海よりもまだ深くのレビュー・感想・評価
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覚えてるよ、忘れないよ。
派手な映像や二転三転するシナリオで惹き付ける映画
というのも当然好きなのだけど、映像も物語もシンプル
なのにスクリーンに釘付けにされる映画ってのが
世の中にはある訳で、それって大予算組んで制作
された映画よりも物凄い事かも知れないと時折思う訳で。
本作もそんな映画。
巨大宇宙船がアメリカ東海岸全域を破壊している間、
こちらはカチカチに凍ったカルピスシャーベットを
スプーンで砕く事に苦心してるてな具合のスケール感。
昨年の同監督作『海街diary』もハデな映画とは
到底言い難いが、本作はさらに小規模だ。
にもかかわらず、上映中こちらの目は釘付けにされてしまう。
それは何故かと考えたら、この映画に登場する人々に
シンパシーを抱かずにはいられないからだと思う。
彼等の行き先が気になってしようがないからだと思う。
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「どうしてこうなっちゃったんだろう?」
色んな人物がそう口にした。
大人になった自分は、もっと立派な人間に、
もっと良い人間になってると思ったのに。
大きな夢を抱く事は誰でも出来るけど、
それを実現できるのはほんの一握り。
大成する人は才能だけでなく、日々の努力を
惜しまぬ精神と運とを兼ね備えた人だったりする。
主人公リョウタのように多少の才能があってもうまく
いかないし、大抵の人はそんな才能すら与えられない。
モーツァルトになれずとも毎日努力さえすれば
サリエリくらいにまでにはなれるかもだが、
『1日1日を大切に』だなんて啓蒙じみた言葉を
何百何千回と聞いてきても、リョウタと同様、
やっぱり流されるままに生きてる日常。
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だがそのことをそんなに深刻に考えなくても、
これこうして僕らは生きている。むしろリョウタの
母のように、下手に執着し過ぎないから生きられる。
「あたしは海よりも深く人を愛したことなんか
ないけどさ、それでも楽しく生きていけるのよ」
そう語った彼女の言葉は真を突いていると思う。
“愛してる”だなんて、そんな大袈裟に言うものでも
思うものでもないのかも知れないし、始終そんな
重い心を抱えていたら、自分が生きてゆけなくなる。
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だけど、
あの母でさえも“楽しく生きて”見えない時があった。
どうしてこんなことになっちゃったのかね?と、
息子の嫁に声を震わせながら語ったあの瞬間だ。
ふだん忘れていても、“愛してる”という気持ちは、
ちょうど塗り重ねられた油絵の具のように、
時々ふっとその顔を覗かせる。
息子の離婚に心を痛める母、
息子の本をほうぼうに自慢していた亡き父、
本の話の時だけほんの僅かに表情の和らぐ妻、
そして、現在進行形で息子を愛するリョウタ。
公園の大ダコ。あの大ダコはあの夜、海の底にいたのだろう。
深さを測れる方法は無いけど、リョウタは息子を深く愛してる。
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けど、ごく当たり前の話、人間はいつか消える。
どれだけ大事に想っていた、大事に想われていたと、
後から気付こうが気付くまいが、人は消える。
もうすぐ私は死ぬだろう。
そんな言葉を、いつも冗談ばかり言っている
親から聞くと、何だかドキッとしてしまう。
それで笑って誤魔化す。バカなこと言うなよと。
当たり前に思えるものが信じられないほどあっさりと
消えてしまう事を、頭の中では誰もが理解している。
だが、それを本気で考える事は無意識に避けてしまう。
だって、それってものすごく怖い事だから。
それでも時にはその事実を痛感させられる時があるのだ。
当たり前のように思っていたものが、自分の前から
消えかけてしまっていることに気付く瞬間があるのだ。
終盤、階上から手を振る母の姿に、目が潤むのは何故だろう。
並んで去っていく妻と子の姿を見つめ続けるのは何故だろう。
この瞬間を目に焼き付けねばと強く願うのは何故だろう。
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日々の生活に流されながらも、
「これは忘れてはいけない瞬間だ」と気付く時がある。
それなら、メモでも何でもいい。心に留めておかなくては。
覚えてるよ、忘れないよ。
優しいエンドロールの歌声に、
僕の覚えている事は、忘れたくない事は、
一体何だろうかと考える。
<2016.05.21鑑賞>
どこで人生狂ったのか…
死から始まる物語、終わりは無い
「こんなはずじゃなかった・・・」迷える大人達が織り成す、家族の愛情物語。
【賛否両論チェック】
賛:自堕落で過去に未練たっぷりな主人公が、元妻や息子との時間を通して、少しずつお互いに未来を見て歩み出そうとして行く姿が印象的。静かなストーリーの中で紡がれていく、様々な形の“愛情物語”にも、深く考えさせられる。
否:特に大きな事件が起きるわけではなく、かなり淡々とした展開なので、興味がないと眠くなりそう。
幼い頃に描いた理想とは違い、不本意な人生を送りながら、
「こんなはずじゃなかった・・・」
と嘆く主人公達。そんな彼らが、久しぶりの邂逅に想いを馳せながら、少しずつ新しい一歩へ考えが変わっていく様子が、淡々とした雰囲気の中で描かれていきます。
展開は極めて静かですが、そこでは決して絶えることのない「親子の愛」や、壊れてしまってもどこかで残っている「夫婦の愛」、そして形を変えて繋がっていく「家族の愛」と、様々な“愛”がしっかりと息づいています。中村ゆりさん演じる興信所のナツミが語る、
「女の恋愛は、水彩画ではなくて油絵みたいなもの。上塗りするから下の絵は見えなくなるけど、ちゃんと残っている。」
という言葉や、真木よう子さん演じる響子が語る、
「愛だけじゃ生きられないの、大人は。」
といった言葉に、その端々が感じられるようです。そして息子の真悟の、
「宝くじが当たったら、また一緒に暮らせるかな・・・?」
というセリフは、健気すぎて泣けてしまいます(笑)。
思わずクスッと笑ってしまうような軽快なやり取りも満載です。ちょっと道に迷った大人の皆様に、是非オススメの作品です。
性善説映画
全員良いこと言わせようとしすぎじゃないですかね。
のっけからずっと穏やかに進んでいく感じはもう是枝作品といった感じで期待を裏切りません。
その上で、樹木希林さんの素晴らしい演技により
クスッと笑えるポイントが点在しています。
これにより、緩やかな(もとい退屈になりかねない)日常会話での会話劇にメリハリがうまれ
楽しく観続けられるようになっていました。
しかし、全員が正論なんですよ…
もうね、こんなこと言う人いるの?っていう
なんならちょっと台風以降の展開とか、気持ち悪いくらい優等生
樹木希林さんの、本作中でも1番の名言であろうかのシーンは
前後のやり取りが長すぎて割と飽きます。
台風の中、親子3人で走り回るシーン
そして翌朝の、駅まで一緒にいくシーン
離婚した夫婦がそんなに一夜で打ち解けるんでしょうか…
俳優陣の演技に助けられてなんとか自然に観れますが
監督の主張が前面に出ているなというのが、観終わったあとの感想でした。
とてもよかった
あまり楽しめなかった
良かった
期待が大きすぎたかな
頑張って生きなきゃ!
