リップヴァンウィンクルの花嫁のレビュー・感想・評価
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そっと優しい歌声に涙した
彼女の口からこぼれ落ちる言葉には機微が溢れて、自分の事みたいにスルスルと涙が落ちてしまった。
流れに乗れない日々、そもそも流れに乗った事などない。そんな淡々とした生活に、儚い希望を持って過ごしていた頃に引き戻されてしまった心。
目の前に迫る雑多なビルがひしめく路地裏、彼女がビジネスホテルの窓を開けたあの瞬間、同じ気持ちに陥ってしまう。
とんでもない運命に、なんの疑いもなく流されて行く彼女の物語。
見ていたくなる気持ちが増してしまうのは、悲しみを誤魔化し受け止めず生きている私達に、気がつかせてくれてるのかもしれない。
全ては仕組まれている
名前が気になって仕方がない。リップ・ヴァン・ウィンクル、クラムボン、カムパネルラ、安室、ランバラル。宮沢賢治も機動戦士ガンダムもさらっと通り過ぎている人間には、よくわからない。それでも、何かしら意味があるのだろう。
私がこの映画に入り込んだ瞬間は、真白がカラオケで「人は失くしたものを胸に美しく刻めるから」と歌う時。
そこからは、夢のように時間が過ぎていきました。映画の至福の時です。
黒木華が黒木華を演じ、綾野剛が綾野剛を演じている。私のイメージのそのまま。だから自然に見える。
騙され続けているようなストーリーなのに、この心地よさは何なのだろう。
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自宅(CS放送)で鑑賞。殆どのシーンを照明無し、6Kのカメラで撮影し、2Kに落とし仕上げたと云う。この画面が今迄と違って見えた。一言で評するなら劣化だ。お得意だった柔らかい光は硬質さが取分け際立ち、よく使われた逆光やソフトフォーカスも美しくなかった。そして何故かアングルが固定されておらず、微妙に揺れ続けている。心情の不安定さや世界観の揺らぎの様なのを狙ったとしたら、お世辞にも巧く行ったと云えない。180分と云う尺は気にならなかったが、全体に迷い続けて作った感があり、何とも残念な気分になった。60/100点。
・日本国内での実写長篇撮り下ろしは、『花とアリス('04)』以来12年振りとなる監督だが、何かに遠慮している様な作りで、らしくない作品になっている。出来ればこれ迄の様なもっと突き抜けた表現が見たかった。ただこれぞ岩井節とも云えるふんわりとした雰囲気の世界観にドキッとする残酷で辛辣な展開やエグ味、それらと対照的なとぼけたユーモアは本作でも健在で、これらのスパイスが無ければ全くの凡作に没していたと思う。
・一つのクライマックスを迎えるりりィ扮する"里中珠代"宅、霊前でのシーンが印象的だが、綾野剛の“安室行舛”がよく判らない。演技的な問題なのかもしれないが、他人行儀でビジネスライクだった筈が、泣き崩れた後、一挙に乱れる。泣き始めた時、哂い出したのかと最初思った。このキャラクターはクライアントとして知り合った“皆川七海”の黒木華の離婚を画策し、仕掛けた後、欺く様にCoccoの“里中真白”の元へ送る。余程のやり手なのか、はたまた商売以外は純真なのか判りかねる。因みに酒盛りの涙は、あの場を繕う嘘泣きと解釈した。
