「新海作品の魅力」君の名は。 Kさんの映画レビュー(感想・評価)
新海作品の魅力
過去の新海作品同様、彼の最大の魅力である背景や光の陰影の美しさは際立っていた。
ヒロインの住む広大な自然が溢れる山奥の風景と、主人公が住む大都会東京の人工的な美しさがどちらも素晴らしく細かく表現されていて相乗効果で目を見張るものがある。
そこは期待通りだったが、肝心のラブストーリー的視点で見ると、ヒロインが主人公のどこに惚れて主人公がヒロインのどこに惹かれたのかが明確ではなかったと思う。
表現のわかりやすさだけが全てでは無いと思うが、二人は体と互いの生活を共有しているとはいえ、お互い密なやり取りがあるわけでもなく、なんとなく関わり、日記と少しのイタズラで交流していくわけだけど、その中で好きになるキッカケがわからない。
視聴者目線で言えば、ヒロインが悪口を言われて主人公が怒る所や山道で祖母を背負うシーンなどで思いやりがある人格が見て取れるが、ヒロインはそれを見ていない。
ヒロインの恋が発露したタイミングとしては主人公がバイトの先輩とデートするように仕向けた所だと思うが、それまでに主人公とのやり取りで細かな表情の変化や仕草があったわけでも無いし、なんとなく好きになり、なんとなく離れがたい。だから会いたい。その程度の関係に感じた。
入れ替わりという特異な現象が相手を特別に思う理由の全てで、互いの性格や言葉に揺り動かされたシーンが無い。
(あえて探すなら口噛み酒を奉納にきた主人公とおばあさんの組紐についての会話だが。)
だから、交流が途絶えた途端に二人がお互いを突然恋愛対象として想い始めているようにみえ違和感を覚える。
ストーリー終盤で、隕石による町の壊滅を食い止めようと、まわりの友人を巻き込んで世界を変えるような大きな事を(爆破、避難等)企む所や、やたらと走りまわり坂道を転がって傷つきながらも主人公の言葉にヒロインが奮起する姿は、細田守監督の「サマーゲーム」や「時をかける少女」の名シーンを彷彿とさせた。