愛すべきダメ男の日常とその先
ほんとに何も起きないと言ったら起きない。台風という一つの気象がほんの少しだけ、主人公と家族を吹き抜けて何かが変わりそうな予感だけして、日常に収斂していく…だけの映画。でもそれが良いのだと思う。
観に行った日はご年配のカップルが多く、団地や家族の中のあるあるエピソードで笑いがたえず、キャストの自然な演技に終始くつろいだ雰囲気に満ちていた。
オープニングのモチーフが後半で出てきたり、物語の組み立ては気持ちよく進む。サイドで進む一件関係なさそうなエピソードも、他の場面に活かされていく。きちんと物語として成り立っている。かと言ってあざとさはなく、味わいはあくまで一筆書きのよう。
そういった意味でも、海街diaryとセットで語られるべき作品、という印象だが、あちらは初の漫画原作、本作は是枝監督オリジナル。監督はこういう私小説的な作品が今の気分なのだろうか。(実のところ海街より先の撮影だったという噂も聞く)
最後に、全体をこれまたさりげなく包み込むハナレグミの音楽、主題歌も沁みます(^^)
優しい映画
海街に比べて話題になってない気がしたんですが、配給が東宝+ギャガからギャガだけになったからでしょうか。
個人的には、刺さった!って感じではなかったですが、海街よりも楽しめました。
昔、地元の小さな映画祭で、ゴザを敷いた公民館で小津安二郎を観た時に、地元のおじちゃんおばちゃんが声を出して笑って観てて、小津映画ってこんなに笑えるんだ!とびっくりしたことがあったんですが、この映画も年配の方が多く、みなさん声を出して笑って観てらして、その時の小津映画の雰囲気を思い出しました。
メインの家族の話もよかったですが、池松壮亮がなぜあそこまでダメな阿部ちゃんに優しいのか、どんな借りがあるのかとか、一瞬だけ出てきた橋爪功の娘とか、物語のはしばしに別の物語が想像できて、もっと見ていたくなりました。
みんな、それぞれに思惑や後悔はあっても、それぞれを大切に思っている、優しい映画だと感じました。
それにしても、別れた夫婦での人生ゲーム、気まずいだろうなあ……(笑)
人間臭い
こんな大人だけど。
ローマ人にも山男にもダメ男にもなれる阿部ちゃんの^^;
良多シリーズ第3弾は更にいっそうダメ男になっている。
別れた妻子に未練タラタラの割に息子の養育費も払わず、
妻の男に嫉妬、有金ギャンブル、困ると老母の懐を弄る、
一体お前は幾つなんだ!?とほざきたくもなるロクデナシ
の団地サイズに納まりきれない阿部ちゃんがそこにいる。
この台所で凍ったカルピスアイスを差し出してラジオを
抱える母親がピッタリ寄り添い、どんなロクデナシでも
私には可愛くてたまらない息子なのよと訴えかけてくる。
高度成長期にガンガン建ち並んだ公団も今では独居老人
の住処扱いになり、シャッター通り商店街もお馴染みだ。
なりたい大人になれないし住みたい住まいにも住めない。
母親の嘆きがホンワカした嫌味にしか聞こえず、その夫
がまるで同じような性格だったことを踏まえ血筋という
言葉が脳を支配する。歩いても歩いても夢は叶わず、海
よりもまだ深く愛したところで手放したものは戻らない。
そんなこと分かっちゃいるのに改めようとしない人間の
可笑しさと情けなさは子供の目から見ても明らかなのだ。
それでも今作の真の主人公である少年のあの成長ぶりに
言ってはナンだがこの子も大人になって父親に似るのは
なんとなく目に見えている。こんな大人たちに囲まれて
十歩も百歩も成長を余儀なくされている少年の不憫から
そろそろ学びなさいよと私たちに訴えかけてくるようだ。
だけど嬉しいのは、ロクデナシに向ける温かい師弟愛や
誰だって人間には失敗談があるだろう?と、先生と名の
つく老人の悲哀をチラリ見せるあたりの心憎さが、監督
の人間愛を描いているところ。リアルな対人模様は健在。
(老母の描き方が完璧。息子、娘、嫁、孫へのあの接し方)
いい気分に
良かった
『こんなはずじゃなかった』大人に
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