・本作のもう一つの特徴は、“皆川七海”が泣き虫な事。監督の過去作でこれ程、度々涙をすするシーンが登場するキャラクターは記憶に無い。亦、“ランバラル”に“アムロユキマス”と云う役名は云う迄も無く、某アニメからの捩りだろう。“里中真白”の屋敷には、さり気無くそのアニメのコスチュームが掛けられており、スタッフロールにはアニメを作った“株式会社 サンライズ”がクレジットされていた。
・演者達自身も撮影中は、ストーリーか判らなかったと云う本作には、監督自ら書き下ろした『小説版』に加え、約120分の『配信限定版』、一話約50分の全六話から成る『serial edition版(“皆川七海”が派遣社員で嘘つきだったり、ストーリーが大きく異なるらしい)』、更に約120分の『海外版』が存在し、それぞれが同じ配役乍ら、独自にカット・追加されたシーケンスがあるらしい。監督曰く、どのバージョンを観ても完結しないようになっているが、時間が無い人には全ての要素を盛り込んだ『海外版』がお薦めだと云う。
・鑑賞日:2017年3月26日(日)
ありきたりの日常から取り残されたのは
リップヴァンウィンクルとは現代から長く取り残された海外版浦島太郎の様な小説らしい。
その花嫁とは一緒に死んでと言っていた真白から取り残された主人公か、あるいはコミュニケーション必須の現代で不器用さゆえ取り残された主人公を指すのか?もしくはAV穣として肝臓がんで死んで行く真白だろうか…。
題名からして想像を掻き立てる。
小説読んでから観ればこのあたりのモヤモヤ感は拭いされたかもしれない。
ただ、テーマはさておき黒木華、COCCOや脇を固める俳優も含めてその演技は素晴らしい。特に黒木華の演技力の秀逸さには思わず画面に引き込まれてしまう。
映像も岩井監督独特の透明感のある綺麗なものだ。ここまでは良いのだがやはり観た後のモヤモヤ感はなんとなく自分の中での評価は下がってしまう。多分当時の日本アカデミー賞での選考もそうだったのではなかろうか、
主演女優賞は取ったが作品賞、監督賞は逃した。
まあ、あれやこれや想像を巡らす作品もありだと思うし、事実は脚本書いた監督にしか解らないこと。
でも何とも言えない不思議な魅力があるのは事実です。
搾取
七海も真白も搾取されるがままに生きていて、安室は搾取する側に生きている。七海は搾取に気がつかないし、気がついた真白は心が病んでいる。そして安室には悪気がない。何が不気味かって、全てがナチュラルに金だけで繋がっているところ。搾取される人、搾取する人、病む人。今の社会の構図を優しくふんわり見せているところが、エグかった。
ある意味、理想のヒロイン
物語としては美しい、でも、、と煮え切らない気持ちになっていたが、この疑うことを知らないヒロインは、ある意味、理想のヒロインなのだと思うことにした。本当はスワロウテイルのように成長の証しを見たかったのだけど、ふわふわしているのもある意味、強さなのか。期待を込めて。
映画の構成としては、前半と後半の断絶感が気になる。前半の謎が最後に解けて丸く収まることを期待してしまうが、それがない。でも、夫も義母も森の入り口の脇役でしかないと思えば、納得できなくもない。
あっと言う間の3時間
これぞ岩井俊二の世界。
美しかった。
黒木華のための映画。
にしても、、、Coccoがあんなに演技が上手いとは思わなかった!Cocco起用した岩井さん凄い!
そして、、、綾野剛の胡散臭さがたまらない!
