劇場公開日 2016年5月21日

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「何と言うか、アレですよね、そこまで絶賛したくなるような話でもない感じなのに何故か見入っちゃうみたいな」海よりもまだ深く スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5何と言うか、アレですよね、そこまで絶賛したくなるような話でもない感じなのに何故か見入っちゃうみたいな

2016年6月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

全面的に共感できる話ではなかったのですが、どこか分かると言うか何と言うか、世知辛い世の中の厳しさや現実を知ってしまうと、妙に共感できるところもあったりで、ついつい見入ってしまった映画でした。
阿部寛が演じた主人公の篠田良多は、間違いなくダメ人間です。
ああ言う人間にだけはなりたくない典型的な男です。
人間のダメな部分を極端な形で表したら彼になるのでしょう。
でも、残念ながらどこか人間は彼的要素が一つはあったりするもので、彼を全否定はできない、どころか自分のダメな部分を重ね合わせたりしてしっかりしろよと諭してあげたくなるんですよねぇ。

まだ世の中に出ていない若者には本作の本質的な部分は分からないかもしれません、でも、私も含めて思い描いたような人生を歩んでいない者にとっては、間違いなく心に届く作品に仕上がっていましたね。
思い通りにいかない人生も含めてそれも人生と思うことが出来れば、もっと前を向いて歩んでいけそうだなと、この映画を見てふとそんな風に思わされましたから。
とは言え、今を愛し、今を大切に生きると言う境地に達するのは、そう簡単なことではないですけどね・・・。

しかしさすがは是枝監督、ダメ人間なのに何だかんだで皆良多の良さを分かっているよう描く辺りの匙加減は、ホント絶妙でしたね。
母だけでなく、元嫁、息子、姉、職場の同僚、そして亡き父、皆の良多への接し方がとにかく奥深くて、会話の一つ一つに聞き入ってしまいました。
姉役の小林聡美なんか本当に絶妙、樹木希林と親娘設定にするなんて、見事過ぎますよキャスティングが!
何気ない日常のシーンも、本当に描き方が上手い、他人の家を覗き見したようなあるある感に、思わずニヤリとさせられました。

ニヤリとさせられる最強アイテム、ラスボスはやはり何と言っても樹木希林でしょう。
全ての台詞、佇まいにとにかく魅せられた。
ダメな息子ほど可愛いとはよく言いますが、この方の演技を見ているとまさしく・・・と思わされますね。
そして親はいつになっても親、子はいつになっても子なんだなと、改めて・・・。
それと冷凍庫の自家製カルピスアイスが個人的にはツボでした、冷蔵庫臭いんですよね、ああやって置いておくと(笑)
台風一過の眩しさも良かったですねぇ、台風のおかげで、良多も少しは成長できたのかな・・・。

スペランカー