海よりもまだ深くのレビュー・感想・評価
全228件中、161~180件目を表示
なりたくない大人にだけはならないでおこう
是枝監督の映画タイトルには、「も」という語感を持つ作品が多い。過去作品『誰も知らない』『花よりもなほ』『歩いても 歩いても』、そして本作『海よりもまだ深く』。
この「も」を辞典で紐解くと、並列・強調・すべてを表す係助詞と、「たとえ~でも」という意味の接続助詞がある。
少々小難しくなったけれど、是枝監督作品の特徴として、「現状を認めて、受け容れた上で、未来は信じる」、そんな通念があるように感じる。
もう少し判り易く言うと、「いまはダメがもしれないけど、ダメはダメなりに、この先、かならず良くなる。だって、人間は、善いものなんだから」ということだ。
通底にこのような思いがあるから、新作が出るたびに観に行くのだろう。
四十を過ぎた篠田良多(阿部寛)は、妻(真木よう子)と別れ、一人息子の真悟(吉澤太陽)は妻が引き取った。
良多は過去に処女作で純文学の島尾敏雄賞を受賞したこともあるが、その後はほとんど執筆できていない。
いまは、小説の取材と称して探偵事務所に雇われて、他人の秘密を探っては、その秘密をネタに依頼人から金をせしめるという阿漕なことをやっている。
そんな彼だが、息子に対しては子煩悩で、「いい父親」を振りを続けている。
というのも、先ごろ他界した父親とは折り合いが悪く、父親のだらしなさが厭で嫌で仕方がなかったからだ。
しかし、都下の集合団地に暮らす母親(樹木希林)や、和菓子屋に勤める姉(小林聡美)からみれば、良多は父親にそっくりだという・・・というハナシ。
最近の是枝作品同様、この映画でも大きな出来事は起こらない。
家族・家庭の些細な出来事の積み重ねが描かれるだけ。
映画の中心となる台詞には、「なりたかった大人になれたか」という台詞がある。
この台詞を、真向から受け止めてはいけない。
真向から受け止めて、この台詞につづく想定問答と作ったとしてら
「なりたかった大人になれたか」
「なれなかった」
「じゃぁ、なりたかった大人にならなきゃ」
となるかもしれない。
でも、それでは、是枝監督の通念とは異なる。
つづく想定問答は、こう。
「なりたかった大人になれたか」
「なれなかった」
「でも、なりたくない大人になったの? なりたくない大人になってなければいいじゃないか。まだまだ、なりたい大人になる余地はあるよ」
良多が「なりたかった大人」は、作家として成功する大人。
「なりたくなかった大人」は、子どものことを理解しない、だらしない父親のような大人。
いま、良多はただただ、だらしない大人になりそうになっている。
「なりたい大人」に、しがみついているから。
そんな良多に対して、母親がいう台詞が心に沁みる。
「しあわせっていうのは、なにかを手放さなきゃ、なれないないものなのよね」と。
良多が「本当に」なりたかった大人は、子どものことをいちばんに考え、子どもの気持ちに沿える大人だった。
映画終盤で、是枝監督の通念、「現状を認めて、受け容れた上で、未来は信じる」が立ち上がってくる。
たしかに「いまはダメがもしれないけど、ダメはダメなりに、この先、かならず良くなる」はずだ。
作家という儚い夢に手放しても、子どもにとって善い大人になろうと決意する良多を後押しするのが、知られざる父親のエピソード。
息子のことなど何一つ構っていなかったかのように思えた父親が、受賞後にとっていた行為・・・
都心の雑踏の中で妻と子どもと別れる良多の背中に、「善く」なろうとする意思がみえ、しみじみと心に沁みました。
そっと背中を押してくれる作品
何か大きな出来事が起きるわけでもなく、日常の一コマを切り取ったようなお話。ただ、そのような日常を描いているからこそ、みんな、納得いかないことや諦められないことなど、自分の気持ちと日々帳尻を合わせながら生きているんだということが感じられる作品だった。
阿部寛演じる良多の「わかった、わかってた…」という台詞に、そろそろ前に進まなきゃという、そっと背中を押されるような作品の優しさを感じた。
凄くいいこと言ったんじゃない?