心を揺さぶられた
原作をだいぶ以前に読んでいて、「この小説が180分の映画になるのか?」と思っていたがあっという間に180分だった。
前半、黒木華は圧倒的に道化のように踊らされる。いやそこはちょっと考えろよみたいなところも数多く苛々するものの、よく考えたら現実とはこんな風にままならないのかもな、とも思う。あからさまではあるが人間あんなもんなのだ。
後半は儚いおとぎ話のようで、よくわからないうちに涙がこぼれていた。人の絆や、優しさや、現実や、色々なものが全部詰まっていた。多分その儚いけど強いものに泣かされたんだと思う。Coccoの歌のタイトルかよ、と思うがそうとしか言えない。
人を疑うこと、信じること。
安室は、相談相手もいなくSNSに日常の不満をこぼすような独りぼっちの女の子を探していたんだと思います。
お人好しで純粋で、頼れる人も居なそうな七海は、一緒に死んでくれる人を探してほしいという真白の依頼に、ぴったりくると思ったのでしょう。
救いようのないほど簡単に騙されてしまう主人公。ウェディングドレス姿で真白の横で倒れている七海を見て安室は、どうしようもなくバカで可哀想な女の子だな〜と思ったのでしょうか。しかし、七海は生きていました。真白の死を大声で泣きながら悲しむ彼女の姿を見て、次々と降りかかる不幸に翻弄されながらも、まっすぐにひとを信じ、愛し、愛され、命を救われた彼女の強さに驚いたと思います。引越しの手助けをした安室には、なんの裏心もなかったのではないでしょうか。
人を信じること、疑うことについて考えさせられました。意見は別れると思いますが、いい作品だと思います。
ランバラルの友達だから
・七海の堕ちっぷりがスゴく生々しく描かれていて、観ていて引き込まれていった。
安室や真白の当初の思惑とは違うラストになり、本心を知らずに成長していく七海は素敵だと思った。
・安室の終盤シーンは好きじゃなかった。人の人生や生命までも平気で騙してきているのに、あんなに号泣するのは観ていて引いた…。
・真白に感情移入出来なかった。観ていて何故って気持ちばかりになった。
謎解き要素多い作品
Amazon primeで鑑賞。
岩井監督作品はアニメ版の「花とアリス殺人事件」以来。
謎解き要素が多く、尺が長いわりに飽きずに楽しめた。
レビューやネタバレ見ても、いろいろな解釈がある模様。
独特の映像美も健在。
監督てあり、クリエーターでもある岩井監督の強みが生かされていると思います。
「花とアリス」でも、岩井監督自身、デジタルの編集ツールを自在に使いこなして作品の細部まで仕上げにこだわると関係者の方から伺いました。
バンドで音楽活動もされていたりと根っからの表現者なんでしょうね。
岩井作品では一番好きかも
・黒木華ワンマンショー
・お義母さんに責められてしゃっくりと吐き気を催す七海(黒木華)の演技スゲェ
・ひとり追い詰められいっぱいいっぱいになる七海のいじらしさと弱さと漬け込まれやすさが凝縮した場面だな
・突然の花婿で重婚設定の紀里谷和明ww
・真白(Cocco)の存在感がパねえ
・七海と真白がクラゲの水槽の前でグラスに耳をつけて話すシーンに涙「海の底にいるみたいな音がする」
・七海と安室(綾野剛)の間が雇用関係に終始してたのが清かった
・綾野剛の飄々とした人材派遣何でも屋っぶりが見事
・軽部アナ、堀潤、野田洋二郎などカメオ出演
・もう少しタイトで、終盤でどんでん返しがあればもっとよかったかも
岩井俊二ワールド
昔ほどの鋭さがないという意見もあるが、岩井俊二世代からすると新作が出たというのがとてもうれしかった。
現代ネタを取り入れていてよかったし、読めない展開も。
わかりやすい作品ではないですが。
贅沢で有意義な3時間
美しい映像と岩井俊二監督らしい雰囲気に包まれたとても良い映画だった。俳優たちの演技も素晴らしく、この物語の世界観にすごく引き込まれた。180分の作品だが、それが全く苦ではなかった。「長く感じなかった」ではなく、「長さが苦にならなかった」映画。中盤からもっと見たい!という思いで頭の中がいっぱいだった。説明が難しいのでまず1度見て欲しい。
この映画は、言ってみれば2部作のようなもので、前半と後半で結構話のストーリーが違う。
前半は、主人公が周りの人に流され、苦労しながらも生きているなぁという印象。旦那の浮気相手の彼氏を家に入れてしまったり、メイドで100万なんていう怪しい仕事を引き受けちゃったり。
後半では、cocco演じる真白との可愛く愛おしい関係性が描かれて、とても現実世界とは思えないような雰囲気だった。特に、ウェディングドレスを着て、ベッドでキスをするシーンなんかはとても素敵で、女同士とか全然気にしなかった。
最後のシーンも娘を分かってあげようとする母の姿がとても良かった。それに心打たれた安室も良かった。
邦画の中でTOP10に入るぐらい好きな作品だった。
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