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核戦争により荒廃した未来(1997年)を舞台に、スーパーヒーローに憧れる青年キッドと不思議な少女アップルとの出会い、そして恐怖の支配者ゼウスとの戦いを描いたボーイ・ミーツ・ガール&ディストピア・アクション。
2024年5月、ついに『マッドマックス』シリーズ9年ぶりの新作、『マッドマックス:フュリオサ』が公開されるぞぇ!!待ち遠しい待ち遠しい!V8V8!!
と言う訳で、過去作を振り返ってテンションを高めるぞー!!
そうそうこの核戦争後の荒廃した世界で、水を支配する悪徳支配者がいて、それに男女のペアがたち向かう。これだよこれぇ!!愛車はもちろんV8インターセプター…じゃなくてBMX…?自転車…?
節子ぉ!それ『マッドマックス』やない。『ターボキッド』や!!Σ(゚д゚lll)
本作は『マッドマックス2』(1981)の後、雨後の筍の様にポコポコと出てきたポストアポカリプスものの一つ。まぁこのジャンルというのは製作費を安く抑えられるんでしょうね。ロケーションは採掘場みたいな岩場があればいい訳だし。あとは血糊とホッケーマスクさえあれば何とかなる。
ただ、本作はその中でも群を抜いて安い。ドンペンくんもビックリの激安の殿堂である。
まさかの全員”チャリで来た”。編笠被った浪人もドクロマスクの巨人もみんなみんなチャリで来る。確かに資源の枯渇した世界でクソデカトラックだのトゲトゲバイクだのV8インターセプターだの、そんなガソリン食う乗り物に乗れる訳がない。そういう意味では本作の全員チャリという設定はめちゃくちゃ理にかなっている。…理にはかなってるんだけど、まぁこの絵面のバカっぽいことバカっぽいこと。どれだけハードでグロい展開が繰り広げられようとも、チャリで爆走するモヒカンたちを観たらどうしたって脱力しちゃう。
一体製作費はいくらくらいなのか、それが気になってしまうほどの安さ。『ゾンビマックス!怒りのデス・ゾンビ』(2014)なんて言う安いポストアポカリプス×ゾンビ映画がありましたが、あれよりもはるかに安い。何たって一台たりともオートモービルが出てこないんだもの💦
自転車だけでも世紀末世界は創造出来ることを証明してみせたという点で、この映画は世界中のアマチュア映画作家を勇気づける作品なのかもしれない。
チャリ通という点以外にも、本作はディストピア世界でのボーイ・ミーツ・ガールという新しい可能性を指し示してみせたという点でもユニーク。オタク気質なナードな少年と、完全に頭がどうかしちゃってる不思議ちゃんとの出会いと別れ。ものすごくバカバカしい映画なのに、この2人のピュアな恋愛模様に結構ウルウル来ちゃったりするのです🥹
真面目な話、本作の終末世界は孤独なナード少年の心象風景であり、少女との出会いにより荒れ果てた心に水が湧き、そして彼女との別れによって少年は新たな地平へと歩み出せるようになる、という自立と成長の物語と捉える事が出来る。そう考えるとなんだか真面目な映画に思えて…は別にこないですね。やっぱり。
不思議な少女アップル。彼女の魅力がなければ本作はどうしようもない映画になっていた事だろう。その見た目といい武器といい、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインそのまんまじゃんこれ、なんて思っていたのだが、実は本作は『スーサイド・スクワッド』(2016)よりも公開年が早い。その後のハーレイの人気っぷりを考えると、サイコガールというヒロインに目をつけた本作には先見の明があったと言わざるを得まい。
というか、よく考えてみると本作は『怒りのデス・ロード』(2015)よりも公開されたのも早い。ということは水の流通を取り仕切るゼウスというキャラは、同じように水源を支配しているイモータン・ジョーをパクったという訳ではないのである。これも時代に先立ってる!…まあ『マッドライダー』(1983)というイタリア産『マッドマックス2』が確か水源をめぐる争いの話だったから、それをパクったのかも知れないけど…。
もっと言えば、本作の世界観は『マッドマックス』というよりはむしろテレビゲーム「Follout」(1997〜)寄りな訳で。人体が紙よりも脆いところなんかはモロに「Fallout」ですよね。実写版ドラマが公開されたのが2024年であることを考えると、そこも大きく先取りしているといえる。
ヒロイン像といい悪役像といい世界観といい、実はその後のムーブメントのめちゃくちゃ先を行っている。この映画の監督、じつはかなり凄いんじゃ?
80'sリバイバルという側面でも『ストレンジャーシングス 未知の世界』(2016〜)よりも早いという、色々と先取りしすぎているこの作品。フランソワ・シマール/アヌーク・ウィッセル/ヨアン=カール・ウィッセルの3人が共同監督を務めているのだが、彼らは本作の後『サマー・オブ・84』(2018)という本格派80’sホラーを監督することになる。これはなかなかどっしりしっかりとした映画で、予算も本作の数倍はかかっていると思われる。本作のファンには是非鑑賞していただき、その差を比べて頂きたい。
安っぽいしバカバカしい。しかし何故か感動してしまう奇妙な作品。特別面白いという訳ではないのだが、作り手の愛情が透けて見える可愛らしい映画でありました。
そんな作品なのでどうやらコアなファンが付いているらしく 、2016年にはこの映画の音楽を手掛けたLe Matosの楽曲「No Tomorrow 」のPVとして本作の前日譚が発表されているし、2024年にはまさかのPCゲーム化も果たされている。ますます広がる『ターボキッド』ワールドに今後も目が離せない!
まあ何にせよ、本作のファンでもそうじゃなくても、来たる『マッドマックス』の新作に向けて、こういうパロディ映画を観て気分を高めるというのも良いのではないでしょうか♪