劇場公開日 2017年8月11日

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スパイダーマン ホームカミング : 映画評論・批評

2017年8月1日更新

2017年8月11日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

最年少スパイダーマンはイージーで軽快!友情と結束の時代へのオマージュも

新たな人材投入とキャラクターの離合集散によって飽きやすいファンの興味を繋ぎ、依然ヒットを連打するアメコミ映画界のマーケティング戦略は、今のところは順調だ。しかし、これには常にマンネリズムの危険性が付きまとう。そこで今回、彼らが選択したのはフレッシュなスターのキャスティング。史上最も若いスパイダーマン俳優、トム・ホランドのシリーズ本格デビューである。

今年21歳のホランドは15歳の男子高校生、ピーター・パーカーを演じても、実年齢との差を感じさせないくらい少年っぽい。顔は幼いし、声は変声期直後みたいなハスキーボイスだし、極端に早口だし、体脂肪率は低いし。クィーンズの高校に通いながら、憧れのトニー・スタークにアベンジャーズへの正式参加を認められたくて、こっそりヒーロー活動に勤しむ姿は、まるで秘密の部活みたいだ。ウェブシューターから次々と糸を放って摩天楼をスウィングして行くお馴染みのシーンも、かつてないほどイージーで軽快。それが抜群のスピード感を生んでもいる。

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ワシントンDCで開かれる全米学力コンテストの参加メンバーとして仲間に加わり、グループリーダーの女子、リズにほのかな想いを寄せながら、やがて、 ピーターはスタークへの遺恨から"最凶"ヴィランと化した翼の怪人、バルチャーとの死闘に身を投じて行く。そのプロセスに用意されたスペクタクルシーンも、主役に触発されたのかリアリティがアップ。中でも、ピーターが真っ二つに割れたフェリーの裂け目にウェブを発射し、沈没する船の重量を糸の束と両腕の筋力で支えようとする場面では、観ているこっちまで思わず歯を食いしばってしまう。改めて、スパイダーマンがその他のヒーロー軍団とは基本的に異なる、Friendly Neighborhood(親愛なる隣人、もしくは普通の人)であることを思い出させる印象的なシークエンスだ。

監督のジョン・ワッツは、ピーターの学園風景に「ブレックファスト・クラブ」(85)に代表される1980年代のブラット・パック(小僧っ子集団)ムービーを重ね合わせたとか。身に付けた直後はだっぼだぼのスパイダースーツが、胸元のクモボタンをプッシュすると一瞬にしてボディに張り付くのは、80年代と言えばコレ、「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」(89)でマーティが着ていたサイズ調整機能内蔵ジャケットのコピーだろうか。映画のクライマックスに用意され、副題にもなっている高校の同窓会イベント、ホームカミングは、シリーズの再リブートと、監督が影響を受けたという友情と結束の時代へのオマージュの意味もありそうだ。

清藤秀人

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