ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ

劇場公開日:

ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ

解説・あらすじ

巨匠フレデリック・ワイズマンの40作目となるドキュメンタリー作品で、さまざまなマイノリティが集まるニューヨークの下町ジャクソンハイツにカメラを向けた。ニューヨーク市クイーンズ区の北西に位置するジャクソンハイツには、世界中からの移民とその子孫が暮らし、167もの言語が話されている。教会、モスク、シナゴーグといった宗教施設、レストラン、コインランドリーなど、町に点在するさまざまな場所。この町に生きる地域ボランティア、セクシャル・マイノリティ、不法滞在者、再開発の波にのまれる商店主たち。町に生きる人びとの語らいや踊り、祈りなど、ワイズマンの視点によって切り取られた場所や人びとからジャクソンハイツという「町」が描かれる。2015年・第28回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門、2016年・第13回ラテンビート映画祭上映作品(映画祭上映時タイトル「ジャクソン・ハイツ」)。

2015年製作/189分/アメリカ・フランス合作
原題または英題:In Jackson Heights
配給:チャイルド・フィルム、ムヴィオラ
劇場公開日:2018年10月20日

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映画レビュー

5.0ワイズマンの見つめるアメリカ

2018年10月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

近年フレデリック・ワイズマンは欧州の美術館や劇場など、アートの世界のコミュニティを取り上げる作品が多かったが、久々にアメリカのコミュニティを取り上げてくれた。特定の人間を主軸に据えず、共同体全体を見つめるワイズマンの語り口は相変わらず冷静でよい。

ジャクソンハイツは、167もの言語が飛び交う全米でも屈指の人種のるつぼで、アメリカを体現する町ともいえる。作中最も多く聞こえてくる言語は映画ではなくスペイン語だ。人種だけではなく、同性愛のコミュニティも古くからある町であり、違いを持った人々が昔から共存してきた町なのだ。

ワイズマンの映画は、被撮影者にも観客にもカメラの存在を意識させない手法が特徴だが、本作でも町の人々の自然体の様子を観察している。観客もまた、町をふらりと訪れたかのような感覚を覚えるだろう。
社会の分断が深刻する今だからこそ、多くの人に観てほしい作品だ。

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杉本穂高

トランプ大統領誕生の日に鑑賞した皮肉

2025年2月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 王兵(ワンビン)の作品と同じく、フレデリック・ワイズマンのドキュメンタリーは「見た事ない作品はとにかく観たい」と思っています。彼の作品は、対象に対して「とにかく全て観て遣ろう」という意志に貫かれています。ナレーションや説明的字幕はなく、ストーリーのある劇的展開もなく、一つの場所、もの、施設をあらゆる方向から観ようとするのです。従って殆どの作品は長くなります。でも、「全てを観る」と言うのは物理的に不可能で、「何を全てと呼ぶのか」に作り手の主観が必ず入ります。

 本作の舞台となるのは、ニューヨークにあるジャクソンハイツと呼ばれる地区です。ここは移民の街として知られ、世界中からの人が集まり167もの言語が話されているのだそうです。様々な宗教施設・商店・日常生活・政治活動などが次々と映し出されます。LGBTへの理解を求めるレインボー・パレード、都市再開発による小さな商店閉鎖への抗議、英語が十分に離せない人への職業訓練。どれをとっても興味深いのですが、編み物をしている老婦人らの世間話が妙に印象に残ったりもします。

 移民の排斥・LGBTへの蔑視・ヘイト感情の煽りを謳う新大統領誕生の日にこの映画を観たのは何と皮肉な事でしょう。今現在この街はどうなっているのでしょう。これからどうなって行くのでしょう。人々はどんな選択をしたのでしょう。

 (2024/11/8 鑑賞)

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La Strada

5.0この手の映画は長いけど好き。

2024年11月10日
PCから投稿

今年407本目(合計1,498本目/今月(2024年11月度)13本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。

 ※ さすがに(インド映画でもないのに)3時間級なので、一部お手洗いにいっていたりするところがあります。

 このシリーズの復刻上映でしたのでいってきました。
もともとこの監督さんは「ボストン市庁舎」など行政法関係の映画が多いのですが、こちらはある街を舞台にした移民をテーマにした3時間級のドキュメンタリー映画です。

 「ボストン~」も「図書館シリーズ」も、あるいは本作も広い意味でいえば地方行政における行政のあり方を描くドキュメンタリー映画で(問題提起という点は一応はあるが、基本的には「観るだけ」に近い映画)、日本は大々的に移民政策は取っていない一方多くの外国人の方が在住されますが、それとの比較論で見るのも良かったかな、というところです(市庁舎と図書館は程度の差はあっても日本とそうそうシステムは変わらないため)。

 ドキュメンタリー映画なので「面白かった」とかという感想があり得ず、もっぱら文化・知識吸収が主になる映画ではありますが、観て損はないかなといったところです(「ボストン市庁舎」はVODでも見られるみたいです。こちらは6時間級なのでさすがに料金うんぬんもありますが、VODにしないと腰がぶっ壊れそう。私もそれだけはVODで見た)。

 採点に関しては特段気になる点までないのでフルスコアにしています。
行政書士の資格持ちとしてはこうした、外国(この監督さんだとアメリカが多い)の国、地方行政に踏み込んだドキュメンタリーを今後も期待しています、といった応援メッセージで締めたいと思います。

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yukispica

4.5これもまた破格の傑作‼︎

2024年10月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ナゴヤキネマ・ノイの「フレデリック・ワイズマン傑作選〈変容するアメリカ〉」で一本拾った。

世界中からの移民、167の言語が飛び交うというニューヨークの下町ジャクソンハイツ。

教会、モスク、シナゴーグなどの宗教施設、レストラン、集会、コインランドリー、、、地域ボランティア、セクシャル・マイノリティ、不法滞在者、、、再開発の波に飲みこまれる商店主たち、街を守ろうと闘う人々。

そう、カメラはあらゆる場所、人に向けられた。

わずか1.2㎢というこの町に、人種・言語・宗教が異なるおびただしい数のコミュニティーが存在することに愕然とする。

人びとの語らい、踊り、祈りなどをじっくり撮るのがワイズマン流。何の脈絡もないと思われる個々のディテールが共鳴し巨大なインパクトを放った。激しく感動した。

ジャクソンハイツという「町」を通してアメリカ🇺🇸、そして世界が透けて見える構造。このスケール感がワイズマンだ。

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エロくそチキン2