消えた声が、その名を呼ぶ

劇場公開日:

消えた声が、その名を呼ぶ

解説

「愛より強く」でベルリン国際映画祭金熊賞、「そして、私たちは愛に帰る」でカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞しているドイツの若き名匠ファティ・アキンが、100年前のオスマン帝国で100万人のアルメニア人が犠牲になったと言われている歴史的事件をもとに、1人の男が離れ離れになった家族に会うためにたどった旅路を描いたドラマ。1915年の第1次世界大戦中、オスマン帝国のマルディン。アルメニア人の鍛冶職人ナザレットはある日突然、憲兵によって妻や娘と引き離され、砂漠に強制連行される。激しい暴行を受け、声を失ったものの奇跡的に生き延びたナザレットは、生き別れた家族に会うため灼熱の砂漠を歩き、海を越えていく。やがて8年の歳月が流れ、地球を半周したナザレットは遠くアメリカのノースダコタへとたどり着く。第71回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され、ヤング審査員特別賞を受賞した。

2014年製作/138分/PG12/ドイツ・フランス・イタリア・ロシア・ポーランド・カナダ・トルコ・ヨルダン合作
原題または英題:The Cut
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2015年12月26日

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(C)Gordon Muhle/ bombero international

映画レビュー

3.5大いなる旅に思うこと

2023年11月29日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

私は映画の主人公に感情移入するタイプだ。どこか他人事として事象をとらえる一方で、無意識に近い状態で人物の感情に寄り添って観ている。 こればっかりは癖のようなもので、どうしようもない。 「消えた声が、その名を呼ぶ」は、終始ナザレットの視点で物語が進み、感情の拠り所がとても明白な作品、だと思った。の、だが。 アルメニア人虐殺、という未だ総括されない出来事を出発点として動いていくナザレットの物語に、少しずつのめり込んでいく感情に急ブレーキがかかっている。映画の至るところで。 ナザレットの行いがキリスト教的な背景を必要としているから、かもしれない。 ナザレット自身が時にあまりにも卑劣な行為に手を染めるから、かもしれない。 しかし、私自身は監督からのドクターストップならぬディレクターストップであるように感じた。 「これ以上彼に寄り添ってはダメだよ」と言われているような、急に突き放された感じがあるのだ。 当事者としてそこにいる感覚がなく、ナザレットを通して出来事を観てはいるのだが、一歩遠ざかった視点に強制的に戻される。 彼の身に起こった出来事は恐ろしく残酷で、それでいて時に思いがけない親切に助けられ、その心の動きは余すところなく伝わってくるのに、とても遠い。 思えば、私たちは誰かの私見に基づいた物語に慣れすぎているのかもしれない。この映画には絶対的な悪も善もない。痛ましい出来事があり、それを生き抜いた人がいて、そしてその人は普通の人だ。アルメニア人もトルコ人もアラブ人もイスラム教徒もキリスト教徒も、時に良心に従い、時に利己的である普通の人だ。 一面的な立場に依らず、淡々とナザレットの「事実」を見せられる。可哀想でしょう、みたいなお仕着せは全くない。 きっとこの映画は全員が一方向を向く事を拒んでいる。「私」の数だけナザレットがいて、「私」の数だけ想いがある。 私が思うのは、極限の状況下で偶然出会った多くの人に「善いこと」をしよう、という思いがなければナザレットは旅すら出来なかっただろう、ということだ。 彼を助けたのはほんの少しの勇気と善意で、どんなに厳しい時でもそれはもたらされる。 世界を変えられなくても、目の前の誰かを助けることが出来るなら、人はまた旅立つ事が出来るのだから。

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つとみ

4.0慈悲と無慈悲

2021年12月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

個人評価:4.2 ファティ・アキンの重厚で染みる物語。慈悲と無慈悲を通し、神の存在を描いていると感じる。 無慈悲により過酷な運命に陥り、また慈悲により運命を切り開く。信仰を捨てた父は最後にどういった考えに至るのだろう。 また声を失う事と信仰を失う事が、とても対比が効いている。 慈悲と無慈悲。神は両方持ち合わせている。

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カメ

3.0娘を探す旅

2020年5月2日
Androidアプリから投稿

戦前、緊迫した戦況下で一家離散した家族の物語。 軍隊に招集された男が生き別れた娘を探す旅に出る。 ストーリーは至って単純。行き着く先の町で様々なトラブルに巻き込まれながらも、娘に会うという希望だけを拠り所にして、困難を乗り越えていく。 男の喜怒哀楽と旅の風景が楽しめる。

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お前の頭はただの飾りか

4.0憲兵隊は怖い

2019年7月5日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

 道路工事をさせられていたが、男たちはいきなり切り捨てられるかのように処刑される。兵士たちではなく監獄から釈放された者たちによってであり、ナザレット(ラヒム)を殺そうとしたメフメトは手が震えて切りきれなかったのだ。罪の意識によりメフメトはナザレットの逃亡に手を貸し、やがて脱走兵たちと行動を共にする。そして、その隊からも離れ、一人故郷を目指すナザレットであったが、難民キャンプで瀕死の義姉と出会い、家族は全員死んだと伝えられる。失意の下、放浪するナザレットはナスレディン(フーリ)という石鹸工場の社長に助けられ、工場で働くこととなり、やがて戦争が終結すると、その工場が難民キャンプとなる。  チャップリンの映画なんかも上映され、ひとときの幸せを味わってたナザレット。そこで鍛冶屋の弟子だった男に再会し、双子の娘が生きていると告げられる。もう生きる希望は娘たちを探し出すことだけと感じた彼は国中の孤児院を探して娘たちの行方を追う。ようやく手がかりを与えてくれた孤児院では、彼女たちが結婚を世話され、今はキューバにいると言う。船で働きながらキューバへと渡り、教えられた住所の床屋を探し当てるが、娘ルシネは足を悪くしていたせいで結婚を断られて、今はミネアポリスの工場にいると聞かされる。  もう、とにかくナザレットの大冒険。結婚を断った男を殴り倒し財布を盗んだり、フロリダでは銃で脅す男と戦ったり、鉄道会社では逆に殴り倒される始末。アメリカを彷徨い、次なる行先はサウスダコタ。ようやくルシネを見つけたナザレットは声が出るようになっていた。そしてアルシネが感染症で死んだと伝えられるが、彼女とともに生きて行こうと決意するのであった。

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kossy

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