際の」サリー機長や家族、乗客などのドキュメンタリーもおもしろいのでぜひ観ていただきたい。
そこにもさまざまな「人間らしさ」を感じられるだろう。
うん、
そこまで感動とか好きになれる作品でもなかったけど、話もわかったしよかったと思う。
回想なのか悪夢なのか行ったり来たりの流れがうっとうしくも感じたし、事故そのものや救出のところはそこまで時間を割いているでもなくあっけなく感じもした。
公聴会?とかのやりとりでは、お役所というかそういう機関ならではの堅さ、理解のなさに「そこがメインのテーマなのか?」とも思ったけど、まあ、そこもシミュレーションのくだりとかもサクサク進んでうっとうしく感じるほどでもなかった。
終わりもあっけないかんじではあったけど、それでも時間が短く感じたということはそれだけ見入ってた、ということなのかもしれない。
好きなトム・ハンクスが出てるやつで、以前から見たいと思っててようやく見られてよかった(笑)
タイトルなし
無事着水するのがラストかと思いきや、着水に至る判断が正しかったのか、調査委員会からの指摘に苛まされるトム・ハンクス機長のストーリー。実話だけに、少し無理に引き延ばそうとしている感が、ありました。
不時着水の奇跡をやり遂げた機長の、キャリアに裏打ちされた瞬時の判断力を讃えたイーストウッド監督の傑作
不時着水の前例のない全員生還の、奇跡の航空機事故を多角的な視点からコンパクトにまとめ総括したルポルタージュ映画。アメリカの良心を人格化したクリント・イーストウッド監督の楷書的な映画文体の誠実さと、主演トム・ハンクスの「アポロ13」に並ぶ判断力と行動力から滲み出る正義感が一体化した模範解答の正統再現ドキュメントでも、英雄称賛のヒロイズムより瞬時における人間の最善の選択を眼目とした視点と追跡の話術が、より真実味のある感動を生んでいる。
事故翌日の朝から始まる話の展開がいい。サリー機長が見る悪夢と幻影で最悪の結果を描写し、一歩間違えれば大惨事になっていたかも知れない恐怖を理解させる。その上で搭乗から救出までの出来事を二分割にして、ひとつは不時着水の瞬間までを管制官とのやり取りをメインに墜落事故として見せて、もうひとつは救出に向かったフェリーやNY市警の活躍する緊迫した脱出劇を再現する。素人から判断すると波の高い海と違って静かな川に着水することはあり得るのではと思ってしまうが、空港に戻らず川に不時着水することが如何に無謀なことなのかが、管制官の描写で分かる。国家運輸安全委員会の事故調査委員会の追求も、その着水の選択に疑問を投げかける。全てのアルゴリズムを使用したコンピューターシミュレーションや専門家の判断は、空港に戻り滑走路に着陸できたはずと、サリー機長とジェフ副操縦士を追い込む。この取り調べや最後の公聴会が大分誇張されているというが、この厳しい客観的な視点によって、よりサリー機長の判断の正当性が立証されている映画的な語り方が素晴らしい。それを象徴するのが、公聴会で操縦室音声記録を出席者全員で聞いた後、その席を離れて廊下で会話するサリー機長とジェフ副操縦士のシーンだ。副操縦士の的確な対応に賛辞を惜しまないサリー機長の冷静さと人柄が、豊かで温かい人間性を証明する。
鳥の大群と衝突してから着水するまで僅か208秒。戦闘機の経験も含めて40年以上のキャリアを持ち尚更に多くの事故調査に精通したサリー機長でも、その衝突から最終決断までほぼ35秒かかっている。公聴会で人的要因として設定された35秒は、音声記録から出された実際の時間に合わせてあるようだ。この35秒の判断に40年の実績を注いだあるパイロットの奇跡。そして、この35秒の素晴らしさを96分でまとめた映画の簡潔さと論理的な説得力が見事。
全488件中、41~60件目を表示