幸福の罪
2011年製作/102分/チェコ
原題または英題:Nevinnost
スタッフ・キャスト
- 監督
- ヤン・フジェベイク
- 脚本
- ペトル・ヤルホフスキー
- ヤン・フジェベイク
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オンドジェイ・ベトヒー
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アニャ・ガイスレロバ
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ヒネク・チェルマク
2011年製作/102分/チェコ
原題または英題:Nevinnost
オンドジェイ・ベトヒー
アニャ・ガイスレロバ
ヒネク・チェルマク
恋を夢想する夢見がちな少女の妄想が発端となって、社会的地位や名誉、そして幸福な生活の全てを失いそうになるある家族の物語。それで終わっていても充分成立するほど丁寧に作られた物語。
医者の家系で経済的にも恵まれ、幸せに暮らすある家族。障害をもつ子どもとその父が家族と離れて暮らしたり、親の期待に応えることができなかった女性が、社会奉仕活動で道化を演じたり、旦那の浮気に怯え心のバランスを崩しそうになる姉がいたり。
外側から見れば、なんの不満もなさそうな家族のそれぞれが、孤独を抱えながら、その孤独をかき消すかのように寄り添う。無理してでも笑っていなければ不幸になってしまうかのような、でも幸せでいられるならそんな無理でも我慢すればいい。そういう危うさの上に作られた幸せな家族のかたち。でも家族ってこういうものかもと思っていた矢先の急展開。
家族のため、全てを犠牲にしてみんなに気を配る優しい妹は、実は姉の夫と関係を続けていて、少女の事件を契機に自身の少女時代と、報われない愛の行く末に絶望し自ら命を絶ってしまう。婦女暴行殺人の容疑で逮捕されてしまう姉の夫。本当のことを話したところで、それがさらなる地獄を家族にもたらしてしまうという皮肉。
まだ幼い少女であった頃から妹に手を出していただけでなく、姉妹のどちらとも関係を持ち、挙げ句の果てには、障害のある子どもまでいた姉との間に子どもをつくり、家族を乗っ取った後でも妹と関係を続け、一つ屋根の下で暮らす男。擁護しようのないほどろくでなしであるのは間違いないけど、ただのロリコン変態野郎として描かないのが洋画の懐の大きさか。
別れることで傷つけたくない。そういう甘い優しさで、姉妹のどちらも愛し続けることを選んだ男。でも優しさに向かうはずだった欲望が行き先を見失って溺れてしまうならやっぱりそれは愛なんかじゃ少なくともない。優しい人ばかりいたある家族の物語。その優しさは誰も救えなかった。少女の妄想と大人の現実。果たして罪なのはどちらか。