是枝裕和はもう傑作しか撮れないという境地に達したのかもしれない。「誰かの過去になる勇気が必要」「幸せは何かを諦めないと手に入れられない」などなど…こんなにも名台詞を連発する作品を私のような凡人が自分の言葉で感想を言うことすらおこがましいというもの。普遍的傑作
世界でも評価される巨匠の人間ドラマという枠組みとしても素晴らしいんやけど単純にコメディとしてめちゃくちゃ面白い。樹木希林は現状世界一のコメディエンヌなんじゃない?笑った笑った笑った。劇場はおっちゃんおばちゃんの笑い声で包まれとった。こんないい雰囲気で映画観たのは久しぶりだったなあ
なぜこんなにも名台詞を連発できるのか?と考えたけど台詞の緩急が一つの要因かなと思う。是枝裕和といえば「アレ」やけどまったく説明的でない自然な(ともすれば気の抜けた)会話を積み重ねながらここぞというタイミングで金言が発される。上手過ぎる
それにしても樹木希林が「幸せは何かを諦めないと手に入れられない」と言った後の「今凄くいいこと言ったんじゃない?メモしときなさい」は凄かったなあ。「照れ」まで見せられたらもう完璧としかいうしかない
感じる映画
団地、樹木希林、西武線、バカ息子
どこにでもある日常な感じで、とても懐かしい感じがした。
直接的にはあまり多くを訴えてこないが、行間での訴え方がハンパない。
鑑賞後も色々と考えさせられるきっかけを与えてくれる。
自分の祖母もあんな感じだったなーって懐かしく感じる。シャキシャキしてて、子ども思い、かつツッコミは割とするどい。おどける。
天気の良い日の撮影で目にも優しかった。
あのバカ夫じゃ、とても復縁なんて考えられないだろうけど、ホントは今も好きだという事もよく分かる。小説のことを彼氏に聞くシーンとか。
樹木希林の演技はもはや神の領域(^^;;語るまでもなく。
笑えて、泣けました。
お客さんの年代は高めでした。
主人公の年代と近ければ、最初から笑える場面がそこかしこにあり、笑えてリラックスして観られました。
阿部寛さんは好きな俳優ですが、ラブシーンは見かけないように思います。
阿部寛さんの新天地を期待したくなりました。
名演なれど名作ならず
阿部寛のクズ夫ダメ父ぶりは、見事にむかついた。
樹木希林のバカ息子を溺愛する姿も、この上なくうざかった。
この2人に関しては申し分なく、感服した。
但し、それだけだった。
心は寸分も動かなかったし、微塵も染みなかった。
ありがちな日常を淡々と描かれても、鈍感な私には何も読みとれない。
もう書くべきこともない。
是枝監督お得意パターン
海街〜に比べると随分地味な作品だが是枝監督お得意の家族や親子といったテーマを相変わらずのリアリティをもって描く。
40を迎えた小生には子供にせよ親にせよ妻にせよ、近親感のある描写が多く身につまされる思い。
樹木希林の演技はもはや怪物。
清瀬の団地、西武池袋線もいい。
怪演 樹木希林
福山雅治が阿部寛に変わっただけなのかと思うくらいキャストのかぶりが多く新鮮さがない。海なんてまったく見えない団地での話。タイトルをつなぐのはラジオから流れてくるテレサ・テンの歌。このエピソード必要だろうか?ほかにもエピソード凝り過ぎ。というか、盛りすぎ。悪くはなかったが、家族がテーマなら興信所の同僚は出てこなくてよい。質屋はいいとしてRPGのようにいろいろ絡めすぎて散漫な印象。音楽会などほとんど蛇足。
聞いていて気恥ずかしくなるようなセリフの数々。脚本最悪。それをなんとか飲み込めるようにしてくれたのは樹木希林の演技力である。一重にこれに救われている。
この監督の表現は海街diaryのような原作の軸を失うとこんなにも凡庸なのかと幻滅した。
期待し過ぎたかも。。。
これまでの是枝作品が好きだったので、期待して鑑賞。
が、期待し過ぎたのか、今までの作品ほどは心に染みなかった。
でも、樹木希林の演技は際立ってたし、阿部寛の演じるダメ息子っぷりはハマってた。
タイトルとかぶりますが…
何のことない会話がずっと続いて行く2時間です。テレビドラマならいいけど、みたいなコメントもありましたが、出演者の世代、例えば、良多姉弟(阿部寛、小林聡美)や淑子(樹木希林)の世代じゃないと共感できない部分多々あると思われます。音楽鑑賞会後に分譲組と賃貸組が帰って行くところの描写など時代背景込みで秀逸です。それにしても樹木希林さんの自然な演技は日本一、いや世界でも右に出る役者さんはいないんじゃないかと思います。出演者の皆さんそれぞれが実にいい味を出しておられ、いつもながら是枝監督作品は感心させられます。真悟役の吉澤太陽くんの自然な演技も他のベテラン陣に決して負けてませんでした。これからが楽しみです。浅そうで実に深い映画でした。
樹木希林
とにかくキャスト陣が良かった!!特に樹木希林!彼女の演技は本当に世界一だ、と思える本当に良い映画でした。内容は是枝イズムがふんだんに入っていてしみじみと出来る内容。あんなダメ男にはなりたくないなーと 笑。泣ける、というよりは考えさせられる物語でした。真木よう子、小林聡美、池松壮亮、中村ゆりら共演陣の演技も冴えていて見ごたえがありました!
