「「何処かで観た」が多すぎるのが残念。」アクアマン kobayandayoさんの映画レビュー(感想・評価)
「何処かで観た」が多すぎるのが残念。
2019年3月1日の夜に新宿バルト9のスクリーン4にて、2D字幕版を鑑賞。
2013年の『マン・オブ・スティール』から始まったDCコミックス原作のヒーロー・シリーズ“DCエクステンテンデッド・ユニヴァース(DCEU)”の最新作が水陸両用の戦士として『ジャスティス・リーグ』でも大活躍した“アクアマン”の単独作である本作で、このシリーズのファンとして、期待せずにはいられない一作として観てきました。
海底王国のアトランティスの女王(ニコール・キッドマン)と人間の灯台守の男性(テムエラ・モリソン)を両親に持つ男アーサー(ジェイソン・モモア)はヒーロー集団“ジャスティス・リーグ”の一員としてステッペンウルフを倒したあとも、海で人助けに励む日々を送っていたが、ある日、アトランティスで起こっていた陰謀を阻止するために戦いへ赴く事になる(あらすじ)。
マーヴェルの『アヴェンジャーズ』シリーズとは違って、興行的にも、内容的にも成功作が少なく、念願の『ジャスティス・リーグ』さえも奮わず、『フラッシュ』や『バットマン』の単独作の企画が迷走し、あまり良い知らせと結果の無いDCEUですが、本作は成功したとの事で、やっと喜ばしい知らせを持った作品が現れたということもあり、劇場で観られるのを待っていました。自分にとって、大満足と言える作品では無かったのですが、観る価値があり、2Dではなく3Dで観られなかったのは残念(予定が他にあったので、3Dで観る時間が無く、このシリーズは『スーサイド・スクワッド』を除き、全て3Dで観てきたので、今回もそれで観るのが理想)に思っています。
DCEUは常に大胆さに溢れ、一本で三作分ぐらいに感じられるスケールで楽しませてくれるところを気に入っていて、そこが本作でも健在で、出演者の面にも表れています。DC作品には『バットマン・フォーエヴァー』以来の出演となるニコール・キッドマン、当初はDCEUの第一弾となる筈だった『グリーン・ランタン』に出ていたテムエラ・モリソン(『スター・ウォーズ エピソード2&3』のジャンゴおよびクローン・トルーパー役で有名ですが、それ以前にダークホース原作の『バーブ・ワイヤー』で主要キャラに扮していただけに、所縁のある感じが半端無い)、『スパイダーマン(ライミ版)』が懐かしいウィレム・デフォー、『ウォッチメン』のパトリック・ウィルソンといったコミック原作映画が初めてじゃない面々に加え、まさか今の時代の大作で目に出来るとは思いもしなかったドルフ・ラングレンの姿に驚き、主演のジェイソン・モモア(『コナン・ザ・バーバリアン』に主演していたので、彼もコミック原作モノに所縁のある一人)とアンバー・ハードのB級な俳優たちで固められたところが新鮮で、ヒーロー映画なのに旬な若手ではなく、中堅以上な人たちが揃った部分で挑戦(しかも全員に華があり、誰一人として不要に感じたり、空気になっていない)しているのがスゴいと思います。
出演者は良いのに、他に驚ける点はありませんでした。これまで、このシリーズにおいては鑑賞前に不安を抱くことが殆ど無く、抱いたとしても、それは本編が始まった直後に抱いたことを忘れるぐらいに小さなものだったのですが、今回はジェームズ・ワン監督の作品で、出世作の『SAW』や『デッド・サイレンス』は好きなのですが『死霊館』以降の作品は好きではなく、ワン監督の初の大作となった『ワイルド・スピード スカイ・ミッション』はつまらなかった(好きな方、ごめんなさい)ので、今回、その点で不安が大きく、過度な期待は禁物と思い、ネットに解禁となった映像は殆ど観ないようにして、情報を入れずに観たのですが、それでも楽しめた部分(話についていけなかったといった事ではございません)が少なく、不安が的中しました。
現在の大作は映像表現が大抵、似通っていて、「これ、何処かで見た」と思うことが少なくなく、このシリーズにおいても『バットマンVSスーパーマン』の“ドゥームズ・デイ”が『アメイジング・スパイダーマン』の“リザード”に似ていたという事がありましたが、本作も、その類いから脱する事が出来ておらず、殆どが見たことのあるシーンのオンパレードとなっており、アトランティスは『スター・ウォーズ 新三部作』の惑星ナブーの水中都市やカミーノのクローン製造工場区画にそっくり、他にも『ハムナプトラ』や『フィフス・エレメント』のような描写、敵の一人のブラックマンタのコスチュームは『G.Iジョー』の装甲スーツに『アントマン』のマスクを足したような感じ、アーサーのアトランティスからの脱出の件は『トロン・レガシー』、メラ(アンバー・ハード)の技の繰り出し方は『アヴェンジャーズ』のスカーレット・ウィッチのようだし、シチリアでメラを追ってくる敵が家のベランダを移動するというのは『ボーン・アルティメイタム』以降、色んな作品で使われた要素で、そこに神話の世界があるために、更にそのパターンが強まり、ワン監督の『ワイルド・スピード スカイ・ミッション』でつまらないと感じた部分が本作でも悪い意味で健在(メラが屋根を逃げる件は“ワイルド・スピード”オマージュと言えて、それは悪くない)なので、斬新なモノを生み出せないという点で、彼にメガホンを託したのは間違いだったのではないかと思います。これによって、DC作品には殆ど参加していない“ILM”のVFXも無意味となった印象しか抱けません。
良い点を挙げるならば、『ジャスティス・リーグ』の後日譚として展開しているところで、失敗作と言われていて、ワーナーとDCの方針として、「ユニヴァースは意識しない」という風になってきているので、『ジャスティス・リーグ』以前の話として始まって、それを無かったことにして、軌道修正を図る可能性もあり得そうなので、そうなってなかったのはシリーズのファンとして嬉しい部分です。この点は今後に控える『シャザム』、『バーズ・オブ・プレイ』等でも無かったことにされない事を願っています。
『ジャスティス・リーグ』が公開されてから、1年2ヶ月の間にDC作品が公開されていなかったので、本作に満足できなくても、観られたことを喜んでいます。本シリーズの今後の作品、それに作られる可能性が高い本作の続編では満足できるモノになるのを信じて、期待したいです。なので、悪い作品ではありません。