海よりもまだ深く

ALLTIME BEST

劇場公開日:2016年5月21日

海よりもまだ深く

解説・あらすじ

「海街diary」「そして父になる」の是枝裕和監督が、「歩いても 歩いても」「奇跡」に続いて阿部寛と3度目のタッグを組み、大人になりきれない男と年老いた母を中心に、夢見ていた未来とは違う現在を生きる家族の姿をつづった人間ドラマ。15年前に文学賞を一度受賞したものの、その後は売れず、作家として成功する夢を追い続けている中年男性・良多。現在は生活費のため探偵事務所で働いているが、周囲にも自分にも「小説のための取材」だと言い訳していた。別れた妻・響子への未練を引きずっている良多は、彼女を「張り込み」して新しい恋人がいることを知りショックを受ける。ある日、団地で一人暮らしをしている母・淑子の家に集まった良多と響子と11歳の息子・真悟は、台風で帰れなくなり、ひと晩を共に過ごすことになる。主人公の母親役を樹木希林が好演し、共演にも真木よう子、小林聡美、リリー・フランキーら豪華な顔ぶれがそろう。

2016年製作/117分/G/日本
配給:ギャガ
劇場公開日:2016年5月21日

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受賞歴

第69回 カンヌ国際映画祭(2016年)

出品

ある視点部門
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(C)2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ

映画レビュー

4.0海より深い“母の心配”

2021年3月27日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

楽しい

幸せ

そういえば私の祖母も、私の母に対して「母の心配」をしていたなあ。
大人になってから私の母も、私に対して「母の心配」をしてくるなあ。

母や祖母というものはどこでもこんな感じで心配するものなのかな。
あまりに言い方や口癖が樹木希林と重なっていて驚き!
少し面白く、深刻にならないように話しながらも、祈るような想いがつい顔を出すところとか。

「もうあなたたち駄目なのかしらねえ。」
「なんでこんなことになったのかねえ。」

この台詞なんて、まんまうちの祖母や母と同じ。
このちょっとネガティブに言ってくるところが癇に障るところとか。
おそらく、避けたい最悪の事態を、あえて言葉に出すことによって「そうならないように保険をかけている」ようなところがあるように思う。もしくは、万一そうなったときに備えてショックが少なくて済むよう言葉に出して慣れておくという意味かな。(どっちかというと後者かな。)
で、こっちは邪険な返事をしてしまって後から後悔するんだよなあ。

これ私も最近どうやら引き継いでいることがわかった。
私にもまっとうな「親の愛」があったことに驚き。。

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共感した! 5件)
momokichi

3.5やっかいだけれど愛すべき、未練というもの

2016年5月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

これまで、ダメ男を幾度となく演じてきた阿部寛。大きな身体を持て余すような彼の存在が、本作では一際光っている。というか、とにかく目立っている。彼を取り巻く人々(樹木希林、小林聡美、真木よう子、池松壮亮…)が小柄なうえに、ご丁寧にも座ったりバイクに乗ったりで、彼の目線をさらに引き下げる。人だけではない。母の住む古ぼけた団地は、天井が低く、全てがこじんまり。彼がそこに居るだけで、家に収まりきれない、はみ出した彼の有り様を一目瞭然に物語る。どこを取っても、「画になる」ショットのオンパレードだ。
もちろん、そんな視覚の妙だけではない。冒頭のリズミカルな母娘の会話で、家族関係をさらりと観客に示すところから、是枝節全開。ごく自然で何気ないやり取り…のようで、是枝監督作品は、いつも精緻に計算され尽くされている。まるで、監督の手のひらの上で自在に転がされているようだ…と思いつつも、ゆるゆると身を委ねてしまう。
アレ、コレ、ソレ…といった、分かったようで分からない、ぼやかした言葉の連なり。彼らの会話に繰り返し登場する、亡き父の様々なエピソード。夜中にしては大音量でラジオから流れる音楽…。これらはすべて、ここに行き着くための布石だったのか、と台風一過のラストに至ってハッとした。雄弁すぎる歌詞のエンディングテーマが、思いきりエンドクレジットにかぶさる。ああそうか、これは、パッとしない主人公が、小さな積み重ねを経てやっと一歩を踏み出す物語だったのか、とちょっと胸が熱くなった。
…しかし。翌日、とあるラジオ番組を聞いていて愕然とした。そこでは、本作が「なんにも起こらない物語」として紹介されていたのだ。いやいや、そんな訳はない。ハリウッド大作のように世界や地球が破滅するわけではない…にしても!
と、違和感を幾度となく反芻しているうち、「それもそうかな」という思いがふっと湧いてきた。
ラストの良多はなかなかカッコよかったけれど、やっぱり彼は、またしても未練タラタラに、元妻につきまとうかもしれない。仕事の方は急展開しそうにないから、フラフラした生活も当分続きそうだ。けれども、元妻と子に見せた「その瞬間」にウソはない、とも思う。確かにその時、彼は凛として決意し、一歩踏み出した。それで十分だ。…もしかすると、良多と元妻、息子は、毎月同じやり取りを繰り返しているのかとしれない、だとしたら…などと、思いはとめどなく広がっていく。
「そして父になる」のラストをハッピーエンドと捉える人がいる一方、終わらない悲劇の始まりと捉える人もいる。本作も然り。その選択が正解か否か、ハッピーかアンハッピーかは大したことではない。「人生万事塞翁が馬」と言えばそれまでだけれど、良多の身体と同じく、枠組みに収まりきらない交々の味わいを、本作は丁寧に描き出す。
また、母の家にあふれる古ぼけた品々も忘れがたい。(民芸調の赤い布張りの箱には、特に目が釘付けになった。くたびれ具合まで、実家の裁縫箱と瓜二つ!)未練を捨てることの難しさ、未練を持つことの悲しさ面白さ。是枝監督作品は、観る人それぞれの生活や家族に思い当たるあれこれを絶妙に散りばめ、何気ない日常の豊かさに気づかせてくれる。

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cma

5.0現代日本の縮図を描いた傑作

2025年7月6日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

海よりもまだ深く
2016年公開

序盤に映るのは西武池袋線、停車した駅は清瀬駅、主人公がバスで来たのは清瀬団地
建設されたのは昭和42年1967年のことだそうです
団塊世代の新婚家庭が入居して、子供を産み育ててきた日本人の典型的な家庭があったところ
主人公は、姉とともにこの団地で育ちました
父母世代が入居してから40年経過していまでは、子供達は大人になり巣立っていって、団地に残っているのは孤独死を心配される老人ばかり、公園で遊ぶ子供の姿もありません

つまりこれは平均的な日本人の家庭のお話だとことを説明しているのと同時に、現代日本の縮図なのだ言っているのだと思います

父が亡くなり母が一人で住む家に勝手に上がり込みます
自分が生まれ育った実家なのだから何の問題もありません
でも仏壇の引き出しやら、貴重品を隠していそうな所をガサガサし始めます、母が帰宅するとそれを気づかれないようにとりつくります
探していたのは掛け軸のはずですが、どうも金目のものであれば見つかればなんでもいいようです
生活に困窮していて別れた妻との息子に会うためには養育費や父親らしいことをしたい為の金がいるからです
親から泥棒してでも自分の事を優先しようとしていたわけです
本人は親に甘えているだけのつもりかも知れません

でも、これって大きく俯瞰してみると、8050問題のことのように見えます

80代の親が50代の子どもの生活を支えるという、高齢化社会における社会問題のことです
もっと巨視的にみると今の日本は経済困窮に喘いでいて、既に引退した世代が家庭や、社会に遺してくれたいろいろな遺産をあてにしやりくりするほかない日本の国の現状を映画にしてあるように見えました
主人公も姉も盛んに母の年金のことを口にして当てにしています

母はそんなことすべてわかっていて文句ひとつ言わないのです

団塊ジュニア世代だって、夢を実現しようと精一杯頑張ってきたのです
でもいまはこのていたらくなのです

父や母の愛なんて意識したことなんかあまりない、だって親なんだから当たり前だと思って育ってきたのです

しかし父が自分の病気の治療費の為にお宝のはずの掛け軸を質に入れたことや、形見の硯を質に入れようとすると、文学賞を取った時それ程までに自分を誇りにしてくれていたことを知ります

海よりもまだ深く父母に愛されていたことをいまさらながらに主人公は知ります

本作のタイトルはテレサ・テンの1987年の大ヒット曲「別れの予感」の歌詞から採られたもの
劇中、中盤で小さく流れます

その年はバブル突入の頃です
日本はその時の負の遺産によって失われた30年となり日本はこのような体たらくとなったのです

いまは、それでも僅かに残った遺産を見つけてはそれを処分してなんとかくいつないでいる有り様です

すべてはバブル崩壊のせい?
そんなわけはないでしょう
それでもバブル崩壊という台風で夢は吹き飛ばされてしまいました
公園に散らばった宝くじを拾い集めてみてもそれが何億も当たるなんてことがある訳はありません
そんなもの全部お前にあげるよと言われても、次世代の子供は掛け軸や硯のように父の愛を感じてくれるわけもないでしょう

主人公の父は既に死に、母も劇中の台詞のようにいずれ死ぬでしょう

次世代の子供達を、私達は海よりもまだ深く、空よりもまだ青く愛することができるのでしょうか?

私達は父母よりも次の世代を愛することなんてできないのでしょうか?
次世代に遺してあげる遺産すらない、いやそのために取っておこうしていたものまで、目先のことに使ってしまっているのではないのでしょうか?

選挙の夏
どの政党も財源もないのに一時金や減税ばかり公約しています
次世代に遺すどころか、つけを回そうとしているのではないかと思ってしまうのです

劇中、心に残った台詞

なあーんで、こんなことになっちゃたんでしょうねえ

どこで狂ったんやろ、私の人生
それもひっくるめて私の人生

こんなはずじゃなかったよな
ほんとにそう、こんなはずじゃなかった

まだなれてない
なれたかどうかが問題じゃない、大切なのはそういう気持ちを持って生きているかどうかということなんだ

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あき240

3.0設定が不自然に思えた

2025年3月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

主人公のぐうたら具合が想定以上で、別れた妻の感じと不釣り合い過ぎて、不自然な設定だなと。
映画自体は良かった。

宝くじを拾うシーンは要らないと思う

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Hisenberg