久しぶりにおふくろの顔が見たくなった。
クリント・イーストウッド監督の映画を観ているような、
絶賛はしないが、染み込むというか、残りました。
観ているその時その時の自分の状況で色々と思い入れが変わってくるのかもしれない。
共感も出来ないが、かといって否定も決して出来ない。
ただ、どんな人間でも良かれ悪かれ必ず家族が存在する、そんな事を観終わってぼんやり思いました。
おふくろの顔が見たくなった。
こんなお話なら、現実の方がまるでドラマですよ...
ええ、俳優陣の演技はさすがですよ。
樹木希林さんの映画といっても過言ではない。
あんな演技(アドリブ?)できる人、
この日本にそうそういない。
自分の母親と話しているみたい。
もはや演技ではないですね、
彼女の存在感だけで成り立ってます。
阿部寛さんも、表情の演技がうまい。
どうしようもない
男の切なさが伝わってきました。
探偵事務所の部下池松壮亮さんも、
さらりとした演技で立ち位置を分かってる。
ダメな主人公を、引き立てている。
リリーフランキーさんの世界観は、
あいかわらずヤバい。
一瞬で空気を変える凄さがある。
いい加減出過ぎだけど(笑)
名優たちの仕事には、とても価値がありました。
けど、作品自体の質は、全く残念でしたよ
日常の生きているシズルだけで、お話がスカスカ。
こんな浅いテーマを、映画にする意図がわかりません。
ダメ男のあるある日常を2時間みせられて共感しないし、
主人公のセリフや行動が、
ドラマ的でリアルじゃないから響いてこない。
テーマを残そうという意図が見え見えの、
不自然なパーツたちも気になりました。
唯一おこるイベントの台風だって、
まるで都合よすぎ。
主人公の実家での悪行の数々も、
そんなのいらないでしょ(笑)
「なりたい大人になれなかった大人たち」
に贈るには、薄っぺら過ぎです。
そもそもこんな主人公じゃ、
なりたい人になれるわけないから。
もう感情移入が全くできず、
俯瞰で眺めるしかありませんね。
上手くいくはずもない悲哀すら、
描かれてない。
あの、こんなんだったら、
現実の方がまるでドラマですよ。
戦って、くじけて、打ちひしがれて、ボロボロになって...。
それでもほとんどの人は夢が叶わず、
自分にツジツマをつけて生きているんですよ。
観終わった後、
「海街diary」の監督だったか!と、後悔しました。
そんなことも知らないで観てたのですが(笑)
名優たちを集めて淡々と描く手法。
あいかわらずの過大評価に溜息です。
何ももらえなかったから、
観た後は焦燥感しかありませんでした。
これが是枝ワールドというなら、
1800円の劇場でなくTVで勝手にやってほしい。
譲ってスライスオブライフだとしても、
行間を読ませたり、光で語ったり、
構図や空気で唸らせたり、
間合いで気持ちを表現したり、
何か価値あるものを届けてほしい。
小津安次郎監督や市川準監督作品のように。
本当に役者たちの演技に救われて、
ちょっとだけ温かなキモチにはなれた、
そんな2時間でした。
もちろん想いは人それぞれだし、
皆さんの評価は高いようなので、
あくまでマイノリティの感想ですから。
勝手にほざいてるだけなので、
全く気にしないでください。(笑)
全228件中、161~180件